誰「新種とか」
「ミュータントみたいな」
「存在だね」
「地球でつくられたのだよ」
「時間が始まった頃のことだ」
「君たちの言い方では」
「大昔ということになる」
(続く)
《夏至の日のワーク…生命の樹NO41》
私「新種にミュータント…」
「それは変な人達ではないのですか?」
誰「変とはどういう意味なんだね」
私「怪物くんみたいな…」
誰「少なくとも」
「今ではまったく普通だね」
私「最初はそうではなかったのですね」
誰「今の基準からみると」
「そのとおり」
「その最初の頃は」
「化物だったかもしれない」
「彼らは空を飛んだし」
「変身もできたし」
「しかし共食いを始め」
「その上に種の保存ができず」
「というより種を確立できなかった」
「チグハグな化物みたいなものが」
「次から次へと生まれては」
「消えていった……」
いったい私は何を訊いているのだろう。この話は過去に何度か聞いている。今また同じことを、もう一人の私はしつこく訊いているのだ。
私「ここはどこなんですか」
誰「それが誕生したところだよ」
私「果てしなく緑が広がって」
「のどかで平和でいいところに」
「見えますが」
誰「今はそうだ」
「彼らはここで再生され」
「蘇って地球に帰っていく…」
もう一人の私と、誰だかわからない存在との会話は、ここで唐突に終わってしまった。この存在は橋の上で叫んでいた、あの奇妙な人なのだろうと思った。地球に帰っていく…ということはこの緑野が広がる大地は地球ではないのだ。
そうだからこそ、もう一人の私は《ここに宇宙人はいますか》などと妙な質問をしていたのだ。場違いなことを訊くものだと私は思っていたが、そうではなかったのだ。すると私の左側から《そうだよ》という、怒鳴り散らすような声が聞こえてきた。
驚いてその声の方を見たが、そこには人はいなかった。しかしよく見ると遠くの方に小屋が立っていることに気づいた。この緑野には川があり、そこには橋もかかっていた。ここには人が住んでいるのだろうと漠然とそんなことを思った。
幽体離脱は今にも終わろうとしていたが、周囲の光景が崩壊することはなかった。何故かこの世界は安定していた。小屋は目の前にあった。歩いたわけではなかった。小屋の壁にはクリムトの生命の樹が描かれていた。それは落書きの類ではなく、れっきとした作品だった。
しかしクリムトの作品そのままなのか、ただ似ているだけのレプリカなのか、私にはわからなかった。小屋の扉は開かれていた。中に入ることにした。内部は暗くなにもないように思えたが、奥の方に何かがいた。机がありその前に人が座り、うつ伏せになっていた。
背中しか見えなかった。死んでいるのだろうかと思った。近づいてみるとそれは見覚えのある人物だという、妙な感触を得た。私の知り合いなのか、古い友人なのか、それとも宇宙人なのか……出し抜けにこれは私だということに気づいた。何故こんなところにいるのだろうと思う間もなかった。次の瞬間に私は自分の中に戻っていた。
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
マサト