A店でパチンコを打つのが苦しくなってきた丁度その時、パチスロコーナーに新台入れ替えがあった。

これまで、このシマにはハイアップ(年代的にターボ)という名の機械が設置されていたのだが、いまいち仕組みも分からないし、なぜだか怖そうなお兄さん達が、みんなもの凄い形相で一心不乱に右レバーを連打してるわ、逆からボタンを押しているわで、近寄り難いコーナーになっており、いつも星明子のようにシマの端っこから隠れて様子を眺めるだけだった。

 

記念すべきパチスロの初打ちは、既にもう別の店で済ませていた。

パチンコに対する免疫ができてしばらくすると、休みの日などには、電車に乗らずとも行ける自宅近くのホールに行くようにもなっていた。

その店はアットホームな雰囲気があり、パチスロコーナーはおっちゃん、おばちゃんが多く、和気あいあいとしていて自然と入り込みやすかった。

そこで生まれて初めてニューポートという吸い込み方式のパチスロに触れた。

ただ、パチンコなら極端な話100円から遊べるのに対し、パチスロは1回交換のうえ、1,000円づつコインを借りなければならないというのが、自分にとっては簡単には手が出せないものになっていた。

お年玉を貰った時に息巻いて突撃したが、見事に玉砕。三日も持たずになけなしの小遣いを全てむしり取られたという記憶が蘇る。

このニューポートを始めとする吸い込み機たちには、散々苦しめられたのだが、それは後々触れる事にしてA店の話に戻る。

 

新しく導入されたのは、ユニバーサルが2号機初のリールバックライト搭載機として世に放ったアメリカーナX-2という台だった。

2号機から採用されたメダルクレジット機能や、叩き心地の良いベットボタン等、しっかりと作られたその筐体は、明らかに1.5号機のそれに比べ格段の進化を遂げ、とても付け入る隙などない完璧な機械に見えた。

加えて1.5号機までにあった、意図的な小役の払い出しやボーナスの天井も無くなり、2号機とは店が決める設定だけが頼りのますます勝てないパチスロとなってしまったかの様にも思えた。

しかし、このアメリカーナX-2はゲーム性がかなり秀逸で、華やかな色彩のパネルデザインと、バックライトに照らされたリール上には、後にユニバ系と呼ばれる、際立ってカッコいい7図柄をはじめ、後ろから照らされた小役図柄が浮かび上がる様に美しく配列され、伝統の組合せによって強さが変わるテンパイ型や二確目などが織り成す美しいリーチ目が数多く存在し、打ち込む程にじわじわとその面白さが分かってくる。そんな機種であった。

 

 

アメリカーナX-2(ユニバーサル販売)

 

かつてのトラウマもあったし、導入直後はどうせ太刀打ちできまいと触れずにいたのだが、鉄火場の様相を呈していたパチスロコーナーは、この新機種アメリカーナのおかげで雰囲気がガラリと変わり、怖いお兄さん達は一斉に一発台コーナーへと引っ越していってしまったのである。

 

鬼主任のほとぼりが冷めるまでと、少しの間は家の近くの店などに行っていたのだが、あっという間に小遣いは底をつき、またA店に舞い戻るのでした。

久しぶりにA店に足を踏み入れ、チビはどうしているだろうと店内を探すも、いつもの所には見当たらなかった。

デジパチコーナーで相変わらず打っている母親の姿を見つけたので、もう一周してみると…居ました。

パチスロコーナーに座っているチビの兄貴と思われる人物と、何やら話しながら打っている。

すると、自分を見つけて駆け寄ってくるなり、

 

「どこ行ってたの!」

 

どこって、近所の居心地だけは良かった店にせっせと貢いでいただけなのだが。

ここのところのA店の状況を聞くと、このパチスロは勝てるということらしい。

俄には信じられないが、チビの目は真剣だった。

まずは実践しながら説明してもらう事にした。

すると、ポケットからメダルを取り出し、立ったまま手慣れた仕草で数台おきに、1台につき数プレイづつ回していく。チェリーが払い出されればもう1プレイ。最後に1枚掛けで止める。

よく見ると、毎回リールの同じ場所を狙っているようだ。

まさかとは思ったが、、、小学生ながらチビは目押を完璧にマスターしていた。

 

チビがやっていたのはフラグ拾いだ。

補足説明すると、狙うのはまずチェリー、次に1枚掛けでオレンジとレギュラーボーナス。

これでビッグが入っているかまでカバー出来た。

1.5号機よりも明るく照らされたリールの絵柄は、自分には認識しやすくチビに教わりながら、少しずつ目押し力を身につけていった。

2号機になっても、小役フラグの貯留機能は残っており、一度もユニバーサル系の設置が無かったこの店には、まだアメリカーナX-2の情報が知れ渡っておらず、さすがに明らかなリーチ目は落ちていなかったものの、目押しが出来ないと、ボーナスが成立していても気付かず止めていってしまう人が結構いたりしたのです。

そのため、全台ではなく優先的にボーナスが目押しされていない、バラケ目の台から回していたのだ。

 

https://youtu.be/YyPRtk0fx2U

↑アメリカーナX-2 BIG入賞(鰐先輩の動画へ)

 

以前の様にパチンコを打ちながら、定期的にパチスロコーナーの巡回を始めた。

もちろん勝てる根拠が有っての事である。

付け入る隙など無いはずだったアメリカーナx2をどのように打っていたのか補足すると、まず止めてある台の出目をチェックし、ボーナスが狙われていない台を優先して回す。きちんと目押しをされていない台ほど、取り溢した小役が残されている可能性も高いのだ。

一枚掛けで左、中リールに上にオレンジのついたBARを狙うと、取り溢しやすいオレンジが残されていれば、中段にオレンジがテンパイするので、右リールにもBARを狙って10枚獲得。

持ち越しフラグが無ければ、BARが中段にテンパイし、成立していればそのまま揃ってレギュラースタート。

もしもこの時、中リール枠上から上段付近にBARを狙って手前でビタ止まりしたならば、それ即ちビッグボーナスが成立しているという具合だった。

しかし、この時代にそんな打ち方ばかりしていれば、普通周りの恐い輩が黙っていない。

 

次はついにA店を去る事に