僕のスター扱いは長続きしなかった。それどころか練習場でも僕の周りに集まるお客さんは減る一方だった。サラは相変わらずちやほやされている。僕はそんなサラを羨ましくさえ思った。

 「サラはいいよね、みんなの注目の的でさ」

 「何言ってるの、ダイ君にはまだ分からないかもしれないけど、みんな下心見え見えよ。まったくここはバーじゃないっつうの」

 サラは本当に迷惑そうだった。

 僕は注目を取り戻したくなって、またドラコン大会に出たいとジョージに相談した。

 「前にも言った通り、私は反対だ。まあどうしてもと言うなら止めないけどな」

 ジョージはもう僕よりも飛ばないから気持ちが分からないのだろう。

 「いいかダイ、キミは勘違いしている。キミが出場したのはアマチュアのお遊び大会で、しかもそこで3位にしかなれなかった。たまたま小柄で年端もいかない少年だから珍しがられただけだ。もう同じ事は二度はない」

 「飛ばないジョージに言われたくないよ!」

 僕は思わず反発した。ジョージはフッと笑い、僕をコースに誘った。

 

 リゾートホテルのゴルフコースは高低差がほとんどなく、障害物といえば3つの小高い丘とサボテンくらいだ。代わりにフェアウェイは芝代わりの雑草を刈った状態で、そこを外すとラフではなく、広大な天然のバンカーだ。誰も綺麗にならす者もなく、風紋にはまったボールはクリーンヒットが難しい。つまりはフェアウェイに戻すだけのペナルティを払うも同然だ。

 スタートホール、僕は先にメロウイエローを握ると、フェアウェイの真ん中に会心の一打を放った。ランを入れて320ヤードは飛んで、残りはショートアイアンの距離だ。どんなもんだとジョージを見る。ジョージはゴルフバッグから見たことのないドライバーを取り出した。メロウイエローに負けるとも劣らない超ディープフェイスの赤いヘッド、普段のシャローフェイスとは正反対だ。

 「ツアー時代のドライバーだ。久しぶりに手にするよ」

 そう言うとジョージは流れるようなスイングで快音を響かせ、330ヤードのキャリーで僕の会心の一打を軽く置き去りにした。僕は唖然として声も出ない。それでも2打目は9番アイアンでグリーンに乗せたが、ジョージはウェッジのハーフショットでピタリとピンに寄せ、軽々とバーディーを取った。僕はパー。

 次のホールはジョージがオナーだ。再び赤のディープフェイスで350ヤードショットを放つ。僕は負けじとメロウイエローを力一杯振り回した。ボールは大きく左に曲がり、砂煙を上げた。僕はスイングリズムをすっかり崩し、もうゴルフにならなかった。

 
 「どうだ?勘違いが分かったかい?」
 ジョージの言葉に僕は黙って頷くしかなかった。目からポロポロと落胆の涙が止まらなかった。