シネマトーク  『はちどり』 『ブックスマート』 | マサミのブログ Road to 42.195km

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はちどり@シネマ ジャック&ベティ

 

舞台は1994年のソウル。主人公は、両親、兄、姉と高層団地で暮らす中学2年生のウニ。父親は暴言を吐き、兄は暴力を振るう。姉は不良仲間と遊んでばかり。母は父の浮気を疑い、子供たちの前でつかみ合いの大喧嘩。学校では強圧的な教師が生徒たちを抑圧する。孤独感を抱えるウニはボーイフレンドと付き合ったり下級生の女子から告白されたり、親友と他愛ないおしゃべりをして過ごすが、どこか満たされない思いでいた。そんなある日、塾に新しく赴任してきた女性講師のヨンジには何故か魅かれるものを感じ、この人なら本当のことを話せる、という気持ちになるのだった。しかしヨンジはある日突然、塾を辞めてしまい、ウニのもとに「いつか全部話してあげるね」という手紙が届く。その頃ソウルでは、漢江にかかるソンス大橋が崩落するという大事故が起きていた…

 

 

Twitterで絶賛されていたのでぜひ観たいと思っていた作品。やはり良かったです。14歳の少女ならではの、大人への反発と諦め、性に対する好奇心などを繊細なタッチで描いています。1994年に設定したのも、日本人にはわかりづらいけれど、決して郷愁ではなく「あの頃はこんなにひどかったんです。でも、今もたいして変わっていないのでは?」という監督の訴えなのかなと思いました。付き合っていたボーイフレンドは離れて行き、好きだと告白された下級生の女子は心変わりしてしまう。親友だと思っていた友達には裏切られる。人間が成長するのは、少しずつ何かを身につけたり、覚えたり、体得していきながら大人になるのが普通ですが、この映画を見ると「何かを失うことで成長することもあるんだなぁ」と思わされました。でも、ラストでウニが見せる「おぼろげだけど、何かが分かった!」と言っているような表情には、救いを感じます。
それと「兄から暴力を振るわれている」とウニが告白した時のヨンジ先生のまなざしがとても優しい。「私もその痛みを知っている」「この子も、私と同じなんだわ」と言っているような、しみじみとした表情でした。

余談ですが、ウニの家族が食事をするシーンが何度も出てくるのですけれど、お茶碗によそったご飯はスプーンで食べて、おかずは別の箸で取るんですよ。韓国ではああいう食べ方が一般的なのでしょうか。知らなかったなぁ。お隣の国のことでも、知らないことが多いものだなと気がついた次第です。
満足度☆☆☆☆



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ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー@横浜ブルク13


親友同士の女子高生エイミーとモリーは、遊んでばかりいたクラスメートを尻目に一流大学への進学を決めて得意だった。しかしそんな二人はクラスの中でも「変わり者」と呼ばれ、浮いた存在になってしまっていた。いよいよ卒業式の前日、エイミーとモリ―は、勉強なんてしていなさそうに見えたクラスメートたちがレベルの高い進路を決めていることを知ってショックを受ける。二人は勉強一筋で青春を犠牲にしてきたことを後悔し、高校生活の最後の夜だけでも思い切り羽目を外そう!と決めてクラスの仲間が主催する卒業パーティーを目指して出発するのだが…

 

 

 

 

これはまぁ「はちどり」とは180度真逆のドタバタ青春コメディですね。いまのロサンゼルスの高校生たちの生態を相当おおげさに(恐らくですが)描いていますが、「青春との別れは甘酸っぱい物」という感じは『アメリカン・グラフィティ』とそれほど違わないかもしれません。でもとにかくセックスがらみの会話が連発で、私なんかはやや辟易してしまいました。我慢できる範囲内でしたけども。ラストは違う進路を選んだエイミーとモリ―が1年ぐらい会えなくなるので、しばしのお別れというシーン。ここはちょっと胸にグッと来ました。

大人になってからなら、1年ぐらい会えなくてもどうということはないし、仲の良かった友だちと10年ぶりに会ったとしても、特に違和感なく再会できるということを私の年代なら知っています。でも若い頃はねぇ…時間の長さの感覚が違うんですよね。私が20代後半ぐらいの頃、同期で親友だった奴が仕事で半年間、インドネシアに出張になることが決まった時は「半年間も会えないのか!しかも日本にいないんだ!」ということがものすごく重大な出来事で、痛切な寂しさを感じたものでした。でも今なら「インドネシアに半年?ふ~ん」ぐらいで、知らないうちに行って帰ってきても別にどうということはないと思います。そういう、若い頃ならではの時間の流れ方の感覚を忘れ切ってしまって、思い出すことも出来ない人には、この映画は向いていないかも?などと思ってしまいました。

そしてこれまた余談ですが「ブックスマート」という言葉の意味を私は知らなかったんです。ブック=本、スマート=賢い、ですけどね。そこで調べたら「ブックスマート=本で読んだ知識だけの、頭でっかち」という、蔑みを含んだ言葉なんだそうです。これに対して「アカデミックスマート=高い教養と知性、学歴がある人」、「ストリートスマート=現場の叩き上げで、実践的な能力が高い人」という言葉もあると知りました。勉強になるなぁ!
満足度☆☆