僕はゴルフが楽しくなった。正確にはドライバーショットが楽しくて仕方ない。特にお客さんが居る時には。

 ケインはハイスクールの部活であまり練習場には来られなくなって、ジョージは昼間の受付にサラという若い女性を雇った。サラはゴルフは全くの素人だけど明るく笑うキュートな美人で、サラ目当てにやってくるお客さんも結構いるみたいだ。こういうところジョージは商売が上手いと思う。僕は学校が引けるとその足で練習場に向かい、サラと一緒に受付に立った。それで打席に余裕がある時には練習する。最初はアイアンで軽く打っているんだけど、すぐにお客さんたちが手を休めて集まってくる。目的は一つしかない。僕は期待に応えてメロウイエローを取り出すと、300ヤードの向こう側へと快音を響かせた。

 

 僕はドラコンの大会でもあれば出てみたいという衝動をだんだん抑え切れなくなっていったんだけど、ジョージはあまりいい顔をしなかった。

 「ダイ、ゴルフで大事なのはドライバーの飛距離ではない。もちろん飛距離は大きな武器で、プロを目指すためには必須だ。だが、そうだな、ケインがこっちに来て、日本に居た時のように頭角を表せないのは何故だと思う?」

 「ケインは飛距離が足りないと言ってたよ」

 「ああ、まずは飛距離の劣等感に苛まれるのは当然だろう。だけどな、本当の理由は他にあるんだよ」

 「え?」

 僕はそれを知りたいと思った。だけど、

 「キミに話せばケインに伝わるだろう。だがケインの成長のためには彼が自分で気が付く必要がある。ケインはプロを目指していて、プロゴルファーというのはあらゆる局面に自分で対処していかなくてはならないからな」

 

 僕はまたもやもやを抱えることになった。ジョージはああ言うけど、やっぱりドライバーの飛距離が出ることは何より楽しい。僕自身がボールを打ちたくてワクワクしてるだけじゃなくて、周りのギャラリーも喜んでくれるから、ますますやる気が増してくる。練習すればするほどゴルフが上手くなっていくと思うんだけどな。

 

 そんなある日、保安官が僕に会いたいという人を連れてきた。その人は町の広報担当者で、この町の収入は観光客に依るところが大きいから、何とか町を有名にしたい。それで今度郡の感謝祭フェスティバルでドラコン大会が開かれるから、僕に町の代表として出て欲しいと言うんだ。ジョージに相談したら、好きにしなさいと言うので、僕は大義名分ってやつを得た気分で大会に出ることになった。

 テキサスはドラコンのプロも多いらしいけど、郡のフェスティバルということで、出場者は郡に居住しているアマチュアゴルファーに限られた。それでもプロレスラーみたいな体格の腕自慢たちが10人以上集まった。そんな怪物たちに混じって小柄で細身の僕が3位に入ったもので大騒ぎさ。僕は時の人になって、地元のテレビに出たりして、それはもう最高の気分を味わった。