青山雨子さんの詩集「暇な喫茶店」より、表題作の「暇な喫茶店」を転載する。
暇な喫茶店
青山雨子
「コーヒーをください」
カウンターに座って注文したのは
自家焙煎コーヒーだった
入り口の鐘がからから鳴り
男の客が私のよこに
「コーヒーを一杯」
豆を選りわける店主の背後に 何やら牛がいる
黒い背中をゆかに沈め
時おりうごく
ピンセットの先からちりんと落ちる
キリマンジャロコーヒー豆の音
牛の背後には
木のドアがあり
ドアの向こうには
ベッドに横たわった母親
白い廊下がある