前回の記事
でアングルと構図についてなんとなく偉そうなことを書いてしまいました。
「アングル」と「構図」の違いが判らないという方のために、今回はちょっとした解説をしておきます。
●アングル
被写体に対するカメラの高さのことを「アングル」といいます。被写体と同じくらいの目線(人物に限らず、風景も同じくらいの高さ)から撮影するものを「アイ・アングル」、被写体の目線よりも高い位置から撮影するものを「ハイ・アングル」、被写体の目線よりも低い位置から撮影するものを「ロー・アングル」といいます。アングルの決定に必要なのは被写体とカメラの高さの関係だけで、写真の画面がどういう構成になっているかは関係ありません。
●構図
画面(フィルムに写った写真と、画像ファイルに記録されている画像を合わせて画面と呼ぶことにします)内に被写体がどのように配置されているかをパターン化して、分類したものを「構図」といいます。画面内の被写体の配置によって決定され、被写体とカメラの高さの関係(アングル)とは無関係です。前回の記事に書いたのは、たまに「構図」の意味で「アングル」という言葉を使っている方がいらっしゃる、ということでした。
ちなみに、主な構図の例として、以下のようなものがあります。
・ワンポイント
画面の特定の一点にのみ主な被写体を配置するものです。被写体が中央にあるものは特に「日の丸構図」などと呼ばれます。「日の丸構図は極力避ける」などと書いてある解説本もありますが、被写体を印象的に見せるためには効果的なこともあります。不安な場合には、中央を避けるパターンと日の丸構図のパターン、両方撮影しておいて見比べてみるといいでしょう。
・直線分割
画面を水平、または垂直の直線で分割するものです。先日紹介した記事にあった「3分割」などもこの例です。一般的には「2:1」(3分割)くらいが安定していて見やすい写真になるといわれています。が、先日の記事でも書いたように「1:9」など、大きく偏った比率にすることが逆に効果的な場合があります。とくに水面への映り込みや空などを撮影したいときには、メインの被写体を極端に大きく撮影してみるといいと思います。
・放射状
漫画で言う「集中線」のように、一点から画面全体に放射状に被写体が伸びるような構成です。道や朝顔のような花の撮影、森林の撮影でよく見かけます。集中線を思い浮かべるとわかると思いますが、集中点に目が行くので、集中点付近にどのような被写体を配置するか(あるいは配置しないか)がポイントとなります。
・斜線
画面を対角線で区切った構成です。これも諸説ありますが、個人的には塗りつぶした物体で斜線にする場合は、きちんと対角線にそって画面いっぱいに配置し、棒状のものを斜線に配置するときは、若干対角線をはずして、先端を画面内に収めるようにした方が画面が生きるように感じます。
まずは基本として上記4つを押さえたうえで、上記で紹介した構図の組み合わせや応用としての「準基本形」ともいえる3つも把握しておくとよいと思います。
・パターン
複数の「スポット」や「斜線」構図を画面内でリズムよく組み合わせた形。
・トンネル
スポットを極端に画面の端に移動し、片側に被写体、反対側に空白を作る形。
・S字
すべての構図をすぐに覚えるのは難しいかもしれませんが、ちょっと好きだな、という写真に出会ったときに「あ、これはこの構図で撮ったのか…」などと考えることで自分のものとして身に付くと思います。
今まで、なんとなく写真を撮っていた方、今回の「アングル」と「構図」を意識して撮影するようにすると、今までとは少し違った写真が撮れるようになると思います。ぜひ、挑戦してみてください。
余談ですが、なぜ「アングル」と「構図」が混同されるようになったのか…あくまで私見ですが、テレビで女性を映す時に、ロー・アングルで美脚を強調(あるいは、それ以上のきわどい…)した映像だと「いいアングルですね~」などとコメントする方がいらっしゃいますね。そのコメントを「いい高さから撮影している」という意味ではなく「いい画面構成をしている」と勘違いされて、「構図」の意味で「アングル」という言葉を使うようになったのではないでしょうか…違いますかね。