Netflix「アンオーソドックス」必見 | Just for a Day: 小林真里ブログ

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映画監督/映画評論家 小林真里(Masato Kobayashi)です

今世界各国で話題を呼んでいる、

Netflixの「アンオーソドックス」を観ました。

 

これが予想以上に本当に美しく、パワフルな作品で、

4エピソード、計3時間半のミニシリーズですが、

一本の長編映画と捉えていいなら、今年のベストムービーです。

 

 

ニューヨークのブルックリン、ウィリアムスバーグに住む

ユダヤ教超正統派の19歳のエスティーは、

コミュニティのハードコアなルールや慣習、

ライフスタイルについていけず、いやいや見合い結婚した

夫や姑との関係は最悪で、意を決してニューヨークを飛び出し、

複雑な関係で疎遠状態の母親が住むドイツのベルリンに向かう。

 

非常にユニバーサルな、普遍的な再生の物語であり、

すべてを失い、もはや失うものがなにもない、

追い詰められた若き主人公の、本当の自分と自由を見つけるための

果敢なジャーニーを描いた、非常にエモーショナルで心打つ、

ドラマティックでビューティフルな作品です。

必見。

 

ウィリアムスバーグはマンハッタンから地下鉄で一駅

(L lineのBedford)の、

僕がニューヨークにいるときは毎日のように通う

庭のような場所で、たまにあのエリアにも宿泊します。

 

20年前まではミュージシャンやアーティストたちが住む

フリーダムでアートなネイバーフッドで、

その後再開発で高級コンドミニアムが次々と乱立し、

家賃が高騰し、かつてあった多くの

ライヴハウスやレコード屋も潰れました。

それでもまだヒップで、マンハッタンより

面白い面も多いのですが。

 

以前一度、ミネアポリスから来た友人らと

Uberに乗っていたときに、たまたま

普段は自分が足を運ばないウィリアムスバーグの一角、

この作品に登場するユダヤ人コミュニティを通過し、

そこに住む人たちのことを運転手から聞いて驚いたのですが、

この作品を見て、さらに見識が広がりました。

 

そうえいば、ベルリン在住のチリ人、

セバスティアン・レリオが監督した

レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムス主演の

『ロニートとエスティ』も、

イングランドのユダヤ人コミュニティからニューヨークに

脱出した主人公が、父の訃報を聞き故郷に舞い戻り、

過去と対峙するという宗教ドラマでラヴストーリーでしたね。

 

「アンオーソドックス」は、デボラ・フェルドマンの

ベストセラー自伝をベースにした作品ですが、

舞台はほとんどベルリンで、

あの過去とモダンが融合したアーティスティックで

どこか退廃的な、独特の景観を持つ刺激的な街を訪れた時の

ことを思い出し、懐かしいですし、恋しくなりました。