☆第2子希望の不妊治療は簡単? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

一般常識の誤り その5

1人出産したから、2人目は簡単に妊娠できるだろうと巷では思われていますが、「第2子希望の不妊治療は簡単」は、正しくありません。
なぜなら、第1子の時よりも歳をとっているからです。卵子の老化があります。ですから、一般的には第1子の時と同じ治療かそれ以上の治療が必要になります。その場合のキーポイントは「出産後の授乳をいつまでするか」です。何故ならば、一般に授乳中は排卵も月経もない、つまり妊娠できない状態です。哺乳動物は子育てが大変なので、子育て期間に次の妊娠をしない仕組みになっています。その原動力が授乳です。しかし、授乳中も卵子の老化は進みます。ですから、第2子を考えておられる方には、なるべく早めに授乳を切り上げる(断乳)ことをお勧めします。生殖医療専門医が、これを患者さんにお話しできるチャンスはたった一度、第1子を妊娠して、産科外来に移動する最後の診察日だけです。産科外来では、産科の医師と助産師さんが対応してくれますが、基本的に授乳を推進する立場にあります。つまり、断乳について積極的に勧められる事はほとんどありません。人によっては2~3年授乳をしている方もおられます。そうこうしているうちに妊娠しにくい(できない)状態になってしまったとしても、時間は戻せません。
また、時間が経てば経つ程、他の要因が出てくる可能性もあります。たとえば、卵管が詰まってしまうとか、精子が悪くなってしまうとかが、しばしば起こります。第1子も第2子も基本的な考え方は一緒、「なるべく早く妊娠するように努力すること」です。第3子の場合も同じです。欧米では35歳までに「産み終わりましょう」と呼びかけています。
第2子希望の場合、患者さんも産婦人科医も「一人いるから、(できなくても)まあいいでしょう」的な考えが多いように思います。ですが、どうしても欲しい方もいらっしゃいます。自らの要望をしっかり主張することが必要ですし、お子さんを連れて来院しないといった配慮も大切だと思います。