【管理人の一言】

二月二日に米国がイラクにある地元のイスラム系武装組織を空爆して数十名が死亡する事件があり、世界はそしてイラクは戦争拡大の懸念を深めています。この空爆にはもちろん伏線があり、米兵三人が無人機で殺害された事件があり、犯行声明も出されています。その事件の「復讐」です。

 

このような危機的状況の中で、イラク政府は、一刻も早い米軍の撤退を求めています。

イラクに駐留する米主導の多国籍軍は、2003年のイラク戦争後に設立された有志連合軍です。イラクの治安維持、そののちはイスラム国(IS)掃討、イラク治安部隊の訓練などを任務としていました。

 

2024年2月現在は約2,500人の兵士が駐留しアメリカが主導。参加国は減る一方です。2020年以来イラク政府は米軍(多国籍軍)完全撤退を求めています。しかし、米国は段階的な撤退を主張し、話し合いが続いていました。

 

昨日の記事参照米軍駐留のシリア基地に攻撃  「親イラン武装組織」の実態に迫る | ワーカーズ ブログ (ameblo.jp)

 

米軍基地を攻撃するイスラム系武装組織(米国やマスコミではイラン系武装組織と報道されています)の多くが、イラク国内におけるアメリカ軍の存在をイラクの主権侵害と見なしており、その撤退を求めています。とはいえ、彼らは穏健派から過激派まで多様であり、ゆえに別々の組織と政党を形成しています。

イラクのイスラム抵抗運動は、イラク国内の政治情勢にも大きな影響を与えています。2018年に行われたイラク総選挙では、同組織が支持する政党連合が勝利しました。彼らは一枚岩ではないけれども、政治的な傾向として連帯して国政にも議会を通じてますます大きな影響力を持っています。

 

このようなイラクの国内情勢から知られるように、イラク国内での米軍基地撤去の圧力は高まるばかりです、しかも今回の米国によるイラク武装組織や民間人巻き添えの爆殺事件により米国の立場はますます苦しいものになってきていると推測されます。

 

それでは米国がそこまでイラク駐留に固執している理由は何でしょうか。

米国は21世紀に入り、シェールガス・オイル産出国となり、中東原油への関心を低下させました。だとすると別の理由が考えられます。それが、覇権国家として同盟国であるイスラエルの防衛です。イランはイスラエルにとって脅威であり、イラクはイランと隣接しています。そのため、米軍はイラクに駐留することで、イスラエルの安全保障を支援している側面もあります。

 

米軍のイラク駐留の問題は、シリアでも同じことが言えます。シリアの場合は、イラクのよう過去には政府と合意があったのとは異なり、アサド政権は一貫して米軍駐留を拒否しています。イラク撤退が米軍の中東からの撤退ドミノになりかねません。米軍は20年前にこの地域に戦争と混乱を持ち込みました。少なくとも現在では中東の治安維持と言うよりも戦争の火種を発火させる存在に変化しています。速やかな撤退こそ必要です。(了)

 

 

米・イラク、米主導の有志連合軍撤収に向けた協議開始へ

|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

関係者によると、駐イラク米大使が1月24日にイラクのフセイン外相に手渡した書簡で、米国はこのメッセージを伝えると同時に、イラクでイランの支援を受ける武装勢力による米国への攻撃をまずは止めるという前提条件を取り下げたという。

 

イラク外相、米に協議再開訴え 駐留連合軍の将来巡り

 (msn.com)

[7日 ロイター] - イラクのフセイン外相は6日、ブリンケン米国務長官と電話協議し、イラクに駐留する米主導の有志連合軍の将来を巡り交渉を再開する必要があると強調した。

両国の交渉は1月に始まったが、直後にヨルダンの米軍基地への攻撃で米兵3人が死亡。米国はシリアとイラクの親イラン武装勢力による犯行との見方を示した。それ以来、交渉は中断している。

米軍は今月2日、シリアとイラクでイラン革命防衛隊や親イラン武装組織に関連する標的に報復攻撃を行った。

フセイン氏は電話協議でこうした攻撃への反対を表明。「イラクは敵対国間の報復の場ではない」と述べた。

 

崩れゆく有志連合/イラク「多国籍」軍 いまや米兵93% 

(jcp.or.jp)

 米主導のイラク駐留多国籍軍=有志連合の崩壊が進んでいます。最大三十九カ国が参加した多国籍軍は現在二十一カ国に参加が半減し、駐留継続国の中でも撤退・削減を予定・計画している国が多数です。「多国籍」とはいえ、いまや兵力の約93%は米兵で、実態は米軍そのものです。

 二〇〇三年三月二十日に始まったイラク侵略戦争に直接参加したのは米英両国とポーランド、オーストラリアの四カ国。しかし、この五年間、撤退国が相次ぎ、完全撤退国は十八カ国になりました。スペイン、イタリアなどではイラク戦争を主要な争点とした選挙で政権が交代した結果の撤退でした。 

 

 国連憲章の平和の秩序を真っ向から踏みにじったこの戦争を国連は当初、容認しませんでした。米国は「有志連合」として戦争を開始し、その後、安保理は〇四年六月、決議一五四六で「有志連合」を多国籍軍として「お墨付き」を与えました。

 国連安保理は昨年十二月、イラク政府の要請を受けて、多国籍軍の駐留を今年末までとする決議を採択しました。これは〇四年の決議一五四六に、国際世論の圧力で多国籍軍の駐留にはイラク政府の同意が必要であるとの項目が盛り込まれたからでした。

 米国はイラク政府との間で、今年夏以降の米軍のイラク駐留継続についての協定を結ぶ構えです。米軍の長期駐留を狙うものですが、有志連合の崩壊もイラクとの協議の背景の一つです。2008年(伴安弘)