釜山国際映画祭 2023(BIFF 2023) | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

先週から7泊で韓国に滞在し、

昨年に続き、アジア最大の映画祭、

釜山国際映画祭(BIFF)に参加してきました。

 

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今年も、パク・ウンビン、ソン・ガンホ、

チョウ・ユンファ、ファン・ビンビン、

ハン・ソジュ、ソン・ジュンギ、

チョン・ジョンソ、

さらに韓国系アメリカ人俳優の

スティーヴ・ユァン、ジョン・チョウ

豪華ゲストが集結。

 

週末はソウルで一泊してきたので、

日曜日は映画祭には行けず、

最終的に17本しか鑑賞できなかったのですが、

前半は特にラインナップが充実してました。

 

今年のサンダンス映画祭で大絶賛された

セリーヌ・ソン監督の反自伝的な作品

『Past Lives』をようやく鑑賞。

期待通り、珠玉のビタースウィートな

ラヴストーリーでした。

北米配給はA24で、賞レースに

どれぐらい絡んでくるか注目。

 

デヴィッド・フィンチャーの新作

『ザ・キラー』

マイケル・ファスベンダー扮する、

ザ・スミスをこよなく愛する

殺し屋を巡るネオノワールな

クライムアクション。

ダイアローグは控えめでモノローグが多い、

スタイリッシュですが突き抜けた

爽快感はないです。

 

韓国の大ヒット大作の続編

『毒戦 BELIEVER 2』は、

なかなかヴァイオレントでひねりがある、

壮大でブルータルなクライムアクション。

「ムービング」での好演ぶりも記憶に新しい

ハン・ソジュ演じる狂った殺し屋が

鮮烈で痛快でした。

これはNetflix作品ですが、

大スクリーンで鑑賞できたのはラッキー。

 

アレクサンダー・ペインの新作

『The Holdovers』は、

1970年のクリスマスホリデイの、

米東海岸ある大学を舞台に

嫌われ者の教師と家族がいない

生徒たちの交流を描いた

トリッキーでペーソスのある、

クレバーでハートウォーミングな

秀逸なコメディドラマでした。

『サイドウェイ』以来のペインの傑作かと。

主演はポール・ジアマッティ。

 

マッツ・ミケルセン主演の

『The Promised Land』は、

1755年の北欧を舞台に

元兵士が己の尊厳と王への

忠誠心をかけて命懸けで荒地を耕すエピック。

一見地味ですが、非常にタイトで荘厳で

ドラマティックな作品で、

時に野蛮でヴァイオレントでヘヴィ。

実話をベースにしているのかと思ったら、

フィクションでした。

来年のアカデミー賞国際映画部門の

デンマーク代表。

 

間違えてチケットを取ってしまった

『Rather be Ashes Than Dust』 は、

2019年に香港で起こった大規模デモの

もう一本のドキュメンタリー映画。

リアルかつ命懸けで撮影したショッキングな

映像が満載のエレジーで、個人的には

『時代革命』よりも魅了されました。

 

カンヌで見逃していた197分のトルコの

『About Dry Grasses』や、

キム・ダミ主演の感動リメイク

『Soulmate』

カナダの鬼畜なシリアルキラーと彼に

取り憑かれたモデルを巡るスリラー

『Red Rooms』も鑑賞。

 

 

 

 

大人気タイトルの

ヨンゴス・ランティモス監督

『哀れなるものたち』と

カンヌ・パルムドールの

『Anatomy of a Fall』は

結局パスを持っていても

チケットが大争奪戦で取れず、

今回は観られなかったのですが、

全体的に昨年よりもラインナップが

弱かったかな、という印象。

 

比較すると、やはり観客の入りも熱気も、

去年のほうが凄かったですね。

今回は大きな特集上映もなく、

上映作品の本数も減少したため、

去年使用していた会場が

一部使われていなかったりも。

理由は、映画祭の予算が20億ウォン近く

削減されたのが大きいみたいです。

ジャンル映画枠のミッドナイトも寂しかった。

 

ただ、映画を鑑賞する以外にももちろん、

国際的な映画人や監督たちとも

交流ができて、友人らとも再会でき、

名物のシーフードに舌鼓を打ち、

今年もそれなりに充実した秋の釜山でした。

 

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