【本のレビュー】ハチはなぜ大量死したのか? | 数学を通して優しさや愛を伝える松岡学のブログ

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ハチはなぜ大量死したのか? (Fruitless Fall)

ローワン・ジェイコブセン、 文春文庫

 

 

本書の序章 「ハチが消えた」 は、次のように始まります。

 

 

 

巣箱という巣箱を開けても働きバチはいない。
残されたのは女王バチと幼虫そして大量のハチミツ。
2006年秋、北半球から四分の一のハチが消えた。

 

 

 

地球の北半分から、

四分の一のミツバチが消えたなんて衝撃ですね。

 

まさに推理小説のような出だしです!

 

 

しかしこれは、推理小説でも、ファンタジーでもなく

現実の世界に起きている出来事なのです。

 

そして、この問題は現在も続いています。

 

本書では、ハチが大量失踪、

もしくは大量死しているという重大問題に対して、

その原因を突き詰めるべく、深く切り込んでいきます。

 

原因は?

犯人は?

背景は?

 

 

その原因の候補は、たくさんあります。

 

ダニ

殺虫剤

伝染病

ウィルス

農薬

抗生物質

遺伝子組み換え作物

栄養失調

電磁波

地球温暖化

宇宙人?

 

など、原因の候補が、こんなにもあるのです!

 

 

 

 

冷静に考えてみると、、、

 

ミツバチはこんなに過酷な状況に置かれているのです。

 

万が一、ミツバチが地球上からいなくなったら、

私たちにどのような影響があるでしょうか。

 

ハチミツさえ食べなければいいと考えていませんか?

 

私たちへの影響は、ハチミツだけの問題じゃありません。

 

りんご、みかん、桃、ブルーベリー、

スイカ、きゅうり、ナス、トマト、ゴーヤ、・・・

 

ほとんどのフルーツや野菜は、ミツバチによる受粉で作られます。

 

ミツバチがいなくなったら、

私たちの食卓はどんなに寂しいものになるでしょうか!

 

私たちの食を支えるために、

ミツバチたちは、 過酷な環境の中で働いているのです。

 

 

普段、私たちが何気なく食べているアーモンドチョコ、

そのアーモンドを受粉させるためにも、大量のミツバチが必要です。

 

いまや、アメリカの広大なアーモンド畑

受粉作業をする ミツバチが足りなくなってきているといいます。

 

アーモンド畑で受粉作業をするために、

大量のミツバチが必要になります。

 

全米から、レンタルでミツバチが集められます。

 

長距離トラックに乗せられて、

長旅をしてきて、

現地では、休みなく働きます。

 

しかも、先ほど書いたように

 

ダニ、殺虫剤、伝染病、ウィルス、農薬、抗生物質、・・・

 

などの危険にもさらされています。

 

なんだかミツバチさんたちが、かわいそうになってきます。

 

 

 

 

私たちは今、自然を大切にすべきときに、

きているのではないでしょうか。

 

本書のタイトルの日本語訳は 『ハチはなぜ大量死したのか?』 ですが、

オリジナルの英語のタイトルは、

 

Fruitless Fall

 

直訳すると、「実りなき秋」。

 

すなわち、

 

ミツバチが世界からいなくなって、

秋の収穫ができなくなる日がきたとしたら、

 

という意味のこもったタイトルです。

 

本の売り上げを考えて、推理小説ふうの

『ハチはなぜ大量死したのか?』 というタイトルにしたのでしょうが、

 

私自身は 『実りなき秋』 というタイトルが好きです。

 

 

そんなタイトルに込められているように、

本書の後半からは、自然の大切さがひしひしと伝わってきます。

 

筆者の自然への 「愛」 が、読みながら伝わってきます。

 

 

また、本書のタイトルは、

 

1962年に出版された レイチェル・カーソン

 

 『沈黙の春』 ( Silent Spring )

 

を意識して、つけられたタイトルだといえます。

 

 

この本は、殺虫剤などの農薬によって土壌が汚染されることで、

 

鳥たちが消えてしまって、

春になっても鳥のさえずりが聴こえなくなってきた

 

というテーマの本です。

 

鳥が、土壌に住む虫を食べているからです。

 

鳥がいなくなった原因を分析しながらも、

自然への愛をこめて書かれたのが、

レイチェル・カーソンの 『沈黙の春』 です。

 

ミツバチの失踪を描いた本書と、テーマが同じですね。

 

 

タイトルを並べてみると、

 

沈黙の春  Silent Spring 

実りなき秋  Fruitless Fall

 

と見事に対比しています。

 

春に鳥が鳴かなくなり、

秋に果実が収穫できなくなったら

どんなに寂しいでしょう。

 

こんなこともあり、

私は本書を 『実りなき秋』 と呼ぶようにしています。

 

 

『沈黙の春』 が書かれたのは、約60年前。

そのころ、土壌汚染で鳥が減ってきました。

 

そこから約50年後、本書が出版された頃には、

ミツバチが大量失踪するようになりました。

 

今、本書が出版されて10年以上が経ちました。

 

自然はどうなっているのでしょうか。

 

 

 

 

数学者の岡潔先生は、スミレの花が好きでした。

 

60年前、野原にあまりチョウが飛ばなくなり、

スミレやレンゲなども見かけなくなってきたことを憂いていました。

 

岡潔先生は、

 

数学をすればするほど、自然を大切にする気持ちが芽生える

 

というような意味のことをいいました。

 

数学と自然って、関係なさそうにみえるのに、

不思議ですね。

 

 

そういえば、、、

 

フランスの数学者・グロタンディークも、

 

ある日、突然数学をやめて、ピレネー山脈のふもとにこもって、

自然生活をするようになったといいます。

 

数学者って、純粋なのかもしれませんね。

 

私自身も、数学をすればするほど、

気づけば、自然を大切にしたいと思うようになってきました。

 

理由は分かりません。

 

 

数学者のことも交えて、自然について書いてきましたが、

普段、私たちが当たり前のように感じている自然について、

考えなければいけない時期にきているように思います。

 

本書を読むことで、自然の大切さを肌で感じることができます。

 

あなたもぜひ、『実りなき秋』 『沈黙の春』 を読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

< 今回紹介した本 >

 

ハチはなぜ大量死したのか? (Fruitless Fall)

ローワン・ジェイコブセン、文春文庫

 

沈黙の春 (Fruitless Fall)

レイチェル・カーソン、新潮社

 

 

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