お酒は大腸ガンや肝障害のリスク因子であるという医学常識は大ウソです | 研修医ノート

お酒は大腸ガンや肝障害のリスク因子であるという医学常識は大ウソです

昨日うちのクリニックに数週間ぶりに来た鉄工会社の社長さんが「前回リハビリのついでに湿布と痛み止めもらおうとしただけなのに、診察室で咳を一回しただけでE.coli先生に『それ、インフルやろ?』って言われて『いや、元気やし熱もないし風邪っぽい症状も全然ないし。』って思ったけど、検査してみたらインフルだった。その30分後からインフルの症状始まった。」とリハビリスタッフに言ってたらしい。

 

「なんでインフルと分かったのか?」とリハビリスタッフに尋ねられたが、全然覚えてない。僕の特技は未知の問題・未経験の問題に行き当たりばったりで突拍子も無い解決策を思いつくことです。1999年7月にサラリーマンしてて医学部再受験を思い立ち、8月はうつ病悪化で寝込んで出社できなくなり9月から勉強始めて2000年東大理3受験した時も受験科目範囲が現役時とだいぶ違っていて浦島太郎状態でしたが、この「未知・未経験の問題に行き当たりばったりで突拍子も無い解決策を思いつく」特技で合格しました。

 

E.coliは目の前の相手に対して突拍子も無い解決策を思いついて解決するが、解決したら速攻でそのことは忘れる、、、

、、、の自分の中の脳内イメージ↑。

 

、、、に対する別カメラから捉えた客観視イメージ↓。

 

今から15年くらい前に超能力的観察眼を持った著者による↓この血液型解説本シリーズが国内大ヒットして、

これが爆売れした際にテレビや雑誌やニュースに登場した医学の専門家たちは「血液型本は非科学的。占い程度にとどめておけ。」と言ってましたが、当時から僕は「この本が非科学的なんじゃなくて血液型の違いが人体に医学的違いを起こさないという常識の方が非科学的ちゃうん?」と言ってました↓。

 
ってな感じの医療界の破戒僧であるワタクシE.coliが、今回もまた道化心を発揮して、医者であれば誰もが信じている超絶確固たる医学常識をこのブログ記事でぶった切って差し上げましょう。真面目で勉強家の医学常識マン医者のアンタはプッと笑ってバカにしてくれ。
 
今回ぶった切る医学常識はこれ↓。

「少量の飲酒は心血管系に対する保護効果があるので死亡率は下がるが、発がん率は少量の飲酒でも上がる」という、真面目で勉強家の医学常識マン医者なら誰でも知っている現在の医学常識です。

 

実は↑これ、大ウソです。

 

まずは去年出たばかりの↓この論文を見てくれ。

J Clin Oncol . 2023 Aug 1;41(22):3816-3825.

この論文のミソとなる表はこちら↓。

この論文の趣旨は「中等度から高度の飲酒習慣があると、用量依存的に大腸ガン発症リスクが増加する」というものです。

 

まあ、↑この結論は当たり前だよね。「そんなの常識! たったたらりら!」ってアンタも思ってるだろ?

 

でも、↑この論文の著者は少量の飲酒については発がんリスクが上がるとも下がるとも言ってなくて、ハッキリファイブじゃなくてモゴモゴフォー↓になってます。

 

で、論文のミソとなる表↑をよく見てみると、年齢調整前には少量飲酒群は飲酒しない群よりも大腸ガン発症率が7%低く、年齢調整後には少量飲酒群は飲酒しない群よりも大腸ガン発症率が4%高くなってます。

 

これ見てこの論文の著者は「少量飲酒がいいのか悪いのか、ワケ分からん!」となってモゴモゴフォーになってしまったのでしょう。

 

一般的に発がんリスクは年齢によって劇的に違うので発がんリスク題材の疫学研究では年齢調整した結果の方が正しいことがほとんどです。なので、その医学常識に従うと、「少量飲酒群は飲酒しない群よりも大腸ガン発症率が4%高い。つまり飲酒は少量でも発がんリスク増加するという医学常識は正しい!」という結論になります。

 

でも、それ、間違ってます。

正しい医学常識は薬になりますが、間違った医学常識は猛毒です。

 

↑この論文について年齢調整しない発がん率のデータの方が正しいとする根拠はこれ↓。

BMC Public Health . 2022 Oct 12;22(1):1896.

この論文の趣旨は「1990年から2019年までの間に全世界的傾向として50歳未満の発ガン率が79.1%も増加している」ということです。

↑この論文のミソとなるグラフがこちら↓。

このグラフによると、過去29年間で50歳未満の大腸ガン発症率は36.9%増加しています。

 

これに対して50歳以上の高齢者の発ガン率は最近は増加してないです。

 

この「若者だけ発ガン率爆上がりして老人が全然発ガン率上がってない奇妙な現象」の医学的理由はまだ世界の誰も言ってませんが、その理由を知りたければ↓この過去ブログ記事のジエチルスチルベストロールの奇妙な発ガン性の解説を読んでね。

 

さて、過去29年間で大腸ガン発症率が36.9%増加しているということは今の36.2歳の年齢の人は、今の38.2歳の年齢の人の2年前の状態よりも2.54%大腸ガン発症リスクが高いことになります。

 

で、最初の論文の↓この表をもう一度見てくれ。

少量飲酒群の平均年齢は36.2歳、飲酒しない群の平均年齢は38.2歳。少量飲酒群の方が2歳若いので、年齢調整すると大腸ガン発症率が11%上方修正されて「リスク7%減少」ではなく「リスク4%増加」となります。

 

しかし、この年齢調整の手法は「ある特定の暦時点での平均年齢38.2歳と平均年齢36.2歳の発ガン率」を根拠に計算しているので不確かです。

 

なぜなら、あなたはすでにご存知の通り、「今の平均年齢38.2歳の人と平均年齢36.2歳の人とでは暦の同時期ではなく同年齢の時期で比べると、若い後者の方が体内に秘められた発ガン率のリスクが高いから。」です。

 

その理由がよく分からん人は↓この過去ブログの解説をもう一度よく読んでくれ。

 
上記の論文の通り、29年間で50歳未満の大腸ガン発症率は36.9%増加していますので、現在の若者は元々の状態として38.2歳の人の2年前の状態と比べて36.2歳の人の現在の状態は2.54%大腸ガン発症率が高いです。
 
これを考慮に入れないといけません。
 
さて、↑この研究では少量飲酒群と飲酒しない群の総数はそれぞれ200万人くらいです。
 
平均年齢30代後半くらいの人は10万人当たり年間18人くらい大腸ガン発症しますので、年齢調整前の粗データ(少量飲酒群より飲酒しない群の大腸ガン発症リスクが7%高い)より、1年間の観察とすると200万人のうち大腸ガン発症するのは、少量飲酒群と飲酒しない群でそれぞれ360人、385人くらいとなります。
 
さて、ここまで読んだあなたはすでに「現在の若者は元々の状態として38.2歳の人の2年前の状態と比べて36.2歳の人の現在の状態は2.54%大腸ガン発症率が高い」という事実を知っています。
 
なので、「360人、385人という大腸癌発症率は現時点での年齢差2歳の高い方の発ガン率を11%割り引かないと比較するのに不公平」という年齢調整の現在の医学常識での手法に対して「360人、385人という大腸癌発症率は2年という世代間格差により世代が2年若い方の発ガン率を2.54%割り引かないと比較するのに不公平」という「このブログにここまで書いてきた年齢調整の新手法」を組み込まないと正確ではないです。
 
以上の新手法の年齢調整で再調整すると、少量飲酒群と飲酒しない群の200万人当たりの大腸癌発症人数はそれぞれ350人、346人となり、「少量飲酒群の方が飲酒しない群よりも1.5%大腸癌発症リスクが高い」という結果になります。
 
「なんだ、やっぱり少量飲酒群の方が大腸癌発症リスクが高いのかよ!」とあなたは思うかもしれませんが、
この表を見るとわかるとおり、↑母数500万人以上の大規模研究でリスク比の95%信頼区間の区間長0.13前後となってますので、リスク比1.5%の差は統計学的に有意とならず、「少量飲酒群と飲酒しない群は大腸癌リスク比に差がない」ということになります。
 
母数500万人規模の大規模研究で「リスク比に差が無い」と証明されたのであれば、もうそれはほとんどリスクとならないことを示しています。
 
つまり、「少量飲酒は大腸癌リスクを上昇させる」という現在の医学常識は間違いです。
 

このブログに紹介したうちのクリニックの「大学病院でも原因わからず治療できない肝臓・大腸が弱いグッタリ病の看護師さん」、↑このブログに書いた以外にも実はもうかれこれ10年くらい、僕が自作した梅酒(安くないちゃんとした材料で作ったもの)を少量ずつ飲んでもらってます。

 

真面目で勉強家の医学常識マン医者のあなたは、「肝障害プラス大腸癌リスク高い人に飲酒させるなんて何考えとんじゃ! アルコールは肝臓に悪いし、大腸癌リスク上げるのが医学常識!」と吠えるでしょう。

 

でもさ、そんなあなたは彼女の体調不良治せますか?

 

僕は大学病院もサジ投げた彼女の体調不良を劇的に改善させて肝機能も改善させて大腸ポリープの数と大きさもどんどん減らしてますよ。

 

僕の特技は「未知の問題・未経験の問題に行き当たりばったりで突拍子も無い解決策を思いつくこと」です。

 

真面目で勉強家の医学常識マンのあなたは、あなたが信じている大ウソの医学常識が本当に目の前の患者の利益になっているかどうか、もう一度考えてみた方がいいですよ。

 
(20240211追記)
あー、冒頭の鉄鋼会社の社長さんが診察室で一回咳しただけでインフルだと分かった理由を思い出しました。咳の音です。インフルの咳って、アレルギー性の咳とかムセの咳とか刺激物に刺激された時の咳と違って、独特の音がしますよね。それで分かりました。