こんにちは、口腔から免疫力を上げる
歯科医師・心理カウンセラーの松谷です。
不妊症治療において日本では見逃される微量ミネラル
今回は、ミネラルと妊娠に関するお話です。とりわけ、近年になって増加してきている不妊症のお話です。
一般的に、不妊症と呼ばれるものの原因は多くあると言えますが、日本では殆ど見逃されてしまっているものの一つが、微量ミネラルの摂取不足に関することです。
このことは、海外の様子と比較すると、日本の遅れが更にはっきりと浮かび上がってきます。即ち、海外においては不妊症の原因の一つとして微量ミネラルにも着目し、詳細な研究が行われているのですが、日本においては少なくとも医学教育や医療現場においては、このような栄養学に絡む問題は避けて通ろうとしているようにも見えます。
そのため、たとえば主治医に「亜鉛が足りないのではないでしょうか?」などという質問をしても「そのようなものは関係ありません」という返事が返ってくることが多いはずです。
さて、掲載した図のグラフは、オーストリアにおける研究結果の一部であり、不妊症で受診している40名が研究対象になっており、そのうち多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断された人が20名含まれています。そして、これまでから不妊症の場合に不足していることが確定的となっている微量元素、即ち、亜鉛、セレン、銅、の3種類が測定対象として採り上げられています。
左側のグラフ(A、B、C)は、これらの微量ミネラルについて、血清(serum)と卵胞液(FF)における濃度が比較されたものです。これによると、平均的には、卵胞液の微量ミネラル濃度は血清におけるそれの半分以下であることが分かります。ただ、血清と同レベルまで高まっている卵胞液もあり、そのような状態になっている卵胞のみが卵子の成熟を可能にしているのだろうと研究者らは述べています。
その右側のグラフ(D、E、F)は、血清のミネラル濃度と卵胞液のミネラル濃度の関係を示したものですが、両者には正の相関のあることが分かります。
以上の2種類のグラフから、卵子の周囲を取り囲んでいる卵胞液は、微量ミネラルの濃度を正常値まで上げることが非常に難しいことを表していますが、血清と卵胞液の微量ミネラル濃度には正の相関があるため、血清の微量ミネラル濃度を高めることによって卵胞液の微量ミネラル濃度を高めることが可能なことを意味しています。
次に、右下に掲載したグラフですが、これは血清の微量ミネラルに関するものです。因みに、微量ミネラルは3種類ですが、グラフが4種類あるのは、右下(D)はセレンの代わりになるマーカーとして使われているもの(グルタチオンペルオキシダーゼ)ですので、特に気にしてもらわなくても結構です。
このグラフから言えることは、不妊症の中でもPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)において、特に亜鉛濃度が低くなっていることを読み取ることができます。
従いまして、PCOSを治療するためには、何よりも先ず血清の亜鉛濃度を高めることが必須だと言えるわけです。
このような知見を見て、最も知っていただきたいことは、日本の不妊治療においては微量ミネラルの件が全く見逃されてしまっていることです。
では、典型例であるPCOSの治療は、一般的にはどのように行われているのでしょうか?
【1つ目】ホルモン療法が行われることです。
PCOSの場合はアンドロゲンが過剰だというので、逆に女性ホルモンを増やしたりする処置が行われます。では、なぜアンドロゲンが過剰になるのかと言えば、インスリンの分泌量が高まるからです。要するに、インスリン分泌量が増える状況下では男性ホルモン濃度を高めることが生存にとって有利だという進化をしてきたのだと考えられます。では、なぜインスリン濃度が高まるのかと言えば、分泌されたインスリンが過剰に分解されてしまうからです。なぜ過剰に分解されるのかと言えば、膵臓から分泌されたインスリンを守る働きをしている亜鉛が欠乏しているからです。
【2つ目】PCOSの治療のために、糖尿病治療にてインスリン抵抗性を改善する薬が使われます。
即ち、多く分泌されたインスリンが直ぐに分解されてしまうため、糖尿病の状態になりますので、糖尿病の治療と同じようなことが行われるのです。決して、原因である亜鉛不足を解消するために亜鉛の補充などは行われません。あくまで、対症療法が行われるわけです。
【3つ目】当然のことながら、ホルモン療法をしても、糖尿病対策をしても、PCOSは治りませんから、妊娠できないままです。そのため、次には排卵誘発剤の使用や、更には体外受精も試みられます。要するに、母体の卵胞の改善は期待できそうにないと判断し、最終手段に持ち込まれるわけです。
このように、日本においてPCOSを治療する場合、その根本原因である亜鉛不足を解消するのではなく、全く的外れな治療が行われるのです。そして、場合によっては高額の治療を受けたにも拘わらず、結局は妊娠に至らなかった…という例が続出することになっています。
現代の日本では、特に若い女性が美味しいものに惹かれて外食するのが当たり前のようになっています。日本人の平均値で言うと、亜鉛の摂取必要量に対する充足率は女性で77パーセント程度です。
低い人はもっともっと低いはずですから、それでは妊娠できるはずがありません。また、セレンを含めた他の微量元素も不足していることが多いですから、このような栄養素の補給をしっかりと行っていかなければなりません。併せて、的外れな治療が行われないよう、医学教育における栄養学を充実させなければなりません。子どもが授からずに辛い思いをする人を一人でも減らすために…。
(清水隆文FB記事のシェア)
~結論~
不妊症治療において、1つが原因とはいえません。
今回は、見逃しやすい微量ミネラルに焦点を合わせていますが、
歯周病菌が原因の不妊症もあります。
要するに、日頃からバランスの良い食事を摂取し、
腸内細菌叢を最適化する。
腸活よりも上流である口腔内のケアを怠らないも重要です。
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