「ディキンスン〜若き女性詩人の憂鬱〜」に見るマサチューセッツの文学者の系譜 | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

APPLE TV+のヘイリー・スタインフェルド主演

「ディキンスン〜若き女性詩人の憂鬱〜」を鑑賞。

 

 

アメリカを代表する偉大な女流詩人、

エミリー・ディキンソンの伝記TVシリーズですが、

非常にコミカルで娯楽性の高いポップなドラマで、

クオリティは高いです。

 

19世紀を舞台にしながらも、古臭く堅苦しくなく、

意図的にモダンなセリフも時に飛び出し、

ディキンソンの美しい詩もキッチュなフォントで

華麗に画面を飛び交います。

 

音楽も、Billie Eilish、Mitski、Angel Olsen、

Hatchieといった、秀逸な楽曲使用のセンスも光ります。

 

主演のヘイリー・スタインフェルドは、

確かにコミカルな演技もシリアスな演技も達者で

存在感もあり素晴らしい女優なのですが、

ルックスでいうと抜群に美しいわけでもなく、

ガタイもよくボーイッシュな感じなのですが、

ディキンソンの幼馴染みで恋人の

準主役スーを演じたエラ・ハントが、

そこをうまくカバーしています。

 

エラ・ハントは、ゾンビミュージカルコメディ

『アナと世界の終わり』で主演を務めた、

イングランド出身の新進女優ですが、

あのときとは180度異なる、

貞淑でエレガントで控えめなシリアスキャラを

抑えた演技で好演しています。

 

監督は、最初の2つのエピソードを

デイヴィッド・ゴードン・グリーン

(『スモーキング・ハイ』『ハロウィン』)が務め、

リン・シェルトン(『アラサー女子の恋愛事情』

『ラブ・トライアングル』)も、2つのエピソードで

メガホンを取っています。

 

リン・シェルトン監督は、一昨日の5月15日に、

残念ながら、血液疾患で逝去しました。

心より、ご冥福をお祈りします。

 

エミリー・ディキンソンは、

アメリカ東部マサチューセッツ州

アマーストで1830年に生まれ同地で育ったのですが、

劇中「若草物語」の著者オルコットが

1エピソードで登場します。

 

そう、彼女はディキンソンと同時代に生きた作家でした。

1832年にフィラデルフィアで生まれたオルコットは、

1840年にマサチューセッツ州ボストンに移住したのです。

 

同じく「ウォールデン 森の生活」でお馴染み、

ヘンリー・デイヴィッド・ソローも何度も登場しますが、

彼はマサチューセッツ州コンコードで

1817年に生まれ育った作家であり詩人でした。

 

このシリーズには登場しませんが、

他にも、エドガー・アラン・ポーも

1809年にボストンで生まれてますし、

時代は少し後になりますが、詩人シルヴィア・プラスも

1932年に同じくボストンで生まれてます。

 

マサチューセッツほか6州から構成される

ニューイングランドというエリア(地方)で考えると、

H.P.ラヴクラフトは、お隣のロードアイランド州で

1890年に誕生しました。

 

今まで僕は、ニューヨークからバスや車で

ボストンには何度も訪れたことがありますが、

その文学的な側面に関してはあまり意識した

ことがなかったので、良き教養、発見となりました。

 

「ディキンスン〜若き女性詩人の憂鬱〜」は、

シーズン2も製作されるようなので、楽しみです。