M・ナイト・シャマラン製作「サーヴァント ターナー家の子守」はシャマラン節全開! | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

M・ナイト・シャマランが製作・

監督(エピソード1)のApple TV+製作の

「サーヴァント ターナー家の子守」シーズン1を鑑賞。

 

 

舞台はフィラデルフィア。

ニュース番組のレポーターを務めるドロシーと、

著名な料理アドバイザーでシェフのショーンの夫婦。

生後13週間の息子を失ったショックで精神が崩壊した

ドロシーのため、治療の一環として赤ちゃん代わりの

ベイビードールを与えた家族だったが、その人形を

本物の自分の子供だと信じこむドロシー。

彼女はようやく職場に復帰し、子守として、

ウィスコンシンからやってきた

ミステリアスな女性リアンを雇う。

するとリアンがやってきて間もなく、なんと人形が

本物の赤ちゃんになり、ドロシーを除く家族は動揺する。

 

過去のシャマラン作品でいうと『ヴィジット』に近い

アトモスフェリックなホラー・スリラーである。

サスペンスフルかつクリーピーで、

シリアスな表情をしながらギャグを飛ばす

シャマランの十八番は要所で健在(たまにわかりづらいが)。

このオフビート感は、シャマラン作品に一環するスタイルだ。

 

このシリーズの設定はしかし、

カヤ・スコデラリオとジェシカ・ビール主演の

サスペンスフルなドラマ『The Truth about Emanuel』

と同じなのだが、案の定、

この映画の監督から訴訟を起こされていた。

とはいえ、こちらがドラマ性の高い作品である一方、

「サーヴァント」は宗教ホラー的な要素を

持っているので、全く別ジャンルの作品といえる。

 

ユニークなのが、

主人公の一人ショーンが、ステイホームで

高級料理の数々を作る有名な美食料理アドバイザーで

批評家でもあり、一流のシェフというところ。

液体窒素を使った分子料理など、クリエイティヴで

洗練された、画期的なメニューの数々が登場する。

上品でエレガントなトーンがダークでミステリアスな

スリラーの良きスパイスになっているのだ。

 

『ローズマリーの赤ちゃん』のようなホラーに

「シェフのテーブル」や「エル・ブリの秘密」を融合した

この試みは、画期的ではないだろうか。

調理のシーンが時にグロテスクでショッキングなのも、

ホラーとクックの親和性の高さを見事に証明した。

 

一軒家を舞台にしたブラムハウス・スタイルの作品で、

全体的に屋内で照明を使わず、ほとんど暗く

漆黒のイメージを強調しすぎて、観る者は

自分の部屋を真っ暗にしてスクリーンを明るくしないと

見づらい、という欠点がありつつ、

展開はスローであまり話が進まない上に登場人物も少ない。

1エピソード、約30分なのでまだいいが、

これが1時間だと、少しきつかった。

 

リアン役の主演ネル・タイガー・フリーは、

若干20歳のイングランド出身の新進女優だが、

イノセントを感じる透明感があり、

清廉潔癖で抑えた演技が良いです。

 

彼女はニコラス・ウィンディング・レフンが監督した

「Too Old to Die Young」にも主演してますが、

あれは超絶にスローで寝てしまうので、

93分もあるエピソード1で頓挫しました。

 

謎の女性リアンは、一体何者なのか?

神か悪魔か天使か堕天使か魔女か、

それともペテン師か?

 

シーズン2の撮影は、このパンデミックの影響で

延期になったしまったが、『RAW 少女のめざめ』の

ジュリア・デュクルノーもメガホンを

取るらしいので楽しみなところ。

 

しかし、ジュリアの監督作『Justine』も当初は

今頃撮影していたので、もしかすると「サーヴァント」

にはもう関与していない可能性もありますが。