☆若者の食生活と精子 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

若者の食生活は世界中で欧米化がより顕著になっています。本論文は、若者の食生活と精子の状態に関する調査を行ったところ、「質素倹約タイプ」が「西洋タイプ」より精液所見に望ましい食生活であることを示しました。

Hum Reprod 2012; 27: 2899
要約:米国のRochester Young Men's Studyに属する188名(18~22歳、2009~2010年)の男性の横断調査を行いました。食事内容、生活習慣は質問票で調査し、精液検査を行いました。食事には2つのパターン、「西洋タイプ」(肉、パン、ピザ、スナック菓子、高カロリー飲料、甘味)「質素倹約タイプ」(魚、鶏肉、果物、野菜、豆、全粒粉のパン、玄米)に分けられました。「質素倹約タイプ」は、その摂取の程度に比例して精子の運動率が有意に高くなり、摂取の程度を4群に分けると、最低摂取群に比べ最高摂取群で運動率が11.3%高くなっていました。一方、精子数と奇形率には4群間で変化ありませんでした。「西洋タイプ」は摂取の程度と精子の状態に変化を認めませんでした。

解説:近年、精子の状態が悪くなっているというデータがあります。この傾向は西洋諸国でより顕著にみられます。WHOの精液所見の基準値も徐々に甘くなってきています。加齢、喫煙、アルコールなど生活習慣による精液所見の低下がよく知られていますが、食事の影響も重要であるというデータが近年出てきています。オランダの食事がよいというデータもあります。本論文のような食事調査は世界で初めてのものです。おそらく、日本の昔ながらの食事も精子によいと思いますが、そのような研究はまだされていません。