今回は昨日の続きとなります。良かったらチェックしてみて下さい。
https://ameblo.jp/masatolevel3/entry-12838926325.html
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検察の取り調べ さっきまではマスコミや検察側からのものでしたが、次にリクルート・江副側の視点や検察に対して批判的な田原総一朗氏の著書を中心に紹介します。状況を振り返りますと、株式の譲渡だけでは立件しにくいものでした。それで、他の容疑で固めて立件しましたが、その捜査の仕方がエグかったようです。
逮捕前の取り調べでは女性問題について聞かれたようです。検察は
「まずは週刊誌に書かれていることを聞いていく」
それを根掘り葉掘り聞くようです。当時は新聞・週刊誌・テレビを見ていたようで、主婦の井戸端会議で出てくるような情報ですが、否認・黙秘でちょっとでも反抗的な態度を取ったら、株譲渡に賄賂の認識があったという内容の調書に、
「ペンをとれ、署名しろと」
言われました。それで断り続けると、
「検察官に対してなんたる態度だ、検察官をバカにするのもいい加減にしろ、前の態度はあまりに自分本位で傲慢だ」
「実に不愉快だ、これまで君に好意を持っていたが憎しみに変わった」
「なぜ素直に罪を認め調書に署名しないんだ」
と怒ったようです。それで取り調べ開始から55日目で逮捕されました。江副氏はマスコミへの見せしめのようにさらされたようです。逮捕後は検事の態度は一変して厳しくなりました。窓ガラスが割れるような大声を浴びせられても、江副は便宜供与を否定しました。すると検事はある時、
「お前は申し訳ないことをしたと国民に謝罪すべきなのに、何たる傲慢な態度だ」
「そんな態度をとられたのはお前がはじめてだ、特捜をなめるな、特捜がどんなに恐ろしい所かお前はまだ分かってない」
それで、検事が机を持ち上げて、積み上げられた書類が江副の側に落ちて、
「立て、横を向け、前を向け、左を向け」
「壁にもっとよれ、もっと前だ」
鼻と口が壁に触れるぐらいまで追い詰められて、そこで目をつぶると、
「目をつぶるな、馬鹿野郎、俺を馬鹿にするな」
「俺を馬鹿にすることは国民を馬鹿にすることだ」
これを大声で言われて、焦点距離が合わない状態で目を開け続けると壁が黄色く見えてきて、目が痛くて瞳孔が縮んだせいか、黄色いリングが見えて涙が出たらしいです。江副曰く、4日連続で午前・午後・夜と立たされたようです。このことを公判時に証言すると、検事側は
「立たせたことはない」
さらに当時のリクルート社長の逮捕もチラつかされました、この頃、リクルートはバブルがはじけて経営危機状態でした。不動産関連でとんでもない負債を抱え込んでいました。そこに社長が逮捕されたら、ジエンド。それで調書にサインしてようやく釈放。と思ったら再逮捕。それが何回か繰り返されます。早期保釈か長期勾留を選べと言って調書にサインを迫ったり、検事が椅子を横から蹴って江副を転げさせて土下座させたり。それらは、江副・被害者側の言い分なので絶対あってるとは言い切れませんが。検事はこう言ってたようです。
「新聞が書くことは世論、新聞が書いているのに立件しないと特捜の権威が失墜してしまう」
それで検察がストーリーを書いて、それにあてはめて調書をつくってサインさせて認めさせる、感じのようでした。
リクルートの言い分 これらもあって結構無理くりな部分があって、例えば進学情報誌問題。問題が起きないように文部省に根回ししてたようですが、江副側は
「専修学校と無認可校についてほとんど差異がなくて、そもそも自分が在籍している学校の立ち位置も知らないです」
「この問題が全国に波及したって言ってますが特になってないですよ」
もう一つ分かりやすいのがNTT、事業を始めやすいように便宜を図ってもらってました。まずNTTは民営化されているとは言ったものの、公的企業な位置づけで、それが問題になりました。
「NTTに対して他の顧客より優先してくれと依頼したことはないです」
技術的に援助を受けてたのというのも、
「他の企業と保守契約を結んでたのでNTT側の技術はいりませんでした」
スパコン購入時に便宜を図ってもらったのも、購入者であるリクルートが賄賂を送るとは何なんでしょうか。リクルートは最初富士通のスパコンを購入していました。ここでNTTが
「お願いします。うちを通して買ってください」
日米貿易摩擦問題でNTTは当時アメリカから製品を調達する協定を結んでいました。それにもかかわらず調達先が主に電電ファミリーで非難されてました。それでリクルートは
「13億円とそんなに高くないし、有名な会社でデザインもいいし、理系採用に良い方に働きそうだし購入しよう」
問題として、国会の証人喚問の時に、そのままNTTはパイプ役だと問題だと思い、こう証言しました。
「単なる素通しではなくNTTにバックアップを受けるつもりでした」
それを検察が攻める口実に使いました。証人喚問で嘘の発言は偽証罪にあたりますが、それも覚悟の上だったそうです。
こんな感じで積み重なってできた検察の調書が裁判の証拠として扱われました。特捜部はこの事件で3800人を聴取、80カ所を捜索して9000点の証拠品を押収。260日の操作を行い、携わった検事52人、事務官は159人となり、戦後最大の企業犯罪として扱いました。
江副自身は当初ここまで大きくなるとは思っおらず、立件されるとも思ってませんでした。しかし、消費税問題、急激なインフレ、斬新な手法、衝撃映像が重なり与論の注目となり、野党やマスコミもそれに乗っかりました。この与論の動きに対して検察も動かないとメンツがつぶれるし、真実なんてどうでもいいという感じでした。
89年12月15日から始まった裁判は開廷数322回で判決は2003年の3月4日です。検察・弁護士・裁判長が何度も入れ替わりました。注目を浴びていたのもあり当初は傍聴席が埋まっていましたが、次第に空席が目立つようになりました。それで出た判決が以下のようなものです。
「問題となった行為で非難されるべきだが、情状酌量の余地があるとされた。さらに初回的活動や株式の譲渡をして経済活動から身を引いている。さらに、マスコミに大々的かつ批判的に取り上げられて、社会的にも厳しい非難にさらされ、相応の社会的制裁を受けていた。様々な分野の多くの人々が被告人の人格や識見、業績を高く評価して被告人に対する寛大な処分を望む旨の証言をして、同趣旨の上申書を提出しているところや、関係者に対して迷惑をかけた事への悔悟の念と反省の態度を示している」
つまり、行為は問題だったが十分反省しており、すでに制裁は受けている。この裁判の後、江副に迫ってくるテレビ局の車はなく、夕方の1面に記事となりますが扱いは小さかったようです。
最後に 裁判終了して1年後に江副が事件を担当した主任検事とばったり会ったようです。検事は本音をフランクに話してくれて気持ちが晴れたようです。マスコミはここまで事件を焚きつけたか、特に朝日新聞は異常なまでの執念でした。マスコミは第4の権力とまで言われ、政権が倒れるぞと息巻いてていました。また、リクルートの広告事業で結構やられてたのがマスコミの広告でした。それを潰すためにここまで報道した、というのも1節です。