ギャレス・エヴァンス製作のバイオレントな傑作「Gangs of London」レビュー! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

『ザ・レイド』シリーズの

ギャレス・エヴァンスがクリエーターを務めた

UKのTVシリーズ「Gangs of London」を鑑賞。

 

 

ロンドンの裏社会を支配するギャングのボスが

何者かに命を奪われ、残された息子ショーンや

妻マリアン、仲間たちは犯人探しに奔走。

同時にアルバニアやイタリア、中国、ジャマイカ、パキスタン、

クルド人のマフィアにパキスタンのドラッグカルテルといった

国際的な犯罪組織の力関係の均衡が崩れ、

ロンドンのストリートで血みどろのバトルを繰り広げる。

 

シーズン1は、9つのエピソードから構成されており、

ギャレス・エヴァンスが監督を務めたエピソード1は93分

(長編映画の長さ)、それ以外は約1時間。

 

これはギャレス・エヴァンスのシグネーチャーである

ウルトラ・ヴァイオレンスが全編で炸裂する、

かつてない圧倒的なクライムアクションスリラー・シリーズだ。

 

エピソード1は、『ザ・レイド』シリーズばりの

エクストリームでブルータルな阿鼻叫喚の

アクションがパブでダイナミックに繰り広げられ、

待ってました!と快哉を叫ぶ。

 

同じくギャレスが監督したエピソード5は、

『要塞警察』を彷彿とさせるセットアップで、

マイケル・マン映画を凌駕する

一流の暗殺エキスパート集団同士の

壮絶かつ緊迫感に満ちた尋常じゃないハイテンションな

ガン・バトルの熾烈な攻防が延々と続き、血湧き肉躍る。

命がけのカメラワークによる臨場感にはエクスタシーを感じる。

 

ザヴィエ・ジャンが監督したエピソード6、7、8は、

『マーターズ』ばりの拷問シーンもグロテスクで戦慄が走るが、

狭いホテルの一室でマチェーテを使ったライバルギャング同士の

野蛮かつ残忍な殺し合いのシーンも凄惨でクレイジーで、

ザヴィエの真骨頂である弩級にパワフルなアクションシーン

も圧巻。締めくくりに高層ビルを景気良く丸々爆破してくれます。

 

コリン・ハーディはエピソード2、3、4、9と

一番多くのエピソードを監督してますが、

凄腕ヒットマンに高性能ライフルで撃たれ

頭部がかぼちゃのように爆発する

『スキャナーズ』や『デッドリーフレンド』のようなシーンや、

ジプシーの巣窟を殲滅する、銃弾の雨あられが飛び交う

銃撃アクションシーンなど、見所が多いです。

 

すべてのエピソードに上記のようなサービス精神に

満ちたインパクトが強烈なハイライトが待っており、

ひたすら感服。

同時に、国際色豊かな各国の揃いも揃って人相が悪く

異なる特徴やスタイル、背景、思想を持つ

極悪マフィアの抗争が激しくヒートアップし、

裏切りに続く裏切りにより、犯人探しと権力争いが

混沌とするクライムドラマとサスペンスも随所で光る。

 

もはやこの血みどろ狂騒劇は、ホラーアクションに

カテゴライズしてもいいと思うが、

この三人の監督たちが集結したのは必然だった。

 

アイルランド人監督のコリン・ハーディ

(『ザ・ハロウ』『死霊館のシスター』)は英国人として

必要な戦力でしたし、フランス人のザヴィエ・ジャンは

アクションホラーの旗手(『フロンティア』『ヒットマン』が顕著)、

そしてウェールズ人のギャレス・エヴァンスの

『ザ・レイド』も、よく考えるとサバイバルホラーの趣で、

ホラーオムニバス『V/H/S/ シンドローム』の一編は

完全にアクションホラーだった。

 

僕が3日間セットビジットに訪れた

友人ザヴィエの監督作は、エピソード6でした。

昨年の5月にロンドンで、目の前で目撃した撮影現場の様子が

ありありと蘇ってきて、ザヴィエはもちろん、

セットで会った俳優たちや撮影監督のローレンや

録音のダンカンを含めたクルーたちのことも思い出し、

ちょっと懐かしかったです。

緊張感がありつつも、一体感があり、

和やかでとても雰囲気のいい撮影現場だったので。

 

ギャレス・エヴァンスには、パンデミックが

落ち着いたら早く新作の長編映画を

撮影してもらいたいものだが、

「Gangs of London」のシーズン2も非常に楽しみである。