触手と「エッチな犯罪赦しません」魔界天使ジブリールシリーズ、

ほしうたなど独特の世界観を持つ作品を制作していたブランド・フロントウイング。

 

同社が次に制作したのは、5人しかいない美浜学園という、

社会の檻に押し込められた少女たちの心的外傷と向き合うお話。

 

共通はギャグ中心でたまに各キャラクターの性格が現れたエピソードがある程度。

ですが、個別に入ると各々の過去あるいは今も続く問題に関する重い話に入ります。

鬱ーん要素があります。

 

<レビュー>**********************************************

シナリオ全般:9点 >ハッピーエンドはとらえ方次第。でも明らかにそうでない

あんまりな終わり方もある。

キャラクター全般:10点 >ヒロインに主眼を置いてしっかりと描写されている。

絵、音楽、文章の質:10点 >問題なし 文章はむしろ好み

話の分かりやすさ:7点 >ヒロインの内面に関わる話なので分かりにくくても仕方ないかも

ユーザインタフェース:10点 >様々な機能があり不自由しない

攻略のしやすさ(無用に多い選択肢など):10点 >目の前にいる人を選びますか?これだけ

話の齟齬のなさ、無理な展開:8点 >パン屋専業ではだめだったのですね

 

<概要>******************************************

風見雄二:主人公。裏の仕事を持つ。皆にはアルバイトで通している。

 

<ヒロイン>
榊由美子:自分を閉じ込める檻として作られた学園最初のひとり。本読み仲間。


周防天音:不自然に雄二に近づく。家事が得意。人ごとに何かと手を突っ込む性格。


松嶋みちる:一見して愚者を演じるが、共通で本来の人性を見せることも。

入巣蒔菜:人見知りだが、気の合う者にはすぐなつく。天才肌で学習能力が高い。

小峯幸:なぜかメイドとしてふるまおうとする。1回だけ雄二に不自然な呼び名を使う。

橘千鶴:美浜学園の学園長。過去雄二に助けられた恩がある。

JB:日本名は春寺由梨亜。雄二の上司。

 

ヒロインたちは皆、何らかの理由で社会から隔離された学園に通っているが、

主人公が転校した理由は、「学生が……やりたいです……」。

しかし学園にいる同級はみな女。最初は少なからずバタバタするものの、

ある程度たつとごくごく自然に順応していた。

 

個別は、選択順に触れていきます。

 

◆入巣蒔菜(まきな) うつーん:☆☆☆☆☆☆☆ 7/10

幼少時に父親とともに誘拐され、しかも目の前で父を殺されたうえ、

その死骸が腐敗するまでしばらく解放されなかった、というPTSDなんてもんじゃない

過去を持つ。

失語症になり後継者どころではないと、

実の母親からも見捨てられ、5千万という金を渡して捨てられた。

 

その金を雄二が受け取り自分が父親代わりになると答えると、堰を切って泣き出す蒔菜。

幼少時から味方が父親しかおらず、それすら失った少女には、

自分を守ってくれる、「いなくならないでいてくれる存在」をずっと探していた。

 

雄二は、なぜか軍隊調の話に興味を持つ蒔菜に狙撃を教えることに。

思わぬ才能を見つける。

その後も親子の遊びとは到底思えぬ軍隊ごっこ。しかし少女は幸せだったのだろう。

 

とある日、自分も何か仕事をしてみたいと言い出し、以前から興味があったパン屋で

働くことに。

折あしく、蒔菜の妹が病のため、利用するために入巣家は当人を見張っていた。

そして、パン屋は不憫にも巻き込まれ爆発。しかし妹も。

 

この時、雄二は蒔菜にも危険が迫っていると感じ、寮からの脱出を決意。

蒔菜は学園にいるとき大事にしていたリンゴの苗を持っていくことにした。

 

住処を所々変えながら逃亡を続けるが、足がつく原因となったのは、

場所を移る際にリンゴの苗を忘れたと取りに帰ったのが原因。

追手の目的は蒔菜の殺害ではなかった模様だが、

銃撃を受けJBの計らいで入院することに。

 

ある夜。眠っている蒔菜に病室であい、

どうしていつもこいつばかりこんな目に合うんだ、誰が原因なんだ、

雄二はその「原因」を除く決意する。

 

本社に配達員を装って侵入、入りは結構あっけない。秘書らしき人物を脅し、

社長室に侵入。そして、その母親が驚くほど蒔菜に似ていること、

そして、その口からはとうてい人の親とは思えない冷酷な言葉が。

ここで究極の選択。「引き金を引くか否か」

 

母親を殺すかどうかでエンドが分岐。

しかし、どちらも救いがない。

殺すと雄二も死ぬ。殺さないと雄二は隻腕で済むが「アルバイト」はできなくなる。

後にFBのつてでアメリカに逃亡。パン屋を始める。

その傍ら、雄二から、あるいはFB、その組織から引き継がれた役目を果たす。

 

<感想>

この子は、家で何か問題を起こしたでもなく、

生き方に問題があったでもなく、犯罪にかかわるような迷惑をかけたでもなく、

1人の少女としての幸せを最後まで得ることができなかった。

 

巨大な権力に振り回させ続け、海外で自分の居場所を見つけたものの、

もう普通には戻れない。終わり方を思うと、最も重い話。

 

◆周防天音(あまね) うつーん:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 10/10

過去の出来事が原因で学校にいられなくなり、現在の学園に入った経緯がある。

立場上、由美子は知っている。

 

この「過去の出来事」のため、雄二に過度に接触する。

そしてついに自分を犯してくれと言い出す。

そうして、なぜ雄二にまとわりついていたか、その名前を話す。「一姫」。

雄二にとっても、重い(詳しくは続編)。

 

それで悟った雄二は、長い話を天音から聞く。エンジェリックハウル、天使の叫びを。

 

かつてバスケットボール部に所属していた天音は、それほど目立つ存在でもない、

大人締めの少女だった。

ある合宿の帰り、バスがカーブを曲がり切れず崖に転落。

ここから十数日の地獄が始まる……。

 

この場で、天音は一姫と出会い、紆余曲折経て友人となる。

また、弟のことも聞かされる。

 

転落時から死者が出、その後も食糧問題に、役立たずの顧問、

放り出された場所がサバイバルにまるで向かない、

悪条件でどんどん死者が増えていく。そして、あるときとある二人が不気味なことを

しているのを天音は目撃してしまう。殺されそうになる、逃げる。

そこに一姫登場。身を挺して、「あなただけでも逃げなさい。」

 

がむしゃらに走り、キャベツ畑のある外に出られたとき、狂ったようにそれを

むさぼる一人の少女があった……。

 

天音は事故の唯一の生き残り。それを毒虫と揶揄され、前の学校にいられなくなった。

学園に来た経緯、雄二に近づいた理由、それらを一気に話した。

贖罪。一姫はいない。ならば弟にするしかない。

 

そうして恋仲になりしばらく経過。ある日、雄二に坂上と名乗る中年が近づく。

事故で死んだ娘の父親。そして、近くに生き残りにいる学園があると聞いた、と話す。

不穏な気配を感じるが、引き下がられてしまう。

 

雄二に話したことで少し気が楽にでもなったか、かつての現場に行くと言い出す天音。

以前あった中年を思い出し、それとなく止めようとするが、自分なりのけじめと言われ

止めるすべはない雄二。せめて有事の際は……。

 

現場に物騒な猟銃を持った中年がいた。娘を失った怒りや悲しみを天音にぶつけ、

同じ目にあわせてやろうと凶行に走る。

ここで選択。「一緒に逃げる」「別々に逃げる」。

 

片方を選ぶと話はそこで終わる。

生き延びた場合、このルートだけ天寿を全うしようとする天音と孫らしき人物が。

 

<感想>

最も心的外傷を抱えていないように見える人物の壮絶な過去。

サバイバルの様子が妙に生々しい。

このルートのみ、雄二に実姉の「一姫」という人物がいたことが分かる。

 

おそらく天寿を全うしたと思われる天音は、果たして幸せだったのだろうかと思った。

 

◆小峯幸(さち) うつーん:☆☆☆☆☆☆ 6/10

この少女は過去よりむしろ今に大きな問題を抱えている。

過去確かに不幸はあったが、それがねじれにねじれ、歪な生き方をするように。

 

誰のどんな願いもかなえようとする幸に違和感を抱く雄二。

昔の幸に何があったのか?やむなく学園長を訪ね、前の学園で放火をしたことを知る。

なぜ?

 

そして過去に、どんなことでも聞くといういじめを受けていたこと、

その最後が「学校からテストをなくすこと」だったことを聞く。

結果、学校を燃やすという暴挙に出て、この学園に来たと。

 

理由を幸に尋ねると深くは答えず「自分はよい子でいなければならない」

とだけ。もしそれが呪縛となっているならば、解かなければならない。

雄二は、再度過去の状況を作るため、任務を失敗させるために様々な細工を行う。

学園長の協力はじめ、大掛かりな仕掛けだ。

 

そして幸に「テストをなくしてほしい」と、過去を払しょくさせるための依頼を行う。

躊躇いなく引き受ける幸。

しかし、結果は失敗に終わる。それも、幸も想定してなかったであろう

 

「学園が爆破する」

 

結果に。

 

雄二は、善悪なく、後先考えず行動すればどういうことになるのか、

幸が聡明だからこそ知ってほしかった。

自分たちが過ごした学園を、自身で破壊した。このことで目を覚まさせることができた。

 

そして、共通である時雄二に呼び掛けた「ゆうくん」。もう雄二も思い出していた。

幸がいなくなった時、かつて一緒に遊んだ公園にいたのだ。

年下とは思えないおてんばな少女。今と少し面影もある。幼馴染だった。

 

幸は、親の多忙などで疎外感を感じたとき、いつも公園で一人遊んでいた。

そこに現れた雄二を巻き込み、いつしか一緒に楽しく遊ぶ友達になっていた。

 

雄二も少しは責任を感じていた。遊べなくなったのは、

雄二の家が引っ越すことになったからだ。一緒にいれば幸はあるいは……。

 

今を振り切ったなら、過去も振り切れるはず。

かつての実家に行くよう勧める雄二。

しかしなかなかその決心がつかない幸。

 

過去の事故で父は死亡したが、母は意識不明ながら生きている。

今も看病に訪れていた。

 

ここで選択肢。「自分を殺すか」「母親を殺すか」

雄二のなぞかけを、幸が理解できるかどうか。全ての始まりは、

母親から聞いたという「いい子にして(いればこんなことにはならなかった)」。

事実か不明だが、現実に束縛している。

 

前者を選ぶと、母親を向き合うことをやめてしまう。

そして今度は雄二が事故に。

後者は、物理的という意味ではない。自身の思い込みを殺すことを願った。

本当に母親はわざわざ公園まで来て、事故にあったからといって

娘に呪詛のような言葉を言うと思うか?

 

その答えは、鍵がかかっていた母屋にあった。

親の愛情が、そこにあった。泣きじゃくった。やっと、呪縛から解放された。

 

<感想>

心的外傷は目の前で父を失い、母から聞いた言葉を誤解したこと。

でも最後は前を向いて生きようと決意する。

すっきりするいい終わり方。

 

しかしなあ、いい子でいるから学校燃やしたりするかなぁ……。

さすがに理性……そこが壊れちゃったのかな。

 

◆松嶋みちる うつーん:☆☆☆☆☆☆☆☆ 8/10

過去は主観、現実は客観。

このルートだけ、サイエンスフィクションよろしく、なんと

「移植した心臓の人格が宿る」ということが起こる。

 

心当たりのない記憶がある、みちるの人格が変わる、ならともかく、

みちる以外に心臓の持ち主自身の人格があるという。びっくり。

 

過去、家の教育、親の期待に反して結果を出せなかったことを悔いるみちる。

問題はその教育が、実質いじめだったのだが。まあ親も教師も悪い。

 

しかし、なにもうまくいかないと自棄になったみちるは自殺を考える。

屋上。そこには先客がいた。

興がそがれたとその日は死ぬのをやめると言い、友人になる。

しかし、ふとしたきっかけであっけなくその友人は、跳んだ。奈落へ。

 

自分は何のために生きているのだろう。

元々患っていた心臓の病を悪化させる。

 

皮肉にもそんな折、レシピエントであるみちるに対し、心臓ドナーが見つかる。

無事生着し、GVHDもおこらず。でもなんでか人格転移なんてことが起こった。

 

ある日自分の意識がなくなり、気が付くと周りがうまくいっている。

心当たりがない。その人格がやったことだ。

それは私ではない。嫌だ嫌だ嫌だ。自分の別人格に追いつめられる。

こうして、意味不明な金髪のツンデレというペルソナを被ることで自分を保とうとした。

 

ある日、検査のため数日寮を離れるという。

その際、不吉とも取れる言葉を雄二に残すみちる。

 

選択肢は「行くな」「キスしてやろうか?」

 

みちるは、共通ではほぼ見せない重くとらえる性格。

前者を選ぶと自殺未遂をはかり、自らの人格を壊してしまう。

 

後者を選ぶと、どうやったのかもう一つの人格と意思疎通を図り、

この体を好きに使っていいと話したという。

こっから長いので端折ります。

みちるを引き出し再度意思を問う→死にたいという→わかった→

(偽の)葬式を行い友人の声をみちるに聞かせる→いやだやっぱり死にたくない

→もう逃げない

別人格編

事故で意識だけの存在に→両親の苦悩が聞こえる、感じる→心臓をドナーとして

提供されることに→みちるに収まる

みちるの友人として母に会いたいという→あわせてやる→母の元へ

自分は愛されていたのか→その通り→満足する別人格

 

そしてみちると別人格(結局名前は最後まで分からない)は同時に表に出られることに。

取り合うような格好に。

みちるには雄二、別人格には遠くの母。寄り所がいる。それで十分ではないか。

 

<感想>

幼少時の心的外傷、友人が目の前で自殺、心臓病、これらはとても重いのに、

それをぶち壊しにする心臓の人格。

奇をてらえばいいというものではない。

 

惜しい。

 

◆榊由美子 うつーん:☆☆☆ 3/10

大金持ち大企業の社長、父との確執。

実際にはかなり長く述べられるが、由美子自身だけでいうなら心的外傷とはいえない。

事実、(ある挙動を除けば)一番精神的に安定はしている。

 

父は、かつては女だからという理由で軽んじた娘を迎えんとし強引な手で

かどわかそうとする。

雄二は、自分の属する組織を頼れない、自分だけで守ると決意。

 

こうして逃亡しながらの同棲生活が始まる。

しかし、逃げ切れるものではない。

選択肢。「父と向き合う」か、あくまで「逃げ続ける」か。

 

逃げた場合、あっけなく逃亡は終わる。追手がなくなったから。

その後、子供もでき、幸せな家庭を築く。

 

対峙する場合、これまた長い。あの、バランス大事。選択肢分けでさ、1:9の長さはない。

また流れだけ。

 

由美子と雄二、父の権力をつぶす策を練る→準備→策なりけり→父社長でなくなる

父、娘に株を譲る→娘、株を使って起業する

父、母が死んだ病院にいることを知る→雄二、父に話を聞く→自身の考えを話す

 

娘ができる→病院の父、もといおじいちゃんにあう→父と娘も和解する

 

<感想>

いい話。だが、まさにこの駄文のごとく、まとまってない。

 

由美子がなぜかごの鳥になったのかの経緯が長いうえ、それほど大したことでもない。

父が由美子を人形のように扱おうとした理由が、自分もそうされたからだ。

 

でも最後はいい話。このルートだけバッドはない。

また家族の形が見えるのも由美子さんだけ。メインヒロイン優遇ですか?

 

<総評>

まとめて書くと訳が分からなくなるので個別にしました。

起承転結が比較的しっかりしている蒔菜、天音、幸は

起:雄二とヒロインが仲良くなるまで

承:過去(蒔菜は雄二を父と重ねている、天音は親友の弟に対して、幸は幼馴染に)

転:過去に対して今どう動くか

結:動いた結果からエンディング

がしっかりしており、読み解きやすかったです。

多分、何かしらの関係性をはじめに提示していたのが大きかったのではないでしょうか。

 

対し、雄二との関係性が少々強引だったせいか(とくにみちる)

起が難しくなってしまったみちると由美子は、どうしてもなんで恋仲になったの?

が苦しかったように思えます。

過去も重要ですが、惜しいと思いました。

 

それと、一人だけどうあってもスナイパーになってしまう蒔菜は、

普通にパン屋一本ではだめだったのだろうか。

遊びならともかく、あれはどうみても殺しですよね。

 

すんごい端折ってしまって自分も惜しいですが、もし興味を持たれたら、

 エンジェリックハウル(天音過去) ※アニメもかなり端折られてますが、実際長い

 共通に出てくるデイブ教授 体を張って生き物の生態を検証するすげえ人

あたりをおすすめします。

共通も結構面白いですよ。