韓国・全州国際映画祭2023 体験記! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

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韓国で2番目に大きな映画祭、

全州(チョンジュ)国際映画祭に初参加してきました。

4月27日の開幕から5月2日まで6日間。

映画祭では今回、247本の映画が上映されました。

 

昨年、僕の監督作『RAMEN FEVER』

インターナショナル・プレミアの場となり、

しかもメイン会場で上映してくれた

感慨深い映画祭ですが、以前から

ずっと参加したかったので(去年はパンデミックの

規制の影響で参加できず)、念願が叶いました。

 

ソウル駅からKTXに2時間弱乗り、全州駅で下車。

そこから映画祭のストリートがある繁華街までバスで約15分。

滞在したホテルも映画祭会場の中心地にあったので、

連日徒歩で移動してました。

 

映画祭初日はオープニング・セレモニーとオープニング作品

ダルデンヌ兄弟の『トリとロキタ』

(昨年のカンヌで鑑賞済み)の上映のみだったので、

この日はずっと全州の街を歩き回っていました。

 

全州韓屋村やチャマン壁画村など観光地も一通り。

自然も多く、山に囲まれたのどかで美しい街でした。

 

2日目から本格的に映画祭がスタート。

僕が取得したインダストリー・バッジで

一日4作品までチケットが取れるので、

映画祭期間中に20本の新作映画を鑑賞し、

他にもビデオ・ライブラリー(PCでの視聴)で

2本の長編と1本の短編(キム・ボラ主演の『Farewell Trip』)

を鑑賞しました。主に韓国映画を観ましたね。

 

全州国際映画祭の印象はというと、

映画祭会場であるストリートが

ロケーション的にかなりコンパクトで

僕が映画を観た会場もCGVとMEGABOXのシネコンのみ。

この二つの劇場間も徒歩3分という至近距離だったので、

移動が簡単なのが助かりました。

 

映画祭は連日大盛況で、土日と月曜の祝日を含む

3連休は特に、若いオーディエンス(特に女性)が

多く駆けつけて、チケットはほとんど売り切れ。

昨年の釜山国際映画祭も同じように大勢の若者がいて

びっくりしましたが、韓国の映画熱はやはり、凄い。

 

そして顕著だったのが、映画祭公式グッズがバカ売れしていて、

グッズ販売店の開店時間前に20人ほどの

列ができていたのも驚きました。

T シャツやマグカップやポスターといった定番商品以外にも

可愛い小物も多く、多くの商品が売り切れになっていました。

これも全州映画祭が韓国の多くの

映画ファンに浸透している証拠ですね。

 

会場には多くのゲストが来場し、

ほとんどの作品で上映後にQ&Aがしっかり30分行われ、

その後ロビーで即席のサイン会が行われるのも日常的な光景でした。

スターと距離が近く、コミュニケーションが簡単に取れるのは

やはり映画祭の醍醐味の一つだと思います。

 

今年の上映ラインナップは、例年通り

インディペンデント映画にフォーカスしていたのですが、

昨年と比較するとややインパクトに欠け、

ちょっと地味だなあと感じていたのですが、

収穫は少しありました。

 

一番良かったのは、

1999年の真夏を舞台にした青春ロマンス

『No Heaven, But Love』

 

主演は、パク・スヨン(『はちどり』)と

イ・ユミ(「イカ・ゲーム」「今、私たちの学校は...」)。

 

Y2K問題を交えた、瑞々しくも時にヘヴィでハードな

学園青春ものであり、ラヴストーリーであり、

スポーツ映画(テコンドー)でしたが、

ドラマティックで美しいパワフルな作品でした。

主演二人の演技力も非常に印象深く、感銘を受けました。

 

パク・スヨンは女優のイ・ジョユン

(「梨泰院クラス」『ベイビー・ブローカー』)と

仲が良いらしく、彼女も映画を観に来ており、

映画祭会場付近で一緒に撮影をした写真を

Instagramにアップしてました。

 

 

あとは、キム・ジェギョン(元RAINBOW)主演の

秘密の収集癖を持つ孤独な女性の再生を描いた

『Flowers of Mold』も、一風ひねった良質なドラマ作品でした。

キム・ジェギョンの抑えた演技が凄く良かったです。

 

 

イ・スヒョク主演のクライムミステリードラマ

『LOST』も緊迫感溢れるスリリングな作品でしたね。

 

実話を基にした台湾映画『Untold Herstory』

白色テロを題材にした、なかなかショッキングで

クオリティの高い、切ない物語でした。

 

ハン・ソヒの映画初主演作(意外)

『Heavy Snow』も上映。

ソヒが陰のある転校生で人気若手女優を演じる

青春映画でした。 

 

他には、今年のサンダンス映画祭で上映されていた

『Kim's Video』も鑑賞。

 

僕が以前ニューヨークに住んでいたときに

足繁く通った、映画ファンや音楽ファンから

こよなく愛されたイースト・ヴィレッジの

人気レコード&DVD店のドキュメンタリー映画です。

 

2000年代初頭まで、イースト・ヴィレッジには

文化的ランドマークが3つ存在しました。

CBGB、Other Music、そしてKim's Videoです。

 

このいずれもドキュメンタリー映画が

製作されたことになるのですが、

『Kim's Video』は、この伝説的なお店の

ヒストリーやレガシーをドキュメントした

作品というではなく(簡単には触れられてますが)、

どういうわけか、イタリアのシシリアに送られた、

お店の膨大な5万枚のDVDコレクションの行方に

フォーカスしたスパイ映画風の作品で、肩透かしでした。

ちょっと焦点がぼけているというか。

 

ミッドナイト枠ではイタリアのホラー『Flowing』を鑑賞。

謎の濃霧がローマの街を覆い、殺人事件が勃発する

というゴア描写も鮮烈な作品でしたが、主人公家族の造形と

ドラマ、サスペンスの盛り上がりに欠け、ちょっと残念でした。

 

あとは、ベルリン国際映画祭のオンライン版で鑑賞済みだった

実験的なエロティックドラマ『White River』

ようやくスクリーンで鑑賞。

 

この作品の上映中に、前の席でスマホの画面を

何度も光らせてるマナーを知らない

無礼な客がいるなあ、と思っていたら、

その人物がまさにこの映画の監督でした(!)。

自分の映画とはいえエチケットは守りましょう。

 

全州は「食」が韓国の中でも有名な街で、

連日ご当地の食事に舌鼓を打ったのですが、

これはまた別の機会にまとめて書きます。

 

映画祭には、6月に僕の映画を上映してくれる

ソウルの某映画祭のスタッフの女性たちも来ていたので、

彼女たち一緒に深夜まで酒を飲み交わしたのも良き思い出です。

 

次回は今度こそ自分の映画と一緒に全州を訪れたいな、

と強く思いました。

 

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