造り酒屋の先輩のトコに行ってたのよ、その日。学校がストップして大変になってるウチ、歓送迎会が軒並みなくなった飲み屋の影響がデカい先輩ントコ。お互いに大変だよね、みたいな話してたンだよ。
「ところでよ、松村。オマエ、持続化給付金は申請したか?アレはやっといた方がいいぞ」…持続化、あ～、さっきカーラジオでもそンなコト言ってたような気がすンな。でもさ先輩、俺よく分かンねぇンだよね、アレって。その時を待ってりゃ勝手によくなってくれンじゃね？自動的に元に戻ってくれるンじゃん？俺はお上なんぞに媚びりゃしねぇって。
「バカだな、オマエ。アレはありがたいぞ?国からタダで200万もらえンだからおいしいだろ?」。
アンタさ、こういう国の厚意のをおいしいとか言うなよ。まぁさ、お互いに大変だから、っていうかソッチの方が大変だろうしな。せっかく新酒が完成したってタイミングなのにさ。
でもこン時、マジで俺は具体的な申請資格とか知らなかったンだわ、聞いたコトあるなレベルで。CMもそうだし、この頃はニュースコーナーでもよく聞いたっけか。
この4月アタマ時点、学校と幼稚園がアウト、だけど保育園は逆に頑張ってくれてた。まぁそうは言ってもね、やっぱ市内の全小中学校の取引がなくなるのはデカい。ちなみに保育園も徐々に少なくなってくンだけどね。6月でかなりヤバくなってったし。ソレ以外の施設とか好調になってきてたからあんま心配してなかったけどさ(結果的に、8月に大口取引先がなくなっちゃったけどねぇ…)。
で、こン時もね、そうなるコトも想定出来なくもねぇな、だったらもらえるモンはもらっとくか。いらなかったら返却すりゃいいンだろ？そういう感じで。
ほうほう、要するに前年同月比で売上50パー以下になった会社を支援するってコトね。なるほど、だったらウチも当てはまるか、だったらすぐに申請しといた方がいいな。税理士からの資料がねぇし、ざっくりレベルで計算してみると…。
ほうほうほう…、ダメだなぁ。コレってさ、「売上」の数字が基準になってンだよ。ウチの学校関連、基本は"手数料"の請求しか出してねぇンだわ。つまり、請求金額＝利益って形態、売上＝利益って形なのね。例えば、1000万の請求で仮に20パー利益だったりする(通常はこンな高いコトはあり得ないけど)。このカテゴリーでのウチの請求は大体200前後、一般の請求だったら1000になるトコが請求金額200のマイナスにしかなンねぇンだ。なのに保育園とか施設とかの請求(利益率がそれなりの)がまだ頑張ってたからねぇ。外出制限のおかげで店売りも増えてきた頃だし(店はもっと率が低い)、請求金額は微妙だな。
待てよ、コンビニは納品の請求書を出すけど、産直店は売上金額を自動的に振り込むシステム。コレをシカトして申請しちまえばいいンじゃねぇか？急いでいて忘れてました～っつーコトでさ。
あっ！やっぱダメだぁ～っ！小口の方があンじゃん。コッチがなけりゃギリいけそうだけど、忘れてたじゃ済まねぇ仕事だモンよぉ。ったく、利益で計算させろって。売上なんぞ経営の本質から外れてるって。
まぁ、利益率ったら会社のブラックボックスみたいなモンだしな。ソコに踏み込むワケにもいかねぇわな。悔しいけど、マジ悔しいけど、でもやっぱ諦めるしかねぇか。
でも最近になって、コイツの不正受給で逮捕者も出てるし。真っ当な決断は正解だったよね。何より、俺の本質を問われた瞬間かも知れねぇし。そうね、正々堂々真っ向勝負が俺の信条、どうでもいい目の前にクラクラしなくてよかったンだよ。でもなぁ、利益低下で見てくれてたらなぁ…。やっぱムカつくぜぇ。