カンヌ国際映画祭2023レポート! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

さて、5月にフランスに飛び、

第76回カンヌ国際映画祭に参加してきました。

カンヌに行くのは、これが3度目。

 

 

5月16日の映画祭初日から23日まで

8日間参加し、40本の作品を鑑賞しました。

 

最初に伝えておくと、パルムドールを受賞した

フランスのサスペンスドラマ『Anatomy of a Fall』

鑑賞しませんでした!

 

観られるチャンスは何度かあったのですが、

上映時間2時間半は長いし、

あまり引かれる感じでもなかったので、

映画祭期間中にNEONが北米配給権を買ったと聞き、

一瞬観ようかとも思ったのですが、他作品を優先しました!

 

 

今年のカンヌは全体的に、

昨年よりは良質な作品が多かった印象で、

インダストリー向けのプライベート試写も含め、

韓国映画をわりと観ました。ずばり7本。

 

中でも、批評家週間で上映された、

ジェイソン・ユ監督、

チョン・ユミイ・ソンギュン主演の

スリラー『Sleep』は傑作。

これはもう、素晴らしかったです。

ここではあえて、多くを語りません。

 

 

 

ある視点部門で上映された、

ソン・ジュンギ、Bibi主演の

『Hopeless』は、クオリティは高いのですが、

ヴァイオレントで痛々しい、

ヘヴィなネオノワール・ドラマで、

鑑賞後の疲弊度が強烈でした。

痛烈な描写に途中退場する人も少なくなかったです。

人気ミュージシャンのBibiは、登場シーンは少なかったのですが、

抜群の存在感を見せてました。

 

 

 

そして、個人的に今年一番期待していた、コンペ部門の

ジョナサン・グレイザー監督(『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』)

のホロコーストドラマ

『The Zone of Interest』は、

予想していた作風ではありませんでしたが、

グレイザー節が要所で炸裂する

ディープで唯一無二の異色作でした。

これは二度鑑賞しました。

 

 

コンペ部門の、アキ・カウリスマキの最新作

『Fallen Leaves』は、いつものカウリスマキらしい

朴訥としたオフビートなコメディであり、

愛らしいラヴストーリーでした。

 

劇中、カウリスマキを敬愛するジム・ジャームッシュ監督の

『デッド・ドント・ダイ』について映画マニア同士が

語り合うシーンがハイライトでした。

 

 

カンヌ・クラシック部門で上映された、

ジム・ジャームッシュのバンド、SQUALがスコアを加えた、

マン・レイ監督のシュールな無声短編映画4本立て

『Return to Reason』4Kレストア版の上映では

ジャームッシュも上映前に登壇し、

「俺たちはマン・レイのバックバンドなんだ」と

笑いながら語っていました。

 

 

この時間に裏のメイン会場、ルミエールでは

豪華ゲストが集結してウェス・アンダーソンの新作

『アステロイド・シティ』が公式上映されていたのですが、

こちらのクラシック映画も真のシネフィルたちが

詰めかけて、会場は満席の大盛り上がりでした。

催眠術のようなトリッピーでアバンギャルドな

音楽も痺れました。

 

ある視点部門で上映されたのが、

アンソニー・チェン監督、

中国のスーパースター、チョン・ドンユイ(『少年の君』)

主演の『The Breaking Ice』(燃冬)

 

韓国人が多く住む中国の延吉市の真冬を

舞台にした3人の若者たちを巡るドラマで、

ストーリーはやや不完全燃焼でしたが、

鬱屈とした生活を送るツアーガイドを

自然体で演じたドンユイは見事でした。

 

 

メインプログラマーが交代した、

並行開催の「監督週間」のラインナップが正直、なかなか酷くて、

地味で小ぶりでスロウなアート系ドラマ作品ばかりで、

途中で退席した作品が何本もありました。

来年は改善されるのだろうか...?

 

今年のカンヌはしかし、

滞在期間中半分ぐらい雨が降っていたので、

もちろん昨年のような殺人的猛暑よりは良かったのですが、

南仏らしくない雰囲気で、そこはちょっと残念でした。

 

例年以上に多くの世界中の映画インダストリーの人間が

参加したため、チケット争奪戦がさらに激しかったのですが、

最終的に観たい作品はほぼ鑑賞できたのは良かったです。

 

キム・ジウン監督、ソン・ガンホ主演の

『CobWeb』は映画祭終盤での上映だったので、

残念ながら観ることはできませんでしたが!

 

あと、レッドカーペットがある

メイン会場ルミエールの夜の上映はすべて

ドレスコードがあり、男性はスーツにネクタイ必須なのですが、

そんな堅苦しいのはごめんなので、

一回きりの上映だったマーティン・スコセッシ最新作

『Killers of the Flower Moon』は観ませんでした!

上映時間200分越えだし!