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ファシズムから会社組織に興味が移りつつあるのが分かります。【書評】産業人の未来 P.F.ドラッカ

ドラッカー名著集10 産業人の未来 (ドラッカー名著集―ドラッカー・エターナル・コレクション)/P・F・ドラッカー

¥2,100
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ドラッカー難解書、第二弾です。

「経済人の終わり」に続く2作目。33歳のときの
作品です。

これが書かれたのは1942年。第二次世界大戦
真っ只中、ヒトラー率いるドイツが周辺国を侵略
していた頃の本です。

当本は、前作「経済人の終わり」の続編にあたり
ます。前作で、資本主義と社会主義は自由と平等
の社会実現をできないとの幻滅からファシズムに
逃げ込んだと指摘。

続いて、この作品では戦争が終結したあとの来る
べき社会、"産業社会"について記述。戦争前から
"産業社会"はあったもののそれが中心になる時代
が来ると見通します。

ドラッカーはわれわれは"自由で機能する産業社
会"を実現する必要がある主張します。

ここでいう"自由"とは、なんでも好きなことをして
いい"自由"ではありません。市民一人一人が責任あ
る意思決定を行う"自由"で、むしろ重いものです。

それを前提にして、産業組織、つまり企業で働く
人間に対し社会的位置と役割を与える必要がある
と。

第1章で産業社会のさわりを、2章でその社会の
一般理論、第3章で過去からの推移を振り返り、
第4章で産業社会を構築する上での働く人間の
位置と役割をきちんと与える必要があると述べま
す。第5章ではナチズムの弱点、第6章では自由
の定義、第7,8章は過去を振り返り、第9章は
アメリカへの期待を含めた自由な企業社会の実現
条件を述べます。

今回も難解で、限られた時間で咀嚼できている
自信はないですね。ただ、第一作目で政治から
始まったドラッカー先生が、この本ではより産業、
企業、組織に注目していること、それが3作目の
「企業とはなにか」。のちのマネジメントへ関心
に繋がることが分かりました。

<追記>「産業人の未来」を読んだGM副社長がドラッ
カーを招へいしたことから、「企業とはなにか」が
生まれたそうです。


【目次】
第1章 産業社会の行方
第2章 機能する社会とは何か
第3章 一九世紀の商業社会
第4章 産業社会における権力の正統性
第5章 ナチズムの試みと失敗
第6章 自由な社会と自由な政府
第7章 ルソーからヒトラーにいたる道
第8章 一七七六年の保守反革命
第9章 改革の原理

大学以来ですね。【書評】フォーリンアフェアーズ 2010年12月10日号


フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年12月10日発売号/ジョセフ・ナイ

¥2,200
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Review Plusさんからフォーリンアフェアーズレポー
ト12月号を頂きました。

米国の外交評議会が創刊。著名な学者、米国国務長
官が寄稿し「もっとも影響力のあるメディア」のひ
とつとして評されています。

ぼくが、フォーリンアフェアーズをちゃんと読むのは
大学の図書館で読んで以来、15年ぶりですね。当時
はサミュエルハンチントンの「文明の衝突」が発表さ
れ、論争を巻き起こしてました。


で、久々に手を取った当書。ジョセフナイ、エリックシュ
ミット、リチャードアーミテージなど錚々たるメンバーが
論文を載せています。

主な話題は「米国の国力と中国、日本を含めた今後のパ
ワーバランス」と「インターネットが与える影響」など。

なかでも気になったのがジョセフナイ氏の寄稿「アメリカ
パワーの将来」。この本中でも衰退する米国への悲観論と
楽観論があり、後者が氏です。

ナイ氏は米国も今後、軍事力を除き文化、経済面での国力が
落ちることを認めています。中国、インドなどアジアが台頭
するためです。(18世紀にはアジアが世界経済の半分を担
っていたが、産業革命で欧米に負けていただだけなので、復
活のほうが正しい表現かもしれません。)

ただ、中国がこのまま直線的に発展するとは考えにくく、米国
は今後も世界最大のパワーを維持していくだろう、と。そのパ
ワー維持の鍵は、米国内の教育改革、移民解放の維持と、制度
と価値を共有する欧州と日本との連携。ナイ氏が唱えている、
ハードだけでなく、ソフトパワーの部分ですね。

各寄稿には要約もあり、それほど苦もなく読めました。徹底的に
米国目線ですが、ときどき読むのも面白いと思います。


【目次】
特集1 The World Ahead
アメリカ・パワーの将来
―― 今後を左右するのは中国ではなく、スマートパワーだ
ジョセフ・ナイ

インターネットは自由も統制も促進する
――政治的諸刃の剣としてのインターネット
イアン・ブレマー

インターネットと相互接続権力の台頭
エリック・シュミット(google CEO)
ジャレド・コーエン

新興国という無責任な利害共有者
―― 時代は「協調なき、多極化」へ
スチュワート・パトリック

アフリカの農業革命が世界の食糧危機を救う
ロジャー・サロー

CFRミーティング
アジアは多極化し、中国の覇権は実現しない
キショール・マブバニ

ロシアの政治・経済を支配するシロヴィキの実態
―― 連邦保安省というロシアの新エリート層
アンドレイ・ソルダトフ、
アイリーナ・ボローガン

特集2 インド、パキスタン、アフガンを考える
CFRミーティング
P・ムシャラフが語る政界復帰とタリバーン対策
パルベーズ・ムシャラフ

CFRミーティング
アフガン撤退戦略の見直しを 
リチャード・アーミテージ

CFRインタビュー
コレラ流行はパンデミック化している
ローリー・ギャレット


【書評】創造と変革の志士たちへ

創造と変革の志士たちへ/堀 義人

¥1,575
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グロービス経営大学院学長が書いた本。

10月から単科生として同校の講義を受け始めましたが、
面白くて仕方がない。6回の授業で12万円と決して安く
はないですが、実践に役立つよう工夫がこらされています。
他に参加したことはないですが、同校独自の仕組みではない
でしょうか。

その学校の創業者が著者。

本書では、なぜ、学校を設立することにしたのか、同校
の目指すもの、教育理念など冷静かつ情熱をもって語り
ます。

同校の教育理念は、"「能力開発」をし、「人的ネット
ワークを構築」し、「志を養う」、3つの場を提供する"
こと。

さらに、能力開発は、①「知識・ビジネスフレームワー
ク」、②「考える力」と③「人間関係能力」の3つに
分かれる。経営の定石を身につけ、最善の解を見つける
考える力をつけ、人を動かす「人間関係力」をつける。

人的ネットワークとは、同校で出会った仲間と繋がり、
より大きな力を発揮する。

そして、"志"とは3つの要素を含むもの。①壮大で
②多くの人に感動を与え、③成し遂げることを前提に
意思決定すること。

実際の各々の意味や事例は本書を見て頂くとして、わた
しがとくに刺激を受けたのは、「感化力のあるリー
ダー」(144頁)

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リーダーの強い信念が多くの人を感化する(中略)グロー
ビスもアジア・ナンバー1のビジネス・スクールを創るな
らば、中心にいる僕が強い向学心を持たなければならな
い。(中略)強い向学心による感化力によって、強い学び
の場を作り、多くの学生に学ぶ意欲を喚起させて、「創造
と変革の志士」を輩出させたいと思う。
--

リーダーは自分が輪の中心に飛び込み、周辺を感化させてい
く。そのための意欲を高く持ち続ける。

グロービスの授業がスゴイと思うのは、学生が自主的に
授業を盛り上げる文化。生徒が授業の前に自主的にプレ
ゼンする文化や授業のない日の勉強会など。また、それ
を勉強場所の提供など、うまくサポート/仕組化する学校
側。

引き続き参加しますが、学校の仕組みなどの観点からも
みていきたいと思います。


<目次>
序章: 創造と変革の志士たちへ
第1章: 能力開発 ―何を学ぶか、いかに学ぶか
第2章: 志 ―自らの使命を追求する、強い志を持つために
第3章: 人的ネットワーク ―「創造と変革」を生み出す場を作る
第4章: 創造と変革 ―新たなる挑戦へと一歩、踏み出すために
第5章: 志士 ―「創造と変革」を担う人に求められるマインド