☆心のケア(心理サポート)の必要性:男性編 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

前回(2012.11.24)不妊症の女性における心のケア(心理サポート)の必要性を述べました。今回は男性の場合ですが、男性での不妊と心理の研究は非常に少ないです。本論文はこれまでの論文をまとめ、心理的因子は男性不妊の要因と考えられるが確定できないとしています。

Fertil Steril 2012; 97: 434
要約:1970年~2011年の男性不妊と心理の論文をまとめました。男性不妊は、体型や喫煙など多くの因子に左右されます。ストレスはテストステロン(男性ホルモン)レベルを低下させ、精子形成を抑制する可能性があります。しかし、テストステロン低下と精子形成低下がどのようにリンクしているか(お互いが原因と結果の関係なのか)は不明です。不妊症の検査や治療は、ジストレス(不安、抑うつ)を生じ、精液検査に悪影響を及ぼす可能性があります。現段階では、関連する多くの因子を除外することができませんので、正式な結論が出せない状態です。

解説:本論文は、今年の論文です。しかし、男性不妊と心理に関してはまだまだデータ不足です。精神的な問題を抱える男性は、精液検査の所見があまりよくないという印象を持っていましたが、未だ確定的ではないようです。また、体外受精の採卵日など、ここ一番のプレッシャーがかかるとうまく射精できなかったりすることは、しばしば経験します。男性も女性同様、心のケア(心理サポート)が必要ではないかと考えています。良い精子と良い卵子があって、はじめて良い受精卵ができますから、精子にも良い事をもっと考えていかなければならないと思います。