前巻では、晏嬰の父親の晏弱の活躍が描かれていた。
本巻でも、晏弱は活躍を続ける。
ときは春秋戦国時代。
斉の東部に萊(らい)という国があった。
斉は太公望が建てた国であるが、その太公望ですら攻めあぐねた国だった。
晏弱は斉の兵を率いて萊を攻める。
数年がかりで落とす覚悟だ。
まずは国境付近に城を建てる。
建てている最中に、商人の姿になり、腹心をつれて、萊の村々を周る。
自分たちに合力せよ、というのではなく、敵に力を貸すな、黙ってみていろという約束をさせる。
実際に読んで欲しいから、どうやって萊を落とすのか、落とした萊をどう扱うかは書かないが、わずか五千の兵で、太公望の落とせなかった国を落とすことに成功する。
やがて、力を蓄えた斉は苦杯をなめさせられた晋との決戦を決意する。
その直前に、その秘策を胸にしたまま、晏弱はその一生を終える。
晏弱は紛れもなく英雄だった。
晏子を読んでいると人の一生を象徴している気がする。
失敗も成功もその素はその者の性格にある。
しかもそのものの性格を知る事が確実な成功につながる。
様々な人間の主に失敗から、それらを学ぶことができる。
晏弱は人が備えたい素養を皆持っている。
頭はよく、見た目も大柄で頼りがいのあるように見える。声にも実があり、説得力がある。
だからか、成功譚はそのような資質がなければ、なしえない気もする。
失敗から学ぶことが大きいのが本書の特徴なのかもしれない。