攻撃と防御は一体〜その1 | 増田 章の「身体で考える」〜身体を拓き 心を高める
今回は、イタリアセミナーでリクエストされた「肘受け」などの防御技術について考えてみたい。

イタリアのストッパ先生は、肘受けの有効性を理解していた。
今後、私の防御に関する理論を説明するために考えをまとめたい。今回は、メモをベースにした乱文だが、お許し頂きたい。

フリースタイルカラテプロジェクトは、新しい武道スポーツの創出と同時に武道競技理論の確立を目論んでいる。帰国後も雑務が山積しているが、万難を排して武道スポーツとその理論を完成させたい。

【攻撃と防御は一体~その1】

私が観るところ、フルコンタクトカラテ競技は、試合に勝つことばかりを優先し、防御技術を疎かにしている。「防御技術よりうたれ強さ」と言わんばかりに・・・。

ここで「防御とは何か」を考えてみたい。

私は、「防御」とは打撃技によるダメージを防ぐだけのものではないと考えている。「防御技術」があればこそ、相手への攻撃の機会(チャンス)を窺え、かつ掴むことを可能とするのだ。

例えば、バレーボールの「時間差攻撃」を考えてみる。
時間差攻撃とは、囮の選手がスパイク(アタック・攻撃)すると見せかけて、別の選手が「スパイク(攻撃)」する戦術(連携攻撃)のことだ。

このような攻撃を可能とするのは、「セッター」という、「アタッカー」に正確な「トス」を上げる優秀な「セッター」が必要なのだ。

ということは、その「セッター」にボールを回すための優秀な「レシーブ」と「レシーバー」が必要だということである。

つまり、有効な攻撃を生み出すためには、バレーボールのように防御技術が必要なのだ。

言い換えれば、確固たる防御技術があるからこそ、有効な攻撃を生み出せるということだ。

古典武道の教えには、そのような防御技術の極意に「見切り」を挙げている。

本来、日本武道には、スポーツ以上に人間の能力を最大限に鍛え上げる教育的効果があった。

しかし、現在の頭部打撃無しのフルコンタクトカラテに、そのような効果があるだろうか。

フリースタイルカラテ・拓真道で言うところの「防御」とは、バレーボールでいう相手攻撃をしつかり受け止める「レシーブ」と「トス」をいう。

具体的に言えば、「レシーブ」に当たる技が「受け技」、そして「トス」に当たる技が「転じ技」である。そして、受け技と転じ技の連携を「転じ」という。

また、そのような連携技、すなわち「転じ」を可能とするのがポジショニング(位置取り)を含む「体さばき」なのだ。

これまでのフルコンタクトカラテにおいては、「相手に打たせながら自分も打つ」というような戦い方が多かった。それは、競技ルールにより仕方のない面もある。しかし、バレーボール競技では、攻撃が先に相手に当たった時点で点が入っている。

勿論、ルールの異なるものを一緒にはできないことは解っている。
また、コートを分けず、ボール或はゴールに当たるものがひとつではない、複雑な徒手格闘(いずれ再考します)では、多少の打撃をもらいながら攻撃するというのはやむを得ないかもしれない。

しかし、カラテが武道というのであれば、真剣を扱う剣術から学び、あり方を検討しても良いのではないかと私は考えている。

そして、防御とは何かを研究するべきだと私は考えている。なぜなら、「防御を考えること」がすなわち「攻撃を考えること」であると考えるからである。

その上で、相手攻撃を防御しないということもあるかもしれないが、その次元と相手攻撃をまともにもらっても気にしないような組手や試合を行なうことと同じだとは考えない。

それは、本質的に見れば、当たっても効かないと考えているか、多少ダメージが残っても勝てれば良いというか考えがあるからであろう。

私は、そのような考え方を武道的とは考えない。では、どのような考え方が武道的かについては、続編で述べたい。