第27回プチョン国際映画祭に参加してきました | Just for a Day: 小林真里ブログ

Just for a Day: 小林真里ブログ

映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

韓国から帰国しました。

 

6月上旬に監督作『RAMEN FEVER』が上映された

ソウル国際環境映画祭から帰国し、

2週間でまた韓国に舞い戻ったわけですが、

今回はアジア最大のジャンル映画の祭典

「第27回プチョン国際ファンタスティック映画祭」

に参加してきました。

 

 

プチョンに行くのは2019年以来、実に4年ぶりのことですが、

まず街が大きく変わっていて、驚きました。

 

映画祭のメイン会場である、

プチョン・シティホール(市庁)の前に

巨大なコンサートホールが造られ、

高級マンションのハイタワーも立ち並び、

少し離れた場所にもアートホールや漫画美術館ができていました。

たった数年でこんな変貌を見せるとは。

 

映画祭では、30本近いジャンル映画を鑑賞しましたが、

一番の収穫はフォーク・ホラーの特集上映!

 

新旧の貴重なフォーク・ホラー作品の数々を

スクリーンで鑑賞できたことです。

 

クラシック『Haxan』、代表的な傑作フォーク・ホラー

『The Blood on Satan's Crow』、チェコの『Valely's Week of Wonders』

韓国の『Evil Spirit』、フロンティアな怪作『Eys of Fire』などなど。

 

フォーク・ホラーの3時間のドキュメンタリー映画

『Woodlands Dark and Days Bewitched: A History of Folk Horror』

ようやく鑑賞。

 

古今東西のフォーク・ホラーを徹底的に押さえていて、

しかもアメリカやEUのみならず、オーストラリア、ブラジル、

そして日本の作品も取り上げられていました。

『怪猫 呪いの沼』や『死国』など。

 

同作の監督で著名な評論家でもある、

キエラ・ジャニスにもようやく会うことができ、他の友人らも交えて

週末に一緒にホンデのアニマルカフェに行ったのも良き思い出です。

 

 

映画祭初日のオープニング作品は

アリ・アスターの『Beau is Afraid』でしたが、

僕はすでにロンドンで鑑賞済みだったので、

これはパスして韓国人の友人とディナーをした後、

オープニング・パーティに参加し、

その後二次会で他国の映画監督や韓国映画界の重鎮らと

朝5時まで飲みました。

 

映画祭の醍醐味は国際的な交流にあり。

ソウル国際環境映画祭で仲良くなった

映画人たちと再会し、さらに新たな仲間を作り、

映画祭期間中に他のパーティにも参加し、

ネットワークが広がったのは大きな収穫でした。

 

プチョン映画祭自体、規模が大きくなり、

バラエティに富んだ企画が組まれ、

前回参加した時よりも多くのお客さんが入っていて、

たくさんの上映がソールドアウトに。

釜山、全州に続き、この映画祭も若い女性のお客さんが

多く目についたのがとても印象的でした。

韓国は元気だなあ。

 

そして最終日。

映画の上映後にシティホールのロビーにいたら、

一人の20代前半と思しき韓国人の映画祭ボランティアの女の子が

「コバヤシマサト監督ですか? サインをください」

と日本語で声をかけてきたので、心底驚きました。

 

話を聞くと、去年全州国際映画祭で

『RAMEN FEVER』を観てくれたそうで、

「あの映画も、ラーメンも大好きです」。

と言ってくれて感激した次第。

 

「日本語があまり話せなくて、ごめんなさい」と

恥ずかしそうに言っていて、

「ケンチャナケンチャナ!」と返せばいいのに、

なぜか英語で答えていた僕は大いに反省。

 

彼女が着用していた、

ボランティア用の可愛いイラストが入った

Tシャツが恥ずかしいらしく、

ずっと手で覆い隠していたのですが、

シャイなわりには大きな声で声をかけてくれて、

芯が逞しい部分はやはり韓国人だなあ、と思いました。

 

今まで自分の映画と一緒に参加した

4つの海外映画祭では、いずれもお客さんに

サインをねだられましたが、自分の映画が上映されていない

映画祭で声をかけられ、サインをお願いされたのは

初めてのことだったので、また一つ韓国との距離が

縮まったというか、絆が深まったような気がした初夏でした。

 

そして実は当初は6泊の予定が、急遽重大な仕事が入り、

フライトを変更して、5泊ソウルに延泊してきました。

 

それは僕が敬愛するキム・ギヨンに関することであり、

僕の次の作品に繋がる伏線でもありました(続く)。