政治資金パーティー裏金は「個人所得」、脱税処理で決着を!

~検察は何を反省すべきか。 

| 郷原信郎の「世の中間違ってる!」 (theletter.jp)

 

ワーカーズの直のブログ (ameblo.jp)より転載

 

 

「裏金問題」の解決には、税務上の是正措置が不可欠

 

 今回、検察捜査によって明らかになった安倍派の政治資金パーティーの裏金キックバックについて、全額個人所得であることを前提に、是正措置をとるべきです。

 

 安倍派が行おうとしているとされる「裏金受領議員の政治資金収支報告書の一斉訂正」は、逆に、個人所得を政治資金であるかのように「仮装隠蔽」する行為にほかなりません。そのような対応で「政治資金パーティー裏金問題」の収束を図ろうとすれば、検察の捜査処分の結末が、国民の期待に大きく反したことと相まって、強烈な国民の反発を受けることになるでしょう。

 

 受領した議員個人の所得とされるべきなのに、全く税務申告をしていないのですから、その是正を行うのが当然です。

 

 国税が税務調査ないし査察調査に入り、キックバック分の所得金額を確定して、追徴税を含めて徴税を行うか、議員側が自主的に修正申告するか、二つの方向がありますが、検察としては、今回の捜査結果を基に、国税当局に課税通報を行い、国税との連携によって、裏金受領議員全員について税務上の是正措置を行わせるのが、今回の一連の政治資金パーティー裏金事件の決着として望ましいのではないでしょうか。

 

 最も悪質な事例は、脱税での処罰も検討すべきであり、その最有力候補が、1月7日に政治資金規正法違反で逮捕された池田佳隆氏衆院議員です。昨年12月8日に資金管理団体「池田黎明会」の収支報告書を訂正し、3200万円収入を増額する一方、それに見合う支出はなく、結局、全額翌年度への繰越金にしています。キックバックを受けた裏金について、政治資金として支出した実態は何もないのです。

 

 要するに、キックバック分は個人所得であるのに、「政治資金の収入」であるかのように政治資金収支報告書に「虚偽記入」し、なおかつ、個人所得を隠蔽したということなのです。

 

 このような、今回の裏金問題の「税務上の是正」に対しては、従来の政治家的な感覚からの不満・反発もあるでしょう。「全額政治活動に使っている。未使用分は繰越金として将来の政治活動に使うつもりであった。」というような弁解・主張をする議員もいるかもしれません。しかし、それは、「政治資金として収支報告書に記載して、議員個人から切り離す前提でキックバックを受領した場合」に初めて言えることです。

 

 冒頭でも述べたように、先週土曜日、NHK、毎日などで「安倍派幹部刑事立件見送り」と報じられたことで、国民の怒りが爆発しています。それは、「収支報告書の記載」の問題ではなく、国会議員が、政治資金パーティーの収入の中から、自由に使っていい「裏金」を受け取り、それをについて税金の支払を免れていることに対して、激しく怒っているのです。

 

 それに対して、「“政治資金”と呪文を唱えればすべて非課税」というような“昭和の遺物”とも言える考え方を振り回せば、国民の怒りをさらに炎上・拡大させることになることは必至です。

 

 しかも「収支報告書には記載しない政治資金」だとあくまで主張するのであれば、前記のとおり、それが議員本人に帰属しているのですから、「政治家本人への寄附」ということになります。だとすると、政治資金規正法21条の2第1項(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止)に違反する違法寄附であり、それを主張するなら、公民権停止を含む処罰を覚悟しなければなりません。

 

 「裏金受領議員」は、そのことをよく考えて発言すべきでしょう。