☆子宮外妊娠の長期予後 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

子宮外妊娠を一度経験した女性は子宮外妊娠を繰り返す確率が高くなります。しかし、子宮外妊娠後の長期の調査はこれまでありませんでした。本研究は、初回妊娠が子宮外妊娠の場合の長期予後は、分娩率が有意に低く、子宮外妊娠発生率が有意に高くなることを示しています。

Hum Reprod 2013; 28: 241
要約:1977年~2009年のデンマークの統計を集計しました。1977年~1982年に初回妊娠が子宮外妊娠だった女性2917名を、同じ年齢の初回妊娠が流産、妊娠中絶、分娩、妊娠していない女性と比較しました。追跡調査は2009年まで行い、平均30年間の調査となります。
初回妊娠が流産だった女性と比べ、初回妊娠が子宮外妊娠だった女性の分娩率は0.55倍、流産率は0.46倍、中絶率は0.72倍、子宮外妊娠は4.7倍と有意差を認めました。
初回妊娠が妊娠中絶だった女性と比べ、初回妊娠が子宮外妊娠だった女性の分娩率は0.89倍、流産率は0.85倍、中絶率は0.49倍、子宮外妊娠は6.6倍と有意差を認めました。
初回妊娠が分娩だった女性と比べ、初回妊娠が子宮外妊娠だった女性の流産率は1.2倍、中絶率は0.71倍、子宮外妊娠は9.2倍と有意差を認めました。
妊娠していない女性と比べ、初回妊娠が子宮外妊娠だった女性の分娩率は0.69倍、流産率は1.2倍、中絶率は0.70倍、子宮外妊娠は10.0倍と有意差を認めました。

解説:子宮外妊娠の発生頻度は約1%で、多くの場合は卵管妊娠です。まれに子宮頚管や卵管間質部など子宮の一部分での妊娠もあり得ますので、専門的には「子宮外妊娠」と呼ばず「異所性妊娠」と言います。一度子宮外妊娠を起こした女性は子宮外妊娠を繰り返しやすいことは、短期的な調査では良く知られていましたが、長期的な調査はこれまで行われていませんでした。本論文は初回妊娠が子宮外妊娠の場合の長期予後として、分娩率が有意に低く、子宮外妊娠発生率が有意に高いことを示しています。このような長期にわたる調査が国家全体で行えるデンマークに敬意を表します。