記憶に残るゲームpart2 | kantoku's ブログ

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バスケと子供たちを愛する人たちへ

僕は、その子を近くに呼び、こう話し掛けました。

「お母さんが少しなら大丈夫ですと言ってくれたんだ。どうだ、出るか?」


ドクターから、激しいスポーツは今は絶対無理です!とストップを掛けられ諦めていた本人は、急な提案に一瞬驚いたようでしたが、すぐにニコッと笑って、「はい、出れます!」と答えたのです。


今まで必死に頑張ってきたこの子と、出場を承諾してくれたお母さんのために、最後のこの試合は絶対に出してやろうと思いました。


ですが、最終試合に組まれていた相手は今大会最強の相手、以前戦った際も大接戦になったチームです。

この試合はうちにとっても、相手にとっても全国大会決勝に匹敵する試合でした。


そんな試合に彼を出場させることができるだろうか・・・

一瞬不安が頭をよぎりましたが、子供たちを信じて全員にこう話したのです。


僕:「お前たちにとってKは最高のチームメイトだよな!?」

子供たち:「はい、そうです!」

僕:「俺は最後にKをこの大切な試合に出したいと思っているのだが、皆はどう思う?」


その言葉を聞いた子供たちの顔が一瞬でパァーと明るくなり、全員が口々に、「はい、それがいいと思います!」、「はい、それがいいです!」と。


僕は、その子の背中をポンと押して、皆の前に押し出しました。

すると、皆が駆け寄り、肩や背中をポンポンと・・・


僕:「よし決まりだ!但し、出場時間はラスト1分間だけだ。」、「このチームを相手に最後にKを出すなら、その時点で少なくとも15点以上の点差が必要だぞ、できるか?」

子供たち:「はい、できます!」


皆はそう自信満々に答えたのです。

1つの目標のために、全員の心がひとつになった気がしました。


試合開始直前、僕はその子を呼び中心に立たせて皆で円陣を組みました。

140cmに満たない小さな小さなその子の肩に手を置き、「皆、声出すぞ!」と言うと、全員が彼の肩に手を重ねて、彼中心の円陣が出来ました。


そして、キャプテンが大声で「シューティングスターズ!!」

全員が「OHHHH!!!」


パッと全員が散った瞬間、セカンダリーで涙を拭う彼の姿が見えました。

真上の客席から、保護者の皆さんが「行け~1Q、頑張れよ~!」の声援。

子供たちもパンパン手を叩いて「さぁ行け、行け~!!!」と。


そして試合開始。

そこからの2Qが、僕にとって絶対に忘れられないゲームです。


ディフェンスの気迫、リバウンドとルーズボールの反応、シュートは1本も落ちません。今大会絶不調だった選手や下級生も全員が絶好調、指示なんてまったく必要ありませんでした。ただ、仲間を試合に出したい!その全員の思いがコートで爆発した感じでした。


そして、前半終了時点で何と25点もの差を付けて折り返したのです。


後半は火が付いた相手も盛り返し一進一退、4Q残りちょうど1分半の時うちのPGが5ファールで退場、その時の点差は20点、約束通り彼の出番が来たのです。


激しいプレイはできません。ただ全員が何とか彼にシュートを打たせようと何本もパスをします。

僕は「おいおい、普通通りにやれよ~っ!!」


そして試合終了のブザー。

挨拶と共に全員が彼に駆け寄り大泣き。

思わず僕も目頭が熱くなりました。


相手のコーチと握手を交わしたとき「前半の気迫に圧倒されました。やっぱり強いなぁ・・・」と。


僕は答えました。「だって、これは特別な試合ですから。」



2週間後に迫った今年の県大会、そんな先輩たちの思いも受け継いだ戦いが今、始まる。


全員の思いを胸に、いざ!