今日は、小田和正さんのお誕生日なんです。
今回の個人的アルバム・レビューは、1990年に発表された、小田和正さんのソロ・アルバム第3弾「Far East Café」を。
オリコン最高1位を記録し、32万枚を売り上げました。
このアルバムは、全体の完成度が、とても高いアルバムだと思います。
先行シングル「Little Tokyo/あの人に会える」・「恋は大騒ぎ」を収録。
前作の「BETWEEN THE WORD&THE HEART」以来、2年2ヶ月振りとなったアルバムです。
オフコース解散後、初のオリジナル・アルバムでした。
1989年にオフコースが解散し、小田和正さんは、ソロ活動に専念し、個人レーベル「Little Tokyo」を設立。
それまでとは違った、ソロ・アーティストとしてスタートをして行くという決意を示しました。
このアルバムには、大ブレイク前夜の雰囲気が漂っています。
小田和正さんのソロの代表曲と言って良い「恋は大騒ぎ」が収録されていて、そこからも、オフコース時代とは異なる、ポップな曲を展開したアルバムだということが伺えます。
その為か、今までのオフコースファンからは賛否両論を呼んだ作品でした。
アルバムタイトルは、ソロになってから設立した個人事務所「ファー・イースト・クラブ」に由来します。
「ファー・イースト」とは極東の事。
日本から世界に音楽を発信していきたいという、小田和正さんの思いが込められています。
小田和正さん自身のアンテナショップの名前にもなっていて、ツアーバンドの名前も「FAR EAST CLUB BAND」という名前です。
それでは、個人的な楽曲解説を。
1曲目の「勝手に寂しくならないで」は、今作のオープニング曲。
ラテン調の陽気な楽曲。
オフコース解散後、最初のアルバムのオープニングは、今までとの違いを強調するような、ポップな曲を持って来ました。
イントロのピアノが高揚感を誘います。
ピアノとギターのカッティングが、サウンドを牽引しています。
後半では、パーカッションが前面に出て来ます。
彼女に束縛されている男を描いた歌詞で、彼女は会えない時に勝手に想像を膨らませているよう。
歌い出しから「約束させないで そんなに縛らないで」とインパクトは抜群。
「君といれば楽しいけれど でもそれがすべてじゃない 別に君が思うような そんな意味じゃなくて」というフレーズが印象的です。
男の本心が現れているようですが、愛想を尽かした訳ではないみたいです。
2曲目の「春風に乱れて」は、ベスト・アルバム「Oh! Yeah!」にも収録されたポップナンバー。
1994年には、三菱自動車の「ミラージュ」のCMソングに起用されました。
サウンドは、ギターが前面に出ています。
キーボードとギターによるスリリングなイントロから曲の世界観に引き込まれます。
春風が吹き荒れているようなイメージです。
この曲の特徴は、徹底された、分厚いコーラス・ワーク。
小田和正さん自身に加えて、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さん、安部恭弘さん、木戸やすひろさん、比山清さんが参加。
佐藤竹善さんが一番目立っている感じです。
小田和正さんのボーカルとの絡みが凄いです。
コーラス・ワークの上手さは、オフコース時代から、何ら変わっていません。
歌詞は、片想いしている男の心を描いたもの。
しかも、お相手はミステリアスな女性です。
「いつまでたっても 君がよく分からない」という歌い出しから男の心情がよく現れています。
「きっと君には 好きな人がいて それでも今は 君の心を叩くだけ」というサビのフレーズが何とも切ないです。
サウンド、歌詞、コーラスワーク、どれを取っても高いレベルにある名曲です。
何故、この曲をシングルカットにしなかったのでしょうか?
3曲目は「16号を下って」は、小田和正さんの地元である横浜を舞台にしたバラードナンバー。
バラードなんですが、暗くはならずに、ポップな要素も入っています。
サウンドは、ピアノがメイン。
国道16号線は、神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県を通っている環状線の事。
16号を南へ下って海を目指すという内容の歌詞。
「砂の上を走り 海の風にうたう それぞれの 愛するひとのために」という歌詞が印象的です。
ドライブ中に聴くのが最適だと思います。
4曲目の「君が戻って来るなんて」は、ここまでの流れを落ち着けるようなスローバラード。
別れた彼女と再会した男を描いています。
何とも言えない気まずさが伝わって来るような楽曲。
「もう遅すぎる きっともう遅すぎる」というフレーズが切なく響きます。
サウンドは、キーボードがメインですが、間奏ではサックスが登場します。
この曲のような、しっとりと聴かせるバラードは、もはや小田和正さんの王道ですね。
ソロアルバム前2作は、AOR色の強い作品でしたが、その作風を継いだ感じです。
5曲目の「Far East Café」は、アルバムのタイトル曲。
上品な雰囲気溢れるバラードナンバー。
こちらもサックスが効果的に使われています。
ラブソングなんですが、前述したタイトルへの思いが込められた歌詞がちりばめられています。
「この広い都会の 片すみで見つけて いつでもこゝにいるから」というフレーズが印象的です。
小田さん曰く「Far East Café」は「僕の心の中」にあるのだと言います、
言い換えれば、恋人や、自らにとっての安らげる場所という事なのでしょうか?
6曲目の「恋は大騒ぎ」は先行シングル曲。
第一生命の「パスポート21」のCMソングに起用されました。
CMには小田和正さん自身が出演し、企画や演出も行なったと言います。
コーラスにはEPOさんが参加。
売れ線全開のポップナンバーです。
ソロとしての小田和正さんの立ち位置を確立した楽曲言って良いと思います。
モータウン・サウンドの軽快な楽曲です。
曲、歌詞を含めて、今までの小田和正さんとの違いを前面に打ち出しているような楽曲。
小田さん曰く 「下世話にしよう。」と意識して作ったと言います。
「下世話な方が意図がよく伝わる」という理由からだそうです。
この曲以降は「歌の中では演じても何をしてもOKになった」らしく、小田和正さんにとって大きな転機になった楽曲のようです。
7曲目の「Little Tokyo」は、先行シングル曲。小田和正さん自身が出演した「ネスカフェ 新・ゴールドブレンド」のCMソングに起用されました。
後に、ベストアルバム「Oh! Yeah!」にも収録。
タイトルは個人レーベルと同名です。
優しい雰囲気のラブソングで、サウンドは、ギターが前面に出ています。
「明日吹く風に 流されるとしても 今はたゞ この腕の中の君と 眼の前を 過ぎてゆく やわらかな時の流れを 信じて生きていたい」というサビのフレーズが印象的な名曲です。
8曲目の「time can wait」は、アップテンポのポップ・ロックナンバー。
ギターが終始前面に出ている楽曲です。
ブラス・セクションを用いており、そちらも、サウンドを彩っています。
歌詞は、夢を追いかける人への応援歌になっています。
「走り続けていても 歩いていても 空を見上げてため息つくも それぞれの人生」というフレーズが印象的です。
弾けたようなテンションの高い曲になっており、聴いていると元気が出て来ます。
この曲も、もっと人気が出ていても良いと思う曲の一つです。
9曲目の「good times & bad times」は、力強いバラードナンバー。
小田和正さん自身も出演した「ネスカフェ 新・ゴールドブレンド」のCMソングに起用されました。
先述した「Little Tokyo」よりも先の起用だった記憶があります。
テレビに殆ど出演することが無かった、小田和正さんが、CMに出演した為、大きな反響があった楽曲です。
後にベストアルバム「Oh!Yeah!」に収録された。サウンドは、打ち込みがメインです。
ラストには、小田和正さんと外人のコーラスとの掛け合いが展開されており、それが聴きどころです。
このアルバムに収録されたバージョンでは、次の曲とそのまま繋がっています。
「この広い世界に ひとりだけの君をいつでも 捜している」というフレーズが印象的です。
10曲目の「あの人に会える」は先行シングル「Little Tokyo」のC/W曲。
タイトルの「あの人」とは、伝説のプロゴルファーとして知られる、ジーン・サラゼンの事らしいです。
「ジーン・サラゼン・ジュンクラシック」という彼の名前を冠したゴルフの大会が、毎年栃木県の小川町(今の那珂川町)で開催されていたらしく、それにちなんだ楽曲だそうです。
その大会の中継のテーマソングに提供された楽曲だと言います。
サブタイトルは「 〜a tune for sarazen's jun crassics〜」
小田和正さんは、ゴルフ好きなので、その縁もあったのでしょう。
「あの人に会える だからこゝに来る あの頃のまゝの この場所へ」というフレーズが印象的です。
曲は、しっとりと聴かせるバラード。
間奏のハーモニカが特徴的です。
小田和正さんのジーン・サラゼンへの想いが伝わって来るような名曲です。
オフコース解散後初のアルバムという事からか、全編通して、ポップな曲が多い印象を受けました。
その為、とても聴きやすいアルバムです。
オフコース在籍時代にリリースされた、ソロアルバム2作は、AOR色の濃い作品でしたが、今作は少し薄れている感じを受けました。
このアルバムのリリースの翌年には、シングル「ラブ・ストーリーは突然に」が、記録的な大ヒットを飛ばし、国民的な歌手となっていくのですが、このアルバムからは、大ブレイク前夜と言える勢いが感じられます。
このアルバムの収録曲はYouTubeでは、プレミアム会員のみの視聴になってますので、音源は添付しておりません。
ご了承くださいませ。
収録曲
1.勝手に寂しくならないで
2.春風に乱れて
3.16号を下って
4.君が戻ってくるなんて
5.Far East Café
6.恋は大騒ぎ
7.Little Tokyo
8.time can wait
9.good times & bad times
10.あの人に会える
〜a tune for sarazen's jun crassics〜