本(地面師たち ファイナル・ベッツ)(ネタバレあり、長文失礼します)
ネットフリックスで話題になったドラマ「地面師たち」の原作の続編で、副題のファイナル・ベッツとは、カジノ用語で「最後の賭けをする」という意味です。
物語全体のテーマである「賭け」を象徴するものであり、前作で石洋ハウスから100億円を騙し取ってシンガポーへ逃亡したハリソン山中が、次に仕掛ける地面師詐欺の全容が、その仕込みから詳細に描かれています。
今回のターゲットは北海道釧路市の海に面する広大な土地で、温暖化による北極海航路を見込んだリゾート開発用地の売買価格は210億円。前回の石洋ハウスの倍以上の莫大な規模となります。騙す相手はシンガポールのディベロッパー(不動産開発業者)で、社長はコングロマリットのグループを率いる社長の御曹司という設定です。
シンガポールを拠点とするハリソン山中が当初狙ったのは、IR候補地となった同じ北海道の苫小牧でしたが、知事選でIR反対派が当選すると計画を変更した経緯があります。
分業制である地面師詐欺には、リーダーの他にも必ずメンバーが必要であり、今回も前回と違うメンバーが招集されますが、その中の1人にシンガポールのカジノで無一文になった元Jリーガーの稲田がおり、今回はこの稲田がハリソン山中と共に中心人物となってきます。
犯罪組織に入るメンバーの動機はそれぞれですが、共通するのは経済的な困窮や弱点を握られて従うしかないような状況で、メンバーの女性によるハニートラップも常套手段として、詳細に記されています。
ターゲットとなるシンガポールのディベロッパーの社長に対して、アメリカのMBA時代の仲間だった日本人をハニートラップで協力者として加担させ、その女性も偽名を使って社長に接近するように仕掛けます。それぞれが釧路の土地購入を持ち掛けますが、形勢が不利になるとさらに偽情報を流して、購入意欲を高めるようし仕掛け、契約まで持ち込もうと様々な策略を講じていきます。まさにやるしかない「賭け」にでる訳です。
契約前の売主本人確認では、なりすまし役が質問に答えていく訳ですが、ボロが出ないように、まさに冷や汗ものの展開が続きます。私も実際に不動産売買契約に立ち会ったことがありますが、こんなの直ぐにバレるんじゃないかとツッコミを入れながら読んでいましたが、実際のリアルな状況では予測できないものがあるのかもしれません。
一方で辰の意思を継いで、ハリソン山中を逮捕すべく追跡する刑事のサクラの行動も同時進行で描かれていて、緊迫感のある展開となっています。