青山雨子さんの詩集「暇な喫茶店」より、詩「静物」を転載する。
本人のご了解は得てある。
静物
青山雨子
雪が積もった
朝もやの手洗いで
わたしは
扇風機をひろった
犬小屋の犬も
体をまるめたまま
身動きひとつせず
冷えた扇風機は
わたしの手で
地面に向き
朝は
日の光がさしていた
人の足跡やタイヤが
ゆきに残っていた
遠くから鳩の声まで聞こえる
わからなかった
鳩より近くに雀の声がする
窓の外に眼をやれば
瓦にゆき
うすい雲が垂れている
雲の合間から
白い太陽がある
家に持って入った扇風機はまだひえている
表はこなゆきが降っている