内観法でハイエフィカシーを維持できるのか? | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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内観法という強力な瞑想法が存在します。これは伝統的な手法でもあります。

自分を内側から見つめて、過去の様々なことを見つめます。

僕自身は通っていた鍼灸の先生に進められ、内観法自体を知りました。

様々な効果が言われますが、過去を見つめて、そこから隠された自分のネガティブなパターンを意識に上げることで、今後、同じ轍(わだち)にはまらなくて済むというロジックです。

このパターンは大概、親や祖先や社会から来ていると考えられています。

また自分が生かされているとうことに気付き、感謝の念が沸き起こるという効果もあるとされています。

これは有効な方法ですが、僕は今は批判的な立場です。

単純な質問をすれば、内観によってハイエフィカシーは維持できるのでしょうか?

苫米地理論と内観を一緒にして説明される方もいますが、それは誤解です。

苫米地理論で薦められているのは止観です。そしてT、Nil,Dのラベリングでもそうですが、きわめてシステマチックです。もし情動が発火したらBとラベリングします。浮かんでくる相念に対して一瞬で判断しラベリングすることで、一瞬で抽象度を上げることを訓練します。
ラベリングの判断の妥当性は問われていないのです。重要なのはラベリングをすること。評価するということは、その抽象度を越えているということだからです。
過去を見て、情動を発火させたら、それは止観ではないのです。

苫米地理論では「失敗はない」のです。内観で探すべき失敗も存在しません。

内観法は理論モデルとしては、退行催眠や過去世療法(前世療法)と似ています。

また現在流行りのスピリチュアリズムでも過去を癒す、とか過去の自分のパターンを手放す、というのは有効な方法として紹介されています。

一定の効果はもちろんあります。ただ今回紹介したいのはそのリスクについてです。



ここでまず前提となる知識を確認しておきましょう。
我々は世界を認識しようとするときに、必ずスコトーマ(盲点)が存在します。そしてスコトーマを形成するのは、ビリーフシステムです。信念体系と訳してもいいのですが、少し意味が変わる気がします。
我々は知識があるものしか見えません。そして知識があるもののうち、重要であると思うものしか見えません。その重要性を判断するのがビリーフシステムです。

ですから、そのビリーフシステムをいじれば、見える世界は変わります。これが気功のポイントです。

ダイエットがしたいというクライアントさんのビリーフシステムを書き換えると、甘いモノの重要性が一気に下がり、甘いモノが見えなくなります。スコトーマに隠れます。見えないモノはもちろん食べられないので、やせざるを得ないのです。
これが気功のカラクリです。

内観法はこれを自分で書き換えるというセルフヒーリングの技と考えることは可能です。

ただ高いリスクが伴います。

トラウマ治療の歴史と重なる部分があります。トラウマ治療のカラクリと内観法や退行催眠による治療、前世療法(過去世療法)のカラクリはすべて同じです(と言うと、それぞれの専門家の先生方は違うとおっしゃるでしょうが、ここでは大雑把な整理をしていると考えてください)。

トラウマ治療が歴史的に大きな成果を上げ、そして大きな失敗を起こして、心理学の手法としてトラウマ治療はもはやされていません(まだしていらっしゃる心理学の専門家の方には申し訳ないですが、これは歴史的な事実の話しです)。

華々しい成果を上げたという面では、恐怖症の治療や心身症の治療にトラウマ治療を大きな成果を上げました。
「あなたの言われもない恐怖の理由はあなたの抑圧されたこのような記憶が原因です。この記憶を意識に上げることで、記憶が抑圧から解放されます」
とお医者さんから言われ、別人のように生き生きとする患者さんはたくさんいました。
慢性的な痛みや不定愁訴にも絶大な効果を発揮しました。
無意識に抑圧された記憶が身体症状として表現される、という仮説は非常に有効です。

この理論モデルを使ったのが、退行催眠の派生である過去世療法(前世療法)であり、内観法です(内観法自体はとても長い歴史と伝統があります。ここで指摘しているのはカラクリの理論モデルの相似点です)。

ただトラウマ治療にはダークサイドがありました。

いわゆる「捏造された記憶」問題です。
トラウマ治療が広がった後に全米で娘から父親への訴訟が頻発しました。いわゆる幼児期の性的虐待訴訟です(そしてそのほとんどが敗訴しました。事実ではないことが分かっても、ハンプティダンプティではないですが、壊れた関係は元にはなかなか戻りません)

このカラクリはシンプルで、カウンセラーとクライアントがトラウマを探っているうちに記憶を捏造してしまったのです。そしてそれがきわめて多かったのです。
捏造と言っても意図的に作り出したのではなく、善意で一生懸命に治療している過程で生まれてしまったのです。

なぜそんなことが起きたのでしょうか?

これはトラウマ治療のパラダイムが内包する問題です。現在の疾患の原因は過去の抑圧された嫌な悪い記憶にあるはずだという理論モデルがあります。そのモデルが必然的にそのような記憶を作り出してしまうのです。

ここにはもちろん変性意識が大きく関わっています。
ですからトラウマ治療の問題は変性意識のダークサイド(禅で言う魔境)とリンクしているということです。

そこまで理解すると、一気に全体像が見えてきます。

トラウマ治療も内観も過去世退行(催眠療法)もすべて深い変性意識下で行われます。

深い変性意識とはすなわち深い酩酊状態です 

酔っ払いには泣き上戸もいますし、笑い上戸もいます。違う人格が立ち上がり、普段寡黙な人が大はしゃぎしたり、平気で嘘もつきます。気持ちも大きくなります。

これが体感しやすいわかりやすい変性意識状態です。(オリンピック選手のレース前の状態やバッターボックスのイチロー選手は明らかな変性意識ですし、踊るバレリーナは変性意識ですが、それほど分かりやすくはありません。彼らは変性意識状態をきちんとコントロールしているからです)

気功でも催眠療法でも治療行為でも必ず、術者もクライアントも両方とも深い変性意識に入ります。
そして両者で幻覚を共有します。

その幻覚こそが、捏造された記憶であり、前世の記憶であり、退行催眠の記憶です。内観で見えたものも同じです。

そこで思い出される記憶が良いものであればいいのですが、大概は悪いものです。むしろ悪いものであることが奨励されます。当然ですよね、抑圧された悪い記憶(それが現世であれ過去世であれ)が現在の私のパフォーマンスを劣化させているというのが理論モデルだからです。記憶は悪ければ悪いほど、いいのです。

ここで二つに分かれます。
まず、思い出された記憶が事実であれ捏造であれ、思い出すことで、現在の状態が改善されてしまうというラッキーなケースです。これはもちろん素晴らしいことで問題ありません。
それが華々しい成果につながりました。

第二は、思い出された記憶があまりに衝撃的で、それが再びトラウマ化してしまう、もしくは悲劇の始まり(家族での訴訟合戦など)になってしまうケースです。これは悲劇です。そして治療目的からすれば失敗です。

そしてその記憶も事実である場合と事実無根の捏造された場合があります。
捏造しようとしてするカウンセラーはいないでしょうし、まさに悲劇です。
記憶が事実にせよ、捏造された過誤によるものにせよ、クライアントの心身の状態は悪化します。

ちなみに捏造しようと意図して実際に上手に行うのが、一部の霊能者であり占い師であり、もちろんヒーラーもそうでしょう。そして一部の新興宗教やカルトは使っている手法です。

歴史的に心理学はこの良いケースと悪いケースを天秤にかけて、トラウマ治療を放棄することにしました。

そうすると理論モデルが相似形である退行催眠や前世療法や内観法も同じリスクをはらんでいるということになります。

そして、心理学はそこからまた先へ進み、行動主義や脳科学を経て、認知科学(認知心理学)と呼ばれるようになったときに、無意識や記憶、時間の流れ方についてもパラダイムはまた大きく変わりました。

逆に僕らが過去、現在、未来について抱いている信念や無意識や記憶について抱いている感覚は少なくとも100年は遅れている可能性があります。

新しい知見をもとに考えれば、ますますトラウマ治療のようなアプローチはリスクのみがクローズアップされるということです。

内観法のリスクは存在します。


もちろんトラウマ治療的な手法は、これらの最新の知見をしっかり認識した上で熟練の技で行うのは、問題無いと思います。過去世は無いと言っても、情報空間の過去世情報を書き換えて、その人が実際に変わるのだから、手法としては使っていいと思います。

情報を操り、幻想を操って現在と未来を書き換えるのがヒーラーの役割ですので、何を使って構わないのです。

ただ無知と無邪気で火遊びをするには、変性意識の世界は危険がいっぱいです。