「アルケミスト」パウロ・コエーリョ | ああ、無情!!masarinの読書ブログ

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あらすじ

アルケミストとは日本語で「錬金術師」を指す。

 

スペインの羊使いのサンチャゴは親の反対を振り切って、羊使いになる。

旅をしたかったからだ。

 

スペインのアンダルシアで、羊たちを飼い、羊たちの羊毛を売って、生計を立てる。ジプシー

ある日、ピラミッドの夢を見る。その夢の真偽を確かめるために占い師に会う。そして、王様を自称する男にも出会い、すすめられるままピラミッドに向かう。

 

ちょっと地図を頭に思い浮かべて欲しいのだが、スペインから地中海を渡り、砂漠を横断してエジプトのピラミッドに向かう。だが、海を渡った街に着いた途端、盗賊に現金をすべて奪い取られる。現金は羊たちを売って作ったものだ。

一文無しになって、クリスタルの商店で働き、金を作る。その金を持って、再びピラミッドへの旅に出る。砂漠を横断する隊商に紛れて進むのであるが、オアシスで運命の女性に会う。女性は少年をずっと待つと誓う。

 

2,パウロ・コエーリョという人物について

と、旅はつづく。全部書いても良いが、読んで欲しいので止めておこう。

パウロ・コエーリョは一時期本屋に平積みされていた、「ベロニカは死ぬことにした」という小説の作者だといえば、知っている人もいるだろう。大学時代に学業を放棄して、世界中を旅する。そして流行の作詞家になる。しばらくして小説も書くようになる。そして、「星の巡礼」でデビュー。今作と併せて、世界的な評価を得る。のであるが、日本では評価が低い。

 

3,「アルケミスト」とは

アルケミストとは錬金術師であるが、ウィキペディアの解説などを見ても、錬金術師についての誤解がある。錬金術師とは物理学者だ。様々な物質や原理に通じている人々をさす。この前提でこの作品を読むと楽しい作品だ。

 

4,作品の特徴

 

私が思うに、この作品の主人公の少年には自我の葛藤があまりない。この作品自体が明確に近大になってからの時代を描いたのではないと思われる。だからか、心理学的な葛藤がなくて、それが文章の特徴なのではないかと思う。

この特徴のおかげで、作品は前近代のものであるような感触をもっている。アジアでいうところの天命に導かれてピラミッドまで行くというものだ。宗教的な色彩を帯びている。

様々な困難に遭い、近代の小説ならそこで葛藤したりするのであるが、多少悩んでいたとしても、決定的な挫折までには至らず、また宗教的な啓示によって前に進む。

このあたりがこの作品の面白さだと思う。古典の現代訳を読んでいる感じがするのである。