心に響く建築 | 住まいのすゝめ

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私たちは、自分の家をどんなふうにつくるかを考えるとき、どんなことに気を付けますか。デザインや機能性、コストや環境など、さまざまな要素があります。しかし、それだけでは十分ではないと思います。家は、私たちの生活の舞台であり、私たちの心の拠り所です。だから、家づくりには、私たちの心に響くものが必要なのではないでしょうか。そのような家づくりの一つの例として、建築家の吉村順三先生の建築をご紹介させていただきたいと思います。

吉村先生は、日本のモダニズム建築を代表する一人でいらっしゃいました。彼は、東京美術学校(現:東京芸術大学)で建築を学ばれ、その後、フランク・ロイド・ライトの弟子であるアントニン・レーモンドの事務所で働かれました。日本とアメリカの建築文化を融合させることに挑戦され、多くの作品を残されました。彼は、家はただの建物ではなく、人の感情や思考に影響するものだとお考えになっていました。だから、彼は自分の建築を「詩」と呼ばれました。

彼が設計された家には、人間の心理や感覚に合わせた工夫がたくさんあります。例えば、天井は低くされています。天井に照明は付けられていません。むやみに窓は付けられていません。これらは、一見すると不便で暗く感じるかもしれませんが、実は人間の心に響くものなのだと思います。

天井は低くされているということは、人間の身体にぴったりと合う空間をつくるということなのでしょう。高い天井は、開放感や気品を感じさせますが、寒さや孤独感も感じさせます。低い天井は、温かみや親密さを感じさせます。これは、人間の進化の歴史に関係しています。人間は、もともと洞窟や小屋などの狭い空間で暮らしていました。そのため、狭い空間に潜在的な安全感を持っているのです。逆に、広い空間は、敵や危険にさらされる可能性が高いと感じるのです。吉村先生は、人間の身長に合わせた天井高を提案されました。この家では、天井が低いことで、安心感や居心地の良さを感じることができるのではないでしょうか。この家は、人間の身体に寄り添う芸術作品なのだと思います。

天井に照明は付けられていないということは、光と影の効果を生かすということなのでしょう。天井に照明を付けると、部屋全体が均一に明るくなりますが、光の強弱や方向がなくなります。天井に照明を付けないと、部屋の中に光と影ができ、空間に奥行きやリズムができます。これは、人間の視覚に関係しています。人間は、光の強弱や方向によって、物体の形や距離を判断します。光の強弱や方向がないと、物体の立体感や空間の深さが失われます。吉村先生は、壁や床に照明を付けたり、自然光を入れたりすることで、光の効果を引き出されました。この家では、天井に照明がないことで、自然の光に合わせて生活することができるのではないでしょうか。この家は、人間の視覚に魅せる傑作なのだと思います。

むやみに窓は付けられていないということは、外の景色を大切にするということなのでしょう。窓は部屋に光や風を入れるだけでなく、外の景色を見せる絵画のようなものです。窓が多すぎると、部屋の中と外の景色が一緒になってしまい、外の景色に飽きてしまいます。窓が少ないと、部屋の中と外の景色が区別され、外の景色に興味や好奇心がわきます。これは、人間の注意に関係しています。人間は、新しいものや変化するものに注意を向けます。同じものや変化しないものには、注意が薄れます。吉村先生は、窓の位置や大きさを工夫することで、外の景色を美しく見せられました。この家では、窓が少ないことで、外の景色に惹きつけられることができるのではないでしょうか。この家は、人間の注意に訴える傑作なのだと思います。

吉村先生の建築は、人間の心理や感覚に沿ってつくられた、詩的な建築です。この家には、人の感情や思考に訴えかける力があります。この家に住むとしたら、あなたはどんな暮らしをされたいですか。

 

関連サイト:吉村順三さん(住宅作家・建築家)を詳しくまとめる。建築、建築思想、実際の事例など

 

動画:トンボハウス【YouTube】