支配者の高笑い…エドワード・スノーデンかく語りきNO2 | ヘミシンクピンポンパン

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ヘミシンクと幽体離脱体験記

 

おそらく強い嵐の中にいるのに違いない。洪水のような大量の雨が降り注ぎ、デッキとハルの接合部分から浸水しているのだ。やがてこの場に慣れ落ち着いてくると、船は全く揺れてなどいないことに気づいた。揺れているのは私だった。私の心の動揺だった。するとこれは嵐などではなく、単なる雨なのか? そんなことを考えていると声が聞こえてきた。

 

声「漏れているのは雨じゃない」

「情報さ」

(続く)

 

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《エドワード・スノーデンかく語りき…支配者の高笑いNO2》

声の主は左側に座っているヤッケの人物だった。彼はフードを下ろして《雨漏りは情報なんだ》とそんなことを呟くように喋った。そこにいたのはスノーデンだった。そうか、そういう事か。

 

これは漏れる情報を収集している船か?私は何とはなく合点がいったとばかり一人で勝手に頷いていたが、それはあるいは反対でむしろ私の情報が漏れているという意味だったのかも知れない。なぜ情報漏洩が雨漏りのヨットだったのか面白いヴィジョンだとは思ったが、今日になって暴露の露は雨の路と書くことに気づき、それが情報の路を指しているのだろうと気づいた。

 

声が聞こえてきた。それは知らない誰かだった。

声「妙な見方だが……」

「まぁ、許してやるか」

 

人に対して横柄な態度をとることに慣れた喋り方で、そんなことを喋ったのはスノーデンの隣りに座っている黒服の男だった。今も相変わらず、この男をよく見ようとすればするほど、私にはますます見えなくなるのだが、黒い上下のスーツに黒ネクタイだった。

 

顔がどうしてもよく見えないのだが、この男は私の考えたことや、思っていることに対して皮肉っぽく笑っているような感じだった。男はスノーデンに話しかけ、スノーデンの同意を誘っているようにみえ、私は不愉快で思わずこんなことを言ってしまった。

 

私「何だ、こいつは」

 

私は自分でも意外なほど強く自分の不快を言葉にしてしまい、このときの私は口をとんがらして、黒服の男を睨みつけていたのかもしれない。

ス「まぁ、気にしないで」

スノーデンがそう言って私をなだめにかかったところで、またこの黒服が割り込んできた。

 

黒「ところで……」

…もったいぶるようにここで男は間を開けると「何のようだ」とぶっきらぼうに私にふっかけてきた。そう絡まれると私は急にスゴスゴと大人しくなり「インタビューなんですが」と畏まってしまった。

 

何の用かと聞かれても困る。私は情報には興味があるが、それがコンピューターを介してのものだと私にはもうわけが分からなくなる。彼らとまともな話をする基礎知識が私にはないのだ。

 

スノーデンの公開した情報と、それらがもたらした嵐のような衝撃はもう世界中に知られており、それは凄い破壊力と影響力を持って世界を地震と津波のように襲い、揺るがしたはずなのだ……が、しかし何一つ変わってはいないのではないか…誰しもそんなことを考え、彼は今ではすっかり過去の人になっている。

 

彼の成し遂げたことは尋常ではなかったのだ。これだけのことをやった人間はこれまで誰もいなかったというのに、世界中が沈黙し無視を決め込んでいるようにみえる。私はそこを聞いてみたいと思った。人々は何をしているのだろう。情報はまだこれだけでは不足なのだろうか。

 

私ができるのは非物質界を通じてのやり取りであり、スノーデンと世界の集合意識がどのように結ばれたのか、それとも繋がりは弱くこれは失敗だったのだろうか。どこかでほくそ笑んでいる連中がいるのだ。支配者の高笑いが聞こえてくるような気さえする。彼らの体制は相変わらず盤石で、びくともしなかったのだろうか。そんなことを訊いてみたかった。

 

私「スノーデンさん」

「トランプが大統領になって困ったことになっていませんか」

ス「誰が大統領になっても同じだ」

「オバマには期待してしまったが、だめだったし」

「トランプはたぶんそれ以上にダメだ」

私「あなたにもっと期待している人々がいる」

「エリア51の情報はなかったのですか」

 

スノーデンはここで露骨にシラけたと言った顔をした…というよりヴィジョン全体がフリーズしてしまった。天井から、壁から、ハッチの隙間から、滴り落ちてくる雨水も、つまりスノーデンの言う情報も止まり、水滴は宙に浮いたまま動きを止めていた。その中で黒服の男だけがニタニタしながら私を見つめている。そしてヴィジョンは変わった。

 

霧の中から馬車があらわれた。白い霧でまわりは何も見えず、馬車だけがゆっくりと走っていた。座席には二人の男が座っていたが、見通しの悪い視界を探るように用心深くと言った感じではなく、二人はよく話し込んで楽しそうに笑いながら運転していた。左に座っているのはスノーデンでその隣、右側にはやはりあの黒服の男がいた。誰なんだ?この男は。

(続く)

マサト