「『部屋とワイシャツと私』みたいに小さな幸せに定住する人生」は医学的に正しいかもしれん論文出た。 | 研修医ノート

「『部屋とワイシャツと私』みたいに小さな幸せに定住する人生」は医学的に正しいかもしれん論文出た。

出来立てホヤホヤ論文シリーズ!

 

あ、まず論文紹介する前に、この動画↓見てね。

・人生のライフステージで住むべき広さが全然違うので広さを変えられない持ち家は不利

というものです。

 

まあ、お金のことだけ考えたらそりゃ賃貸がいいですね。

 

で、お金持ちの間で流行している常識に納得していただいたところで行きましょう、今週のビックリドッキリメカ論文。

 

今回の論文↓はとても面白いです!

Sci Rep . 2024 Mar 30;14(1):7547.  

この先々月出来立てホヤホヤ論文の趣旨は、「持ち家の人は賃貸に住んでいる人よりも32%死亡率が低い」というエビデンスです。

 

もちろんあなたはこう反論するでしょう:「おい、E.coli! お前、過去ブログ記事↓で言ってたよな:『お金あればあるほど死亡率低い』って! ↑この『持ち家の人が賃貸住みの人より死亡率低い』エビデンスは、単に持ち家の人の方がお金持ってるっつーだけのことちゃうんか?」と。

 

ぐふふー。

 

実は↑この「持ち家の人は賃貸に住んでいる人よりも32%死亡率が低い」というのは社会的ステイタスの影響を取り除いたエビデンスです。なので、お金の有る無しに関わらず賃貸に住んでると死にやすいというエビデンスかもしれない(ただし、後述するようにこのエビデンスは庶民にだけ当てはまるのかもしれないが)。

 

なぬ? 「うわーボクワタシは死にたくないけど、持ち家買うお金もない」って?

 

そんな無茶振り相談はオレにまかせろ!

 

上記のホヤホヤ論文は、「県営住宅や市営住宅などの公的賃貸に住むと、私的賃貸に住むよりも22%死亡率が低下する」というエビデンスも含みます。

 

僕は内科・外科・救急・メンタル・透析でもなんでもやる何でも屋の医者ですが、当然往診もやります。

 

で、たくさんの家に往診に行って感じたことは、「県営住宅や市営住宅の住宅の品質は、少なくとも防音・断熱・室内化学物質汚染の各側面において、私営賃貸住宅よりも著しく優れている」ということ。

 

あまりにもすさまじい違いなので、この違いによりかなり心身へのストレスのかかり方は違うと思います。

 

僕も徳島で初めて賃貸物件借りたのが大東○託という有名不動産屋のアパートだったんですが、↑これらの各側面の品質が著しく悪かったので、即日退去決定しました。

 

県営とか市営でない私営賃貸はよく選んで住まないと、賃貸物件オーナー会社は金儲けのことしか考えてなくて、あなたやあなたの家族が心身の病気になったり死んだりしても別に平気な人たちなのでご注意ください。

 

でさ、↑このエビデンスだけじゃつまらんやんか。

 

なので、さらに行きましょう、↑このホヤホヤ論文に含まれるおもしろエビデンスの数々を。

 

・まずこの研究では所得の多寡はほとんど一切死亡率に影響しなかった。お金が大事じゃないということじゃなくて、この研究の低所得・中所得・高所得の定義が年収200万未満、200万から400万、400万以上という定義だからでしょう。なので、↑この研究は庶民を対象とした研究ということになります。↓過去ブログ記事に書いた通り、男性に関しては「お金あればあるほど死亡率下がる」という明らかなエビデンスあります(女性に関してはお金が多すぎても少なすぎても死亡率が少し上がる)。

 
・中卒以下と高校以上の学歴とでは死亡率はほとんど同じ。もちろん↑この過去ブログ記事に論文引用した通り、「男性は高学歴であればあるほど要介護になりにくい」という明らかなエビデンスありますので、低学歴により健康被害が出るのはある程度以上の所得のある人だけかな?
 
・独居か家族と住んでいるかも死亡率には無関係。これも独居により健康被害出るのはある程度以上所得のある人だけかな?
 
・退職せずに働き続けると死亡率14%低下する。お金持ちの間ではFIREという早期退職がもてはやされてますが、この常識も健康面から見ると危ういということですね。
 
・職種は専門性の高い仕事・管理職・事務職・サービス業・技術職・農業・その他で、サービス業が11%死亡率上昇する以外はほとんど死亡率の差がない。
 
・やせすぎの人(BMI 18.5未満)は標準体重の人(BMI 18.5-24.9)よりも54%死亡率高く、超肥満の人(BMI 30以上)は標準体重の人よりも9%死亡率高い。面白いことにやや肥満の人(BMI 25-25.9)は標準体重の人よりも11%死亡率が低い。なんか最近よく「少しぽっちゃりの方が健康」というは本当っぽい。
 
・社会参加(スポーツ参加か趣味参加)のどちらかをやっていると死亡率15%低下、どちらもやっていると死亡率24%低下。まあこれは想像しやすいエビデンスだから面白くないね。
 
・人口密度が高い地域に住んでいるほど死亡率が低くなり、田舎在住の人よりも都会在住の人の方が11%死亡率が低い。田舎の方が水も空気も食べ物も良いはずだが、この現象の理由は↓過去ブログ記事に書きました。
 
・同じ場所に長く住めば住むほど死亡率が低く、数年以下しか住み続けてない人は50年以上住み続けている人よりも45%死亡率が高い。っつーことはさ、「ライフステージに合わせて住居の広さを変えて行く」というお金持ちの間で流行している「頭のいい住居選びの方法」は結構頭悪いということになってしまう。

 

男性が外で仕事して奥さんが部屋でワイシャツにアイロンかけ続ける小さな幸せに定住することは、お金持ちから見たら頭悪く見えるかもしれないが、医学的には正しいかもしれないという論文でした。