前腕を反対側の手で軽くにぎって、指を動かしてみましょう。
たとえば、左手で右前腕を軽くにぎって、右手の指をわらわらと動かしてみます。
そうすると、前腕の中の筋肉たちがわらわらと動くのが分かります。
これは視覚と触覚が背反する良い例です。モーダルチャネル同士は意外と矛盾した情報を脳に提示していて、それでいて意識はそれに気付きません。
視覚的には前腕は腕でしかありませんが、触覚的には前腕は指なのです。指を複雑に動かすための筋肉が前腕にはびっしり詰まっているのです。
ですから「生きた解剖学」的に言えば肘から指なのです。
特にDotsでもある上腕骨内側上顆を意識して、そこから指が生えていると考えると、解剖学的にも(起始が集まっているので)うまくいきます。
腕はもちろん膻中から生えており、決して肩からではないように、指も肘から(もしくは上腕骨内側上顆から)です。
復習ですが、首は尾骨からつながっていると考えることです。
尾骨から首を動かすつもりになります。
また脚は股関節からではなく、骨格的には仙腸関節からです。
でも筋肉で考えれば、腸腰筋の起始の最も高い胸椎12番からとも考えられます。
我々はヒューリスティックにみぞおちから脚と言います。
施術などで導入しやすいのは、脚の一部分であるところの腸骨の上のへり(腸骨稜)を触ってもらうことです。その部分が脚と正確に解剖学的に認識すると脚の使い方がガラッと変わります。
なぜ、正確に認識すると、身体の使い方が変わるのでしょう。
ほとんどの動きは無意識で処理されているはずで、我々の意識の介入など微々たるもののはずです。
それは実際にそのとおりです。実際に意識の介入を許すと、我々はリベットの言う「0.5秒の遅れ」の轍(わだち)にハマります。
それはそのとおりなのですが、じゃあ無意識が天才かと言えば、そこまで無邪気に僕らはなれません(まあ、意識・無意識という分類で議論しているからそもそもダメなのですが)。
平たく言えば、無意識の原材料は意識なのです。意識の過ちは、無意識もまた被るのです。
ですから、認識が変わり、意識が変わると、無意識の情報処理も変わります。
無意識を書き換えようとしたら、意識から介入するしかないのです。逆に意識が納得すると、自動的に無意識の情報処理も変わるということは覚えておいて損はありません。
逆に意識では納得できないけど、反復練習によって落とし込もうというのは、愚の骨頂なのです。もちろん習うより慣れろという面は事実ですが、できればきちんと習った上で、納得ずくで慣れたいものです。
というわけで、皮膚は大きくずれるのです。
我々の想像を超えて、ずれます。
それを体感できるのが、冒頭のワークです。
自分の右手をそっとにぎって、右手の指を動かしてみると、右前腕の筋肉がわらわらと動くのが分かります。
そのあと、回外と回内運動をしてみましょう。肘から先をくるくるとまわしてみます。
すると、これまでは皮膚を動かしていたのに、皮膚を止めたまま中を動かしているのに気付きます。
皮膚が止まって、中の筋肉が位置を変えているのですから、これは皮膚をずらすのと同じ効果をもたらします。
予想以上に動くことで、ゆるんで驚かれることでしょう。実際に体感だけではなく、客観的な指標でフィードバックを取ってみて下さい。
Anatomy2.0のような奇妙で不可思議なことは、自分で体感するのが一番です。体感しつつ、理論に慣れていきます。そうすると、理論と実践の両輪によって遠く移動できます。
めちゃめちゃシンプルなワークなのに、めちゃめちゃ前腕や上腕がゆるむのが分かります。
そこから始めて、どんどんアナトレの深みと喜びにハマって下さい!!きっと楽しいと思います!