メキシコシティの「死者の日」パレードは存在しなかった、ジェームス・ボンドを観るまでは。ヨガも同じ | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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ジェームス・ボンドの007の最新作であったSpectorは印象的なメキシコ・シティの「死者の日」のパレードから始まります。




ジェイソン・ボーンのアテネのデモシーンもそうですが、どうやってこのお祭りを再現したんだろうと思いながら映画を観ていました。
そして、このような我々の感覚とは異なる文化風習があるのはきわめてメキシコっぽいとなーと思ったものでした。

しかしこれはフィクションでした(^o^)

いや、007がフィクションという意味ではなく、メキシコ・シティのこのお祭りもまたフィクションなのです。

驚きました(・_・;)


こちらはその007Spectorのオープニングの映像です。
メキシコ・シティでの「死者の日」パレードの印象的なシーンから始まります。



ちなみにトレーラー(予告編)はこちら。




このメキシコらしい印象的な「死者の日」のパレードは、、、、実は存在していない伝統でした。


いや、ほんのすこし前までは。


死者の日というのは我々にとってのお盆のようなものなのかもしれません。死を考えるのは重要です。いつも死がそばにあれば、安心して生きていけます。
Memento mori(死を忘れるな)ですね(この言葉もまたもともとはもっと軽い言葉であったのが、格調高くロンダリングされています)。


近代オリンピックとしての最初のアテネ・オリンピックが開催されたのが1896年。元号で言えば明治二十九年です。
オリンピックはもちろん古代ギリシャの発祥ですが、そのオリンピックと近代オリンピックの直接的な関係はありません。

同様に「死者の日」は存在しても、パレードは存在していませんでした。数日前までは。
今年というか、先週はじめて開催されました。

007にインスパイアされて、メキシコ・シティは今年から「死者の日」のパレードをすることになったそうです。非常に面白い現象です。

映画の虚構が現実を追い抜いているかのようです。現実がむしろ後追いしています。


これに関してはCNNの記事が面白いです。”Mexico City didn't have a Day of the Dead parade. Then they saw 'Spectre' ”というか、このブログ自体がこの記事をもとにしています。


ヨガの歴史もオリンピックの歴史もその意味で似ています。
ただオリンピックを古代ギリシャと結びつける人は稀でしょうが、ヨガはインドの伝統と結びつけられています。

過去に深く根ざすようで、非常に近代的な産物です。

ヨガとは、インドの伝統に根ざすというよりは、むしろイギリスによる植民地支配、インド独立運動とグローバリズム、そしてポストコロニアルの産物であったというのが面白いです。

余談ながら、この伝統があるふりをする近代的な所産のリストに、できたら「気功」と「魔術」も含めたいと思いますがw

たとえば、少なくとも魔術はエリファス・レヴィが大成し、いわばスタートさせたと言って良いでしょう。


*エリファス・レヴィw


ちなみにますます蛇足ながら、エリファス・レヴィの生まれ変わりを自称するアレイスター・クロウリーもヨガには深く関わっています。1939年にマハトマ・グル・シュリ・パラハンサ・シヴァジの名前で出版された『ヨガについての8つの講義』とはクロウリーの筆によります(pp.83-84 マーク・シングルトン著 『ヨガボディ ポーズ練習の起源』)。この書ゆえに、ヨガのオカルト的側面が強調されました。
(言うまでもありませんが、エリファス・レヴィ、アレイスター・クロウリーはOnLine ReCord第2弾の「魔法の時間」でも重要な役割を演じます)


*アレイスター・クロウリー


ちなみに我々が重視する太陽礼拝も、もともとはヨガではなくボディビルディングの体操であり、ボディビルダーが広めたものです(p.162 Yoga Body)。



これはかなり面白い歴史的事実です。

僕は太陽礼拝と言うと、ベジャールのバクチ(Bhakti)を思い出します。バクチ3ですね。主演の2人の周りを囲むソリストたちが太陽礼拝を美しく行います(ベジャールのバクチは井脇幸江さんが得意とされていた踊りです)。


5分38秒あたりから、*太陽礼拝がはじまります。


脇道にそれますが、ベジャールと言えば、京都賞の授賞式でヨーギにヨガを習いにいった話をしていました。詳細はこちらの記事を

その記事から引用します。

***

ベジャールさんがインドを訪ね、ヨガの師範を訪ねます。そしてヨガを学びたいと言います。
するとヨガの師範は「なぜヨガをやりたい」と聞き、ベジャールは舞踊のためと答えます。
ヨガ行者から「舞踊はシヴァ神から授かったものであり、難しいものだ、君(ベジャール)の舞踊はどういうものか」と聞かれ、バーレッスンをしてみせるという話しです。

40分じっくりとバーレッスンを見せた上で、長い沈黙のあと行者はこう言います。

(引用開始)
「それで、なぜ君はヨガがやりたいのかね。君の精神が自由に働き、身体は真っ直ぐだが、緊張で固くならず、君が身体を動かそうとするのではなく、身体が動くままにして、その動きの美しさと真実だけを求めているのであれば、それが君のやりたいというヨガなのだ。それ以外のことを求めてはいけない。君が言う“バーレッスン”を、うまくなろうなどと考えず、ただその美しさのためにだけやりなさい。うまくなろうとする気持ちを捨てなければ、進歩することはできないのだから」
(引用終了)

***


実は「まといのば」が今後再びYogaスクールをやるとしたら、かなり高難度の技術をどんどんできる人を育てようと思っているのですが、その際に積極的にフリーウェイトを採用するつもりでした。
これは歴史に沿っていると言えるわけです。邪道かもしれないと思いましたが、むしろ正統ということです(笑)

ちなみに、僕自身はヨガをヒンズーの伝統であり、バラモンの修行体系だと考えていましたが、これも微妙に違うようです。宗教性はむしろ否定されています。初期のヨーギの中にはイスラム教徒もいました。


奇しくもアテネ・オリンピックが開催された年(1896年)に、ヴィヴェカナンダの「ラージャ・ヨーガ』が発表されています(同上p.276)。身体運動のグローバル化の始まりです。

「健全な精神は健全な肉体に宿る」という古いギリシャの言葉が積極的に標語として使われ始め、身体に興味を持ち始めたのがちょうど120年前でした。


そしてグローバルな身体運動のムーブメントの中で、インドの愛国的な体操が、似非と言えば言い過ぎですが、ありがちな「伝統」の皮をかぶり、大道芸でしかなく、ヒンドゥーからも唾棄されていたハタ・ヨガを、上手にロンダリングして、欧米諸国でお披露目したということです。
偉人のように崇められているクリシュナマチャアリのような創始者たちが、インドにとどまりむしろ貧困にあえでいるのが象徴的です(彼は王様の庇護にあたったときが権勢ということではピークでした)。


トッドではないですが、事実を観察し、事実からはじめて論理を構築することです。


ここに肥満と細菌叢という視点を入れるともっと面白いものが見えてくるのかもしれません。運動に対する熱が向上し100年経ち、カロリー消費量は減少しているのに肥満は大きな問題となっているのが現状です。

古代ギリシャと関係のないオリンピックが、これまた古代ギリシャとは縁もゆかりもない(土地だけは共有されている)ギリシャのアテネによって開催されたように、メキシコ・シティの「死者の日」のパレードもどこかで歴史がロンダリングされるのかもしれません。Aztecやpre-Columbian timesに遡るとされる伝統がThe Day of the Dead celebrationにあるのは事実でしょうが、それとパレードはまた別です。しかし100年もしたら、また異なる歴史が捏造されるかもしれません。

ヨガのように。


いずれにせよ、我々も一度、ヨガに対するアンビバレントな想いをエポケー(棚上げ)して、歴史に立ち返ると良いかもしれません。


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そんなことを踏まえて、こちらの映画を観るとなかなか味わい深いです。



冒頭に監督でありナビゲーターが、インドで史実を知るのは難しいとつぶやくシーンがあります。
まさにその後を暗示しているかのようです。ルーツを探り、ルーツが闇の中に入ります。
アイアンガー先生の師であり義兄であるクリシュナマチャアリに対する怒りが非常に印象深いと言えます。アイアンガー先生はクリシュナマチャアリの弟子ですが、何も教わっていないと主張します(アイアンガー先生の弟子によれば、クリシュナマチャアリと何もかもが似ているそうですがw。そして、クリシュナマチャアリにとって最高の弟子はアイアンガーでした。これは晩年にこっそりと公開されたものです)。


By Mutt Lunker - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link
*アイアンガー先生です。2年前に95歳で亡くなりました。


というわけで、最近はまた身体についても、いろいろと新しい発見があります。
来年あたりに本気のYogaスクールを開催したいなーと思っています。身体を徹底的に書き換えるスクールです。Yogaのくびき(yoga)からますます自由になり、ますます圧倒的な身体能力を短時間で手にしましょう!!


いや、この先、ヨガスクールを開催します!と書きましたが、そもそも今月ラージャ・ヨーガスクールを開催します(^o^)

こちらはむしろ伝統的なヨガに基づくラージャですw(いや、こういう言い方そのものを、マーク・シングルトンは避けるように言っていましたねーというわけで「伝統的」は冗談です)