【Bunnmei の一言】
イスラエルが2024年4月1日にシリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館を空爆し、イラン革命防衛隊の幹部を含む少なくとも13人が死亡した事件について、世界中から非難と懸念が叫ばれました。
外交公館に対する攻撃は、ウィーン条約に基づく国際法違反と指摘されています。空爆により、イラン大使館職員だけでなく、シリア人の民間人も犠牲となりました。 この事件は、イランとイスラエルの間の緊張をさらに高め、中東地域の情勢不安を招く恐れが十分にあります。当然、「被害者」イランは報復措置を表明しており、今後、イランとイスラエルの間で更なる軍事衝突が発生する可能性も懸念されています。
イスラエルのこのような大胆な冒険は、米国がイラクやシリアに不当な形で軍事基地を持ち、去年より空母まで中東に出動させイスラエルを守り続けていることが背景にあります。今回のようなイスラエルによるイラン大使館空爆は、事実上の米・イスラエル連合作戦です。米国はその後自らの態度をあいまいにし事実上イスラエルの犯行を容認したのです。
イスラエルの戦火拡大を糾弾します。同時に米国は不法駐留軍を置いているシリアと、撤退を求められているイラクから一刻も早く退くべきです。
■不当、不適切な米軍の中東駐留
今年二月二日に米国がイラクにある地元のイスラム系武装組織を空爆して数十名が死亡する事件があり、世界はそしてイラクは戦争拡大の懸念を深めています。この空爆にはもちろん伏線があり、米兵三人が無人機で殺害された事件で犯行声明も出されています。その事件の米軍による「復讐」です。
このような危機的状況の中で、イラク政府は、一刻も早い米軍の撤退を求めています。
イラクに駐留する米主導の多国籍軍は、2003年のイラク戦争後に設立された有志連合軍です。イラクの治安維持、そののちはイスラム国(IS)掃討、イラク治安部隊の訓練などを任務としていました。
2024年2月現在は約2,500人の兵士が駐留しアメリカが主導。しかし、参加国は減る一方です。2020年以来イラク政府は米軍(多国籍軍)完全撤退を求めています。しかし、米国は段階的な撤退を主張し、話し合いが続いていました。
記事参照米軍駐留のシリア基地に攻撃「親イラン武装組織」の実態に迫る | ワーカーズ ブログ
米軍基地を攻撃するイスラム系武装組織(米国やマスコミではイラン系武装組織と報道されています)の多くが、イラク国内におけるアメリカ軍の存在をイラクの主権侵害と見なしており、その撤退を求めています。とはいえ、彼らは穏健派から過激派まで多様であり、ゆえに別々の組織と政党を形成しています。
イラクのイスラム抵抗運動は、イラク国内の政治情勢にも大きな影響を与えています。2018年に行われたイラク総選挙では、同組織が支持する政党連合が勝利しました。彼らは一枚岩ではないけれども、政治的な傾向として連帯して国政にも議会を通じてますます大きな影響力を持っています。
このようなイラクの国内情勢から知られるように、イラク国内での米軍基地撤去の圧力は高まるばかりです、しかも二月の米国によるイラク武装組織や民間人巻き添えの爆殺事件、そしてイスラエルの冒険的なイラン大使館爆撃により米国の立場はますます苦しいものになってきていると推測されます。
米軍のイラク駐留の問題は、シリアでも同じことが言えます。シリアの場合は、イラクのよう過去には政府と合意があったのとは異なり、アサド政権は一貫して米軍駐留を拒否しています。イラク撤退が米軍の中東からの撤退ドミノにつながるでしょう。米軍は20年前にこの地域に戦争と混乱を持ち込みました。少なくとも現在では中東の治安維持どころか戦争の火種を発火させる存在に変化しています。そして暴走するイスラエルのエスコート役を米国は果たしています。速やかな撤退こそ中東安定のために必要です。(了)