『クライ・マッチョ』 | 日々是(ひびこれ)デス・ロード

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自分の好きなものについて垂れ流していくブログです。基本ネタバレ全開なんでそこんところ注意。



〜真の“マッチョ”は魂にあり!!〜


1978年、アメリカ。マイク・マイロはかつては名を馳せたロデオスターだった。しかし、事故により引退して以来落ちぶれ、以降は牧場で馬の調教師として生計を立てていたがクビになってしまう。

1年後。そんなマイクに、ある日とある仕事が舞い込む。それは、マイクをクビにした当のハワードの頼みであった。

それはメキシコで情緒不安定の母親レタと暮らす13歳の少年のラファエル(通称、ラフォ)を父親であるハワードの元に送り届けるというものだった。

半ば誘拐というその依頼であったが、ハワードに過去の借りを迫られたマイクは断ることができなかった。

そして、紆余曲折の末になんとかマイクは、ラフォと彼の心の拠り所である闘鶏の“マッチョ”と共にテキサスへと向かうべく旅を開始するが、レタ一味にメキシコ警察と、追手が迫っていた――。




遂に観れました、『クライ・マッチョ』!

いや~、やっとこさです。

アマゾンプライムビデオでレンタルで観ました。


個人的には、本ブログの『運び屋』の記事でも書いた通り、『クライ・マッチョ』もイーストウッドの吹き替えは多田野曜平さんで頼む!と淡い期待をしていたらまさかの叶ったりですから、もう大歓喜ですよ!


というわけで、息をするように日本語吹き替え版を視聴!

以下、感想をば。



イーストウッド、なんか流石にもうヨレヨレですな…(´・ω・`)

イーストウッドの歩く姿とか見て、うちの死んだじいちゃんを思い出してなんか悲しくなりましたよ…。


で、ストーリー的には、漢クリント・イーストウッドと思春期の少年の心の交流な旅路、的な感じ。


すご〜く淡々としていて、すご〜く緩やか〜で、すご〜く観やすかったです。


淡々としている中にも、ちゃんと人間ドラマがありまして、個人的にはその塩梅が凄く良かったですね。


上手く表現出来ないのがもどかしいんだけども、なんというか、“緩やかに流れる小川の様な”タイプのこういう感じの映画、俺、大好きです。


観る前は、結構バリバリに社会派テーマ的なのがあるとか、イーストウッドが無駄にイーストウッド流の人生訓を垂れ流すタイプかと思ってたんですよ。

クリント・イーストウッドは社会派テーマ的なもんに凝ってるイメージがありますし。

個人的には、『ガントレット』路線とか物凄く大好きなんですけどね。

まぁ『クライ・マッチョ』は『ガントレット』路線ではないけど。


本作は穏やかだけど、やっぱし「自分とは何か?」とか思春期あるある的な思春期真っ只中の不安定な少年の姿が描かれ、それを人生を捨て鉢気味にしている老人が助ける、という感じなドラマがきちんと描かれているところが流石はクリント・イーストウッドです。


人としての道理を破るラフォをマイクは逐一止め、出来る限り正しい道に導こうとする。

まぁ、アウトローではあるけれどもね(笑)


グレていても実は人を信じて人から愛されたいラフォ。対するマイクも実は幸せを求めている感じ。

二人とも不器用だなー、なんて思いで観てました。

そんな二人の不思議な友情物語が本作です。


あとは、ラフォの母ちゃんであるレタの情緒不安定さが、ギャグか!?ってくらいにヤバい(笑)

突然烈火の如くキレたレタに対して、「え…?何こいつ…」みたいな顔をするイーストウッドの表情に笑いました(笑)

普通そういうリアクションになるわな、あれは(笑)


そして、それとは対象的に、道中に小さな町で出会う飯屋を営む女性・マルタの善い人ぶり加減がヤバいですね。


あと、闘鶏のマッチョが可愛かったです。

まさかニワトリを可愛く思う日が来るとは…。

そして、やたらと頼もしい!

で、「俺のコーヒー飲むなよ?」ってマッチョに言うマイクに笑った(笑)


(↑ニワトリと一匹狼な爺の図)


車を盗まれ、そんでラフォがそこら辺からパクってきた車も駄目になり、マルタの住む町に暫くの間足止めを食らうことになるマイクとラフォ。


そんな中、マイクは電話にてハワードが口を滑らせたことにより、彼がラフォをレタに対しての金儲け(不動産関係)の取引材料(いわば人質)にしようとしていることを知る。

全て騙されていたことを知ったマイクは、はなからラフォに居場所が無いことを悟る。現実はどこまでも残酷である。

そして、心を悔い改めて自分を待ちわびているという実父への期待に胸を膨らませるラフォに、マイクは優しい嘘をついてしまうのだった…。


これは考えすぎかもしれないが、このシーンでは、日光が当たるラフォに対して嘘をつくマイクの顔は影で隠れている。

陰影という分かりやすい表現・演出をクリント・イーストウッドは自分の映画ではわりかしよく使うような印象。


そして、馬への接し方等を通して本格的に心を通わせて友情を築いていくマイクとラフォ。

マルタと恋に落ちるマイク。


しかし、追手が迫ってくる。

惜しみつつマルタ一家と別れる二人。

そして、真実を知り、また人間不信に陥るラフォ。


昔のあんたはマッチョだっただろうが今は腑抜けだ、というようなことをマイクに言うラフォ。


男は皆、マッチョに憧れる。身体や心がマッチョでありたいと望むが、実際は凄く薄っぺらいもの。

歳を食ってそれが初めて解る。


で、出た〜!イーストウッド哲学〜!


でもね、見せかけだけの“マッチョ”なんて本当は所詮は薄っぺらいもんなんてごく当たり前のことじゃねーか!!と個人的には思わざるを得ないのだった。


「昔はヤンチャでした」はアホの言うことですよ。

更には、それに気付かぬ者は論外ですが、歳食ってから下らなさが解った、なんてやっぱしアホの言うことなんですよ。


例えば『運び屋』とかでもそうだけど、クリント・イーストウッド、あんた人生後悔しすぎだろ!?もっと楽しく生きようぜ!?と。


その一つの答えが、本作にはちゃんとあったのが良かった。


なんというか、結局本作は、マイク・マイロの救いのあるおとぎ話的な?話である気がします。

まさか、こういうファンタジー系な映画をクリント・イーストウッドが撮るとは思わなんだ。(イーストウッドの監督作品数えるくらいしか観てないけど…)


本作は、イーストウッドが格好いい!とかいう系の映画ではないですね。

上記の通り、「緩やかに流れる小川の様な映画」です。

本作は、ある意味でクリント・イーストウッドの集大成のような気がしてならないですね。


本作は賛否両論らしいですが、個人的にははっきり言って、スゲー良かったです!!大好きなイーストウッド映画の一つになりました。(因みに、未だに個人的暫定1位は『ミリオンダラー・ベイビー』)


そして、日本人映画ファンとしては、やっぱし日本語吹き替え抜きには本作は語れませんね。

クリント・イーストウッド…つまりはマイク役の多田野曜平さんの吹き替えが『運び屋』に引き続いて物凄く良かったです。


今は懐が地味に痛いので字幕版はBlu-rayに持ち越しかな…。


とにかく、これは良い映画です!!オススメ☆