というわけでもないのですが(笑)、前回の記事、六本木でポール・マッカートニー写真展を観てからの続きです。
六本木から日比谷線で霞が関に出て丸の内線に乗り換えて…
池袋で降りて西口へ…
私にはバレエやクラシックのコンサートでお馴染みの東京芸術劇場。はい。この季節に私がここへ行くとなったら、目的は…もうお分かりですよね。
港、船、ヨット、波、埠頭、桟橋…「海」をテーマにした作品だけを集めた絵画展です。毎年お邪魔するようになって、もう何年かなぁ。コロナでも断絶せずに続いてくれた有難い催しです。
私は平日を選んで行くので、いつもこんなふうに空いています。「順路」とかないので、好きなように歩けるのが嬉しい。私はいつも3周します。
まずだーっと1周して、気に入った絵の目星をつけます。2周目は気に行った絵だけをじっくり観る。3周目は、それらの絵を撮影(撮影は許可されています)。有名な美術館で開かれる有名な画家の絵画展では絶対にできない贅沢な鑑賞ができて、しかも無料ですからね。有難いことです。
では、私の印象に残った作品をいくつかご紹介します。
『時の港-連綿と』 平林直哉 油彩 F50
私は遠くからこの絵を観て「あっ、あの人の作品だな!えーっと、確か…平林さんだっけ?」と思って近づいていったら、そうでした。もちろん毎年違う作品を出展されているのですが、タッチが独特で好きなので、覚えてしまいました。
『サーカスは船に乗って』 神保雅春 油彩 P120
この方の絵も、見た途端に「あっ、あれだ」と思いました。もしかして毎年同じタイトルで出品されているのかもしれません。正直、必ずしも「好き」な雰囲気ではないのですが、なんとなく気になってしまうんです。毎年、そう。
『あの日 君と見た風景』 田中道信 アクリル M100
これは独特な雰囲気があって、思わず足を停めた作品。すごく写実的なんだけど、どことなくシュールな雰囲気を感じたんです。どこがシュール(非現実的)なのか、すぐは分からなかったけど、3周目に見て気がつきました。この記事の最後に答えを書きますので、皆さんもこの絵↑を観てお考え下さい。
『沖縄の海』 安藤恒利 油彩 F30
この作品を観た瞬間、私は「寅さん」を思い出しました。浅岡ルリ子さんと共演した、シリーズの最後のほうの作品、ありましたよね? 沖縄本島でなく離島の雰囲気がある。そして見るからにゴーギャンのタッチ。中央の人物がしゃがんでいるのは、沖縄ふうのお墓にお線香をあげているのかな?
『海に向かう風』 蓮池髙夫 油彩 F100
今回の展示の中で私がいちばん「いいな!」と思ったのがこちらでした。国際的なヨットレースが開かれているヨットハーバーでしょうか。ザクザクしたタッチが、いかにも乾いた風がヤードを吹き抜けていくような雰囲気で、なんか大好き。どことなく絵全体から「トリコロール」を感じるところも気に入りました。
毎年そうなんですが、この絵画展では、私が良く知っている場所を描いた作品に出会えるのも楽しみのうちです。
『咸臨丸の浦賀発ち』 河口琢磨 水彩 P40
これは幕末に勝海舟たちを乗せて太平洋を往復した咸臨丸が浦賀のドックを出るところ。私は咸臨丸は横浜港(今でいう『象の鼻』ドック)から出航したとばかり思い込んでいましたが、そもそもは浦賀が出発地だったのでしょうか。
入江の向うに見える神社は「東叶(ひがしかのう)神社」ですね。そうするとこの絵は「西叶神社」あたりから見た構図かな?ふふふ。そんなふうに考えているとめっちゃ楽しくなります。あっ、そう言えば東叶神社には、勝海舟にまつわるナンタラの伝説がありましたね。なんだったっけ?まぁ、今は寄り道しないでおきましょう
『口之津 天草行きフェリー乗り場』 小渕一好 版画 390×480
自分で行ったことはないのですが「口之津」という地名にビビッと来てしまいました。最近、何かの小説で読んだような気がして…吉行淳之介さんの文学仲間だった島尾敏雄の『贋学生』という小説に出て来る場所じゃなかったかな?と思い、帰宅して調べたら合ってました! ちょっと抜粋しますね。
「三人は又バスに乗り込んだ。然し雲仙への登山バスではなく、南下して口之津(くちのつ)に行くバスだ。(略)口之津までのバスの中では三人とも半分居眠りをしていた。道路は一層悪く、振動もはげしく、口を聴くのもだるくて半眠りの状態で終点の口之津にほうり出された。三人は軽便鉄道の汽車を待つために、しばらくの時を口之津の小さな駅で待たなければならない。(略)
駅前に桟橋があった。桟橋も駅と同じような小さな簡単なものだ。石垣からつき出た木橋の先に四角な浮桟橋がついているだけのものだ。木橋のたもとに小さな待合室のついた切符売場がある…」
『贋学生』は太平洋戦争中に三人の学生が長崎・雲仙を旅をするところから始まる物語です。私がこの作品を読んだのはつい数カ月前のことで、口之津という地名がなんとなく心に引っかかっていて、それがこの絵画展で記憶から引っ張り出されるという不思議な繋がり。面白いですね。
そして「寅さん」も口之津に寄ったことがあったような気がしますが、調べておきます。長崎は繰り返しロケ地に選ばれているのは間違いないんですけど。
『ぷかりさん橋(横浜港)』 梅本眞一郎 油彩 F10
これはまぁ、私にはお馴染みの場所。横浜マラソンではゴールまであと150mぐらいのところで、これを右手に見ながら臨港パークを走るんですけど、みんな苦しいしゴールは目の前だし、ランナーの皆さんにはあまり印象に残っていないかもですね。
では、先ほどの問題の答え合わせを。
この絵はとても写実的なように見えて、でもよく観るとなんだかシュールな雰囲気を感じたのでした。さて、私はこの絵のどの辺が「シュール」と感じたかといいますと…
そうです。少年にも犬にも、「影」はあるけど「足跡」がない。 この状況で足跡を着けずに波打ち際まで行けるはずがないんですよ。これは作者さん、狙って描いたのかなぁ?訊いてみたいですね。
絵画を鑑賞する姿勢としては邪道な、余計な詮索かも知れませんが、でもその辺が面白かったです
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六本木でポールの写真展を観て、続けて池袋で海洋画展を観たらさすがに休憩したくなりました。とにかく暑い日でしたから、甘くて冷たいものが欲しくなり、こちらへ…
東京芸術劇場とは道路を挟んで真向かいにある「ルミネ」へ。レストランフロアをうろうろ歩いて「おぼんdeこぼん」というお店に飛び込みました。このお店、確かマークイズみなとみらいにもあったなぁと思いながら。
いちごクリームあんみつ580円と、コーヒー200円(セット価格)。
さんざん歩いて疲れたし暑いしで、甘さと冷たさが全身に沁みました~ 美味しかった!
ポールの写真展と海洋画展。いくらかでも、観に行ったような気分になって頂けましたでしょうか? 最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。