2019.01.29
一日一季語 枯蘆(かれあし) 【冬―植物ー三冬】
枯芦の沖へ沖へと耳立つる 山田みづえ
先日、千葉県の谷津干潟に吟行をした。普段は野鳥の楽園で、国境を越えて旅をする水鳥たちが集まる豊かな自然を誰もが楽しめる憩いの場です。
吟行の前日から、大鷹が来ているとのことで、吟行当日は、大鷹を狙うカメラマンなどが多く、谷津干潟自然観察センターから見える景は、強風に耐える枯芦が目につきました。
この句は、このような風に耐え、枯芦の穂先だけが沖に向いている姿を、耳立てる、という擬人化で表現しているのでしょう。
2019年05月18日は七回忌です。
【傍題季語】
枯芦(かれあし) 枯葦(かれあし) 枯蘆原(かれあしはら)
【季語の説明】
枯れた蘆。葉が枯れても茎を水中や湿地に残し、冬の水辺の風景を一層侘しく見せる。
→ 蘆の角(春)
→ 青蘆(夏)
→ 蘆の花(秋)
【例句】
枯蘆のゆたかに今日の日を止む 皆川盤水
枯葦にひと日平らな空と水 桂信子
葦枯れて月の光の折れ易し 波戸岡旭
枯蘆やぽつぽつと雀飛び出たり 北原白秋
枯蘆やわれを導く星を見つ 野見山朱鳥
【蘆について】
アシは北半球の気候温暖な地方の湿地や川辺、湖沼の岸などに野生するイネ科の大型多年草です。高さ2~3mに成長し、大群落をつくります。黄白色の根茎は扁平で、泥の中に横たわっています。茎は堅く中空(中が空洞)です。若葉のころは一斉に生育する新緑の美しいアシ、夏には黒ずんだ濃い緑の青アシ、秋には茎の先に大型の円錐花序を出し、雄大な淡紫色に輝くアシの穂の変化を楽しむことができます。
アシは昔から多くの詩歌にも詠まれてきました。
和歌の浦に 潮満ち来れば 潟を無み 葦辺をさして 鶴鳴き渡る 山部赤人
葦刈の 早これまでと 夕暮れぬ 草野駝王
アシの植物名について、牧野富太郎博士は「日本名のアシは捍(ヨシ)の変化したものだろう。これをヨシというのは、アシが「悪し」に通ずるのを嫌ったからである」と述べています。
漢名は「蘆」が正式で、別名に「葦」「芦」「浪速草」などがあります。万葉時代(645~733年)には、もっぱら「アシ」と呼ばれ、文字には「葦」「蘆」「葭」「安之」が用いられていました。「浪速草」は、水の都と呼ばれる大阪に多く生育していたことから、大阪府の郷土の花にもなっています。学名は「Phragmites australis」で、垣根状に生える姿から、属名は垣根を意味するギリシア語の「Phragma」です。
17世紀のフランスの哲学者パスカルは、「宇宙の無限と永遠に対し、自己の弱小と絶対の孤独に驚き、大自然に比べると人間は一茎の葦のようなもので、最も弱い存在である。しかし、人間は単なる葦でなく『考える葦である』」という名言を残しています。それにちなんで、「考える」「哀愁」「音楽」がアシの花言葉になっています。
アシは薬用にも使われており、根茎は「蘆根(ロコン)」という名の生薬として、利尿、消炎、止瀉などに煎じて用いられてきました。また、春先のアシの新芽は、食用にも使われていました。
出典:牧幸男『植物楽趣』
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【今日は何の日】
※草城忌,東鶴忌,銀忌
俳人・日野草城[ひのそうじょう]の1956(昭和31)年の忌日。
無季俳句、連作俳向を率先し、モダンな作風で新興俳句の一翼を担った。
タウン情報の日
タウン情報全国ネットワークが制定。
1973(昭和48)年のこの日、日本初の地域情報誌『ながの情報』が発行された。
昭和基地開設記念日
1957(昭和32)年のこの日、日本の南極観測隊が南極・オングル島への上陸に成功し、昭和基地を開設した。
この年から翌年にかけては「国際地球観測年」で、南極大陸には日本を始め12か国による観測網が敷かれた。
人口調査記念日
1872(明治5)年のこの日、日本初の全国戸籍調査が行われた。
当時の人口は男1679万6158人、女1631万4667人で合計3311万825人だった。
主な出来事
1634年江戸幕府が、各藩邸から出動して江戸市内の消火にあたる大名火消を設置。(新暦2月26日)
1980年日本に寄贈された3頭目のパンダ・ホアンホアン(歓歓)が上野動物園に到着。
2002年ブッシュ米大統領が、一般教書演説で北朝鮮・イラク・イランを「悪の枢軸」と発言
誕生日の有名人
1860年アントン・チェーホフ (露:小説家,劇作家『桜の園』)
1866年ロマン・ロラン (仏:小説家,劇作家『ジャン=クリストフ』)
1876年牧野望東(俳人)
1903年武藤清(建築構造学者,「柔構造」の理論を実用化)
1948年毛利衛(宇宙飛行士)
1953年テレサ・テン(鄧麗君) (台湾:歌手)
1993年きゃりーぱみゅぱみゅ (モデル,歌手)
以下の図書、ホームページを参考、引用しています。
(合本俳句歳時記 第四版 角川学芸出版)
(カラー図説 日本大歳時記 講談社)
(大人も読みたい こども歳時記 長谷川櫂監修)
( 季語と歳時記の会編著 小学館刊 )
(ウイキペディア)
(575筆まか勢)
(俳句のサロン)
(一般社団法人日本記念日協会)