意図しない断薬 | 元気な障害者

元気な障害者

2004年発症。当初はうつ病の診断。転院を繰り返し、発症から10年目で初めて双極性障害という言葉を知りました。休職、復職後、2016年3月に定年退職。2017年7月から障害者枠のパート勤務。
病気のことだけでなく、日々感じたことを書いています。

約20年前に発症して以来、増やしたり、減らしたり(は、あまりなかったけど)、種類を変えたりしながら服用し続けてきた薬。

 

今日はこの薬のことを書きます。

 

去年の前半まで、2週間ごとに通院していました。

昨年、気分の落ち込みがひどくて、年初の通院に行けなくなりました。

予約日を変更するためにクリニックに電話をしたところ、年初のため予約がいっぱいで、予約が取れたのは2週間先でした。

そのときは、その電話をするのがやっとだったので、仕方なく2週間後の予約をし、電話を切りました。

しばらく経って、気づきました。

 

「薬はどうする?」

 

気づかなかった自分が悪いのですが、受付の人も何か言ってくれればいいのに。

診察が先延ばしになれば、薬がなくなることは明らかです。

余分がある場合もありますが、受付としては、そのことに触れて然るべきだと思います。

それはそれとして。

 

2週間、薬なしで過ごす。

医師の指示に従って減薬しても、薬によってはその影響が出ることもある。

急に止めると、場合によっては危険なこともある。

まして、自己判断で、それまで服用していた5種類10錠の薬をすべて急に止める。

不安でなりませんでした。

クリニックに連絡をすれば、薬を処方してもらえたかもしれませんが、なぜか、そうしようとは思いませんでした

 

そして、薬なしでの生活を始めました。

1日目。

1日くらい飲まなくても大したことはあるまい。

 

2日目。

まだ平気。

 

3日目、4日目...

1週間経っても何も起こらない。

それどころか、気分が晴れてきたような感じになるではありませんか。

 

そして、2週間が経ったときには、毎朝あれほど悩まされていた頭の重さがなくなり、「こんなに爽やかな気分があったんだ!」と、もう忘れていた晴々とした気分になっていました。

 

2週間目の診察で医師にそのことを伝えると、とても複雑な表情。

当然です。

その診察で、もちろん、薬を元に戻すことはせず、最低限の薬、1種類だけを服用し続けることにしました。

夕食後にラモトリギン(ラミクタール)200mg。

頓服としてエビリファイ液体 3mg。

 

以来、現在に至るまで薬はこのままです。

 

4月ころまでは2週間に1度くらい、気分が落ち込んで仕事を休むことがありましたが、翌日には仕事に行けました。

それまでは週に五日間勤務できることは稀だったのに、5月以降、今も、何の迷いも抵抗もなく、ごく普通に週に五日間、毎日9時から17時、ときには18時まで働いています。

 

毎朝、頭の重さに悩まされ、着替えては「やっぱりダメ…」と寝間着に戻り、「でも、行かなくては」とまた着替え。

それをなん度も繰り返して、ようやく家を出られたり、やっぱり出られなかったり。

それを避けるために、頭の重さを意識する前に、目が覚めたらできるだけ早く家を出るようにしていました。

洗面をさっと済ませ、15分ほどで家を出、職場のある新宿に始業時刻の2時間前に着き、近くのカフェで時間を潰す。

新宿まで行ってしまえばなんとかなる…こともあれば、それでも引き返すこともありました。

そんな毎日でした。

 

それが今は、毎朝、ゆっくり洗面をし、コーヒーを淹れて寛ぎ、朝食を食べてから家を出られるようになっています。

 

薬。

 

ずいぶん振り回されました。

双極性障害と診断される前、気分を持ち上げる薬を処方されては元気になり、「もう治った!」とばかりにはしゃぎまわり、しばらくするとまた落ち込む。

薬が増えて、また元気になり、また落ち込み、薬が増え、の繰り返し。

 

双極性障害と診断されてからは、どんなに気分が落ち込んでも「自然に気分が持ち上がるのを待ちましょう」と、薬を増やしてもらえず。

それで良かったのか、悪かったのか。

 

 

私の場合は意図せず、このような幸運に恵まれましたが、決して自己判断での減薬や断薬を勧めるものではありません。

 

一方で、精神科の「薬漬け医療」が問題であることも事実です。

新たな薬が開発され、それを試される。

私もそうでした。

そして、それが効いても、種類が変わるだけで、全体としての量が減ることはありませんでした。

 

しかし、医療についての素人である私たち患者としては医師の処方に頼るしかない。

薬のおかげで、辛いながらもなんとか今の状態が保てている。

薬がなかったら、もっとひどい状態になっているに違いない。

そう思わざるを得ません。

 

日本の精神科医療にはいくつかの問題があるようです。

別の機会に触れようと思いますが、例えば、入院期間や入院患者数が世界的に群を抜いて長く、多いのだそうです。

薬もその「問題」の一つかもしれません。

 

ある抗精神病薬を製造、販売していた企業は、その1種類の薬がその企業全体の売上高の4割~5割を占めていました。

その企業の製品は薬だけではなく、食品や飲料などもあります。

その薬の特許が切れたことでその企業の業績は大幅に落ち込みましたが、その5年後には、抗精神病薬を含む、別の薬の売上が好調で、業績が回復しています。

3万人以上の従業員を抱える企業の売上の4割を占める一つの薬。

そんな薬が開発されているのに、精神病患者は一向に減らないどころか、増える一方です。

 

「精神疾患は原因も症状も一人一人違うから」

 

「脳は未知の部分が多いから」

 

そういうことなのでしょうか。