卵胞内の洗浄は意味がない? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

採卵の際には、卵胞液を吸引し卵子の有無を顕微鏡で確認します。施設(医師)によっては卵胞内を2度3度洗浄して再吸引する手順を行います。本論文は、この洗浄吸引のメリットがあるかどうかメタアナリシスにより検討したところ、正常な卵巣の反応を示す方では洗浄吸引によって卵子回収率は増加せず、洗浄吸引のメリットはないことを示しています。

Hum Reprod 2012; 27: 2373
要約:卵胞内を洗浄吸引するメリットがあるかどうかをメタアナリシスにより検討しました。6つのRCTでは、合計518名の女性を、洗浄吸引の有無によりランダムに2群に分け、体外受精の成績を比較しています。分析結果は、採卵回収率(卵子数/穿刺卵胞数)、獲得卵子数、受精率、妊娠率は2群間に有意な差を認めませんでした。4つの研究では、洗浄吸引群で採卵に要する時間が長くかかりました。6つの研究の全てが、正常な卵巣の反応を示す方を対象としていました。

解説:たくさん卵子を回収したい気持ちは、医療者にも患者さんにもあります。そのため、卵胞内を洗浄して再吸引する手順を取る施設が多くあります。本論文は、正常な卵巣の反応を示す方では洗浄吸引によって卵子回収率は増加せず、洗浄吸引のメリットはないと結論付けています。一方で、卵巣の反応不良な方(卵胞数が少ない方)での検討はされておらず、そのような場合には洗浄吸引の意義は明らかではありません。この結果をふまえると、現状では卵胞数が少ない方にのみ洗浄吸引を行うのがよいと考えられます。