福岡在住塾講師ハイジとあふぉな中学生たちとの熱い戦いの記録。
完全ノンフィクション。 ※ただし生徒を含め登場人物の名前は全て偽名orあだ名。
※このブログの更新はSTOPしました。
新しいブログを同じくamebaで更新しています。 こっちの方は俺の日常を書いていくつもりです。
興味のある方は、自力で探し出してください(どーん
多分福岡とか大学生とか検索してたら出るんじゃないかなw? ヒントは「●●●●、アンパンマン」
-そして、巣立ちのとき-
~~はじめに~~
今日の日記は、俺がハイジとして書く最後の日記です。
今後はこのlimおバカ→∞の更新はせず、新しい方のブログだけ更新していくつもりです。
なのでいつもより少し長めですので、苦痛に耐えれる人だけ読んでくださいw
ついに今日が公立高校入試の合格発表。
そして、俺が塾講師として塾へと足を踏み入れる最後の日だった。
朝8時。 起床。
21日に広島に帰省するため、郵便局へ行き一足先に荷物を送る。
そして原付に乗り塾へ。
いつもと同じ塾への道。 俺の下宿先から塾までは片道30分弱程度。
行きつけのラーメン屋、ガソリンスタンド、いつもと同じ風景だけれど、この光景を目にするのも当分ないかと思えば少し感慨深いものがある。
塾に着くとマサキ先生が先に来ていた。
塾長はいつものようにパソコンに向かって作業中。
そして・・・
貴恵 『・・・・こんにちは。』
時刻は10時少し前。 試験結果が高校に掲示されるのは9時。
当然生徒は自分の合否の結果は知っているわけだ。
ハイジ 『こんにちは。
・・・・・・・どうだった?』
貴恵は俺が昨年この塾に来たとき、今の3年生の中で一番最初に俺と話をした生徒。
今でも覚えてる。 周りのバカ騒ぎした空気になじめずにいた俺に最初に話しかけてくれたのが貴恵だった。
だからかどうかは知らないが、貴恵の入試結果が俺は他の先生以上に気になっていた。
貴恵 『・・・・・受かってた。』
ハイジ 『そうか! よかった!! ホントによかった・・・!!』
最初に貴恵の『合格』の知らせを聞けたことが、俺にとっても大きな意味を持っていたのかもしれない。
その後、会社内部のメールで次々と生徒の合否が分かっていく。
個人情報の問題もあるので、合格率や受験人数等を書くことは控えるが、俺はその結果に一喜一憂した。
受かっていた子、受かっていなかった子。
これは俺の素直な感想だが、「一生懸命最後まで勉強していた子」はほとんど受かっていた。
落ちたのは皆、私立入試後に気が抜けてしまったり、もう公立入試での合格を諦めていた子たちばかりだった。
「自業自得」
・・・そう言いきってしまいたくはない。 もちろん彼ら自身の姿勢の問題も大きいが、
俺達塾講師がもっと勉強することの意義や喜びを感じ取らせてやれなかったことにも不合格の原因はあると思う。
「頑張ったやつには必ず成果が出る。」 そのことを身を持って感じ取らせてやれなかったことは本当に申し訳なく思う。
そして午後5時。 合格した生徒たちの数人は塾に報告に来た。
サエ 『先生受かったけん^^』
林先生 『おめでとう☆』
ハイジ 『よかったな~。 ホッとしたよw』
律子 『こんにちはー。』
ハイジ 『律子、おめでと☆ よくやったな^^』
律子 『うん^^』
律子も心からの笑顔で答えた。
江梨子 『先生受かったけん何かおごって~~☆』
ハイジ 『早速かお前は∑( ̄☐ ̄;)!! んなもん自分で買えよ・・・。』
律子 『あ、ハイジ~~。 メールんときもっと絵文字とか使ってよー!!』
紗雪 『え?? ハイジとメールしよーと??』
ありっぺ先生が勝手に俺のアドレスを律子と修弥に教えたのである( ´_ゝ`)
まぁ自分のも教えてたからいいけども・・・。
紗雪 『ずるいしっ!! ウチにも教えてよぉ~!』
悠美 『3分に1回くらいメール送っちゃー。』
ハイジ 『そしたら俺が3分に1回返信せんといかんがな(((((((ーー;)』
こうしてすごい勢いで俺のアドレスが生徒に広まり・・・
卒塾後もやつらに迷惑を被ることが決定したのである( ´_ゝ`)
午後6時半。
修弥 『こんにちは。』
ハイジ 『修弥!!』
修弥も受験校に合格した。 しかもかなり厳しいところで、受からない可能性の方が高かった。
ハイジ 『良かったな、良かったな! お前の合格を聞いたときは泣きそうになったよ・・・。』
修弥 『ありがとはいじス☆ ・・・はい、コレ。』
修弥が取り出した一つの包み紙。
修弥 『はいじスとはホントにいつもケンカばっかりで、でも一番お世話になったけんね。
・・・今までホントにありがとう。』
ハイジ 『・・・お前・・・そう・・いうの反則やけんな・・・!
ありがと。 ホントにありがと!』
もう今日は笑うだけで泣かないでおこうって決めてた。
・・・だから必死になって涙をこらえた。
そして、こいつも塾へとやってきた。
ともチ 『こんにちはー。』
林先生 『おぉっ! 来た!』
塾長 『ハイジ君! ともチが来たぞ! ハイジ君!!』
ともチは最初から最後まで、一度たりとも俺に素直な姿を見せることはなかった。
これまでも一度たりとも感謝の意を示したことはなかったし、俺にどんだけ迷惑をかけても、こう言うだけだった。
ともチ 『それが先生の仕事やし。 当たり前やん。』
でもそれでもいつも俺のところにやってきては数学の話も要らない話もしてくれて、
それゆえ俺が塾の中で最もともチに愛着がある先生だということを林先生も塾長も分かっているため、ともチが来た途端俺を呼んだのである。
ハイジ 『・・・よかったな。 合格おめでとう。 お前が受かったって聞いて安心したよ・・・。』
ともチの受けた高校は律子やサエと同じ難関校。
正直数学しか得点源のないともチの点数じゃ合格は難しく、受かるか落ちるかの瀬戸際だとうちの校舎の誰もが思っていた。
ハイジ 『落ちるんじゃないかと思って正直ビクビクしたけど、受かってよかったな^^』
そういう俺に対してともチは、
ともチ 『ふん。 まぁね。』
最後まで愛想がなかった(´~`;)
・・・でもまぁいいんだ。 受かってさえくれれば。
こいつが笑顔で卒塾さえしてくれれば、ねぎらいの言葉なんて一つもいらなかった。
ハイジ 『ともチ、今日お母さんと一緒に来たのか?』
ともチ 『ううん。 来てない。歩いてきた。』
ハイジ 『そうか。 迎えには?来られるか?』
ともチ 『多分来んけん。 何で?』
ハイジ 『いや、最後にちょっと話をしておきたくてな・・・。』
俺はともチの母親と面識があった。
それは単に俺が数学担当だから、というだけではなく、俺のやっていた数学の特別補習に関係がある。
以前このブログでも書いたが、俺はこの塾の成績上位者を対象とした数学の特別補習を毎週行っていた。
全て無償の俺のボランティアで、授業形式のものと、ノートによる添削と。
律子、雪奈、サエ、やっこなどもそのメンバーだった。
・・・そしてともチも。
ともチは決して、成績上位者ではなかった。
塾内のテストでも、常にトップ3に入るサエや律子と違って、ともチは10位以内に入ることさえ難しかった。
でも俺は初めてともチの数学担当になった日から、ともチの持っている数学的なセンスと、口は悪いが人一倍負けず嫌いなところをかっていた。
ハイジ 『お前俺のやってる特別補習に来てみないか? 強制はしないから、家に帰って親と相談して考えて来い。
土曜の休みの日にも塾に来ることになるし、昼食代や送り迎えとかでご両親に迷惑をかけることもあるから。』
そう言った俺に対しともチは、
ともチ 『・・・やる。』
と即答したのだった。
そうして特別補習に参加し始めたともチ。今でこそ数学は得意科目となっているが、小学校の頃から数字を見るのも大嫌いだったというだけあって最初は伸びが悪くて悩んだ。
こいつにこの特別補習は無理だったんだろうか。
ともチにとって重荷になることを課してしまったのだろうか。
・・・俺は悩んで後悔したことが何度もあった。
しかし夏が過ぎ、冬休みも終わり・・・
気づけば数学はともチの得点源になっていた。
塾から自宅に電話をかけるともチ。
ともチ 『・・・うん、そう。 ハイジが話したいんだって。
・・・あぁ、そうと? ・・・・なんか母さん迎え来れんって。』
ハイジ 『あぁ、そっか。』
ともチ 『今代わるよ。 ハイ。』
ともチと電話を代わる。
ハイジ 『もしもし、ハイジです。』
ともチの母 『ハイジ先生、ほんとこのたびはお世話になりました☆』
ハイジ 『いえ、とんでもありません。 合格、おめでとうございます。』
ともチの母 『本当、ハイジ先生には色々とご迷惑をおかけして・・・。
小学校の頃から一番算数が苦手で、数字を見るのも大嫌いだったあの子がここまで数学を好きになってくれたのも先生のおかげです。 ありがとうございました。』
純粋にうれしかった。 お母さんは俺のことをすごく信頼してくれていて、塾に来るたびに俺に挨拶をしてくれていた。
ハイジ 『いえ、そんな! 〇〇さん(ともチ)が頑張った成果だと思っています。
・・・実は僕も今日で塾を辞めるんです。 ですから今年の3年生は何としても合格させてやりたくて。』
ともチの母 『えっ、先生お辞めになるんですか!?』
ハイジ 『ええ。 教員採用試験を受けようと思っておりますので、来年度も続けることは難しいと思いまして・・・。
〇〇さん(ともチ)の合格の吉報を聞いて辞めることが出来て本当にうれしく思います。』
ともチの母 『ハイジ先生ならきっと、きっと立派な先生になられると思いますよ。
一年間、授業から補習まで何から何までお世話になりました。 ありがとうございました。』
電話口で何度も何度もお礼を言って下さるともチお母さんと、そのあつい感謝の言葉の数々で俺の目に少し涙がにじんだ。
そして、
ハイジ 『じゃぁ、俺もう上がります。』
悠美 『え! もう帰ると!?』
有里香 『もっとおればいいやん!』
ハイジ 『広島に帰る準備とかやることがいっぱいあんだよ。 お前ら高校行っても頑張れよ。』
悠美 『メールするけん! 3分おきにするけん!』
ハイジ 『しすぎじゃ( ̄Д ̄;)』
俺がカバンを手に靴箱へ向かうと、ともチが一言、
ともチ 『ハイジっ! 今までありがとっ!!』
こいつ・・・初めてありがとうとか言ったし・・・
素直になるなら最初からなれよ・・・!!
一気に目頭が熱くなったが、ともチの前で泣くわけにはいかず堪えた。
林先生や塾長と最後の別れをして、俺は塾を後にした。
こうしてあっけなく、こんなにも早く訪れた教え子たちの巣立ちのとき。
彼らは俺と同じく、この通い慣れた塾を後にして新たな旅路を行く。
塾無しの日常。 あふぉな生徒たちとのコミュニケーション無しの日常。
はっきり言って想像がつかないが、もう1年あいつらと共に過ごせたら、俺はそんなくだらない日常をもっと大切に過ごしていたかも知れない。
『先生のおかげで合格出来たよ!』
『先生のおかげで数学好きになったけん♪』
・・・違う。 俺のおかげなんかじゃこれっぽっちもない。
お前らが俺を信じてやってきてくれた成果。
お前らがこんな自分勝手でやりたい放題な塾講師の教えを黙って聞いてくれた成果。
だから逆に俺がお前らに言いたい。
『お前らのおかげで、俺は塾講師としてやってこれた』
結局、塾から、そして塾講師ハイジの授業から巣立って行く彼らの前で、
生徒たちから巣立っていないのはむしろ俺の方で・・・
「limおバカ→∞」
あいつらがもし、
すごく真面目で、大人で、賢くて、模範的な生徒だったとしたら
俺はこんなにも涙を浮かべて日記を書くことはなかったかもしれない。
バカが一生懸命出した結果だからこそ、バカが何も考えず出した感謝の言葉だからこそ、
感動は胸の中で無限に広がっていく。
お前らよりむしろ、この台詞は俺が言うべきなんだと思う。
今まで本当にありがとう。
お前らがおバカで本当によかった。
2008年3月19日 limおバカ→∞著者 ハイジ