「突撃」 | 定年後の風景

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定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

1957年米国作をU-NEXTリトライキャンペーン第1弾となります。ビデオテープは無くて記憶違いで恐らくはブールーレイだったようでこちらは身体動かしてまで確認する元気はありません。それでアマプラで検索するとU-NEXTにあるとヒットしました。

 

U-NEXTは解約してましたが丁度20日までのひつこいリトライキャンペーン来てたのでえ~いこれでええわとばかりにまた31日間基本料無料に申し込むと速攻で観れました。案の定説明が少し親切になり見放題作のみとちゃんと書かれてます。当たり前やろ。

 

黙って儲けてた分は詐欺みたいなもので相変わらず阿漕な業界やと思いますわ。それでまあ暫くはまたU-NEXTから今度は全然急がずにええのあったら見るのスタンスで探すことになります。アシガールまだ復活してないのかな。ええ加減許したったらええのに。

 

前置き文句長くなりましたがおかげでVHSでは無く鮮明画像で観ることが出来ました。前回はテレビ放送で吹き替えだった気がして原語字幕で観るのは初めてかも知れません。観てみると随分久しぶりに再観したと思います。

 

内容は勿論憶えてましたが具体映像はほぼ忘れてて年数経つに従ってかなり誇張されて記憶されてた感じでした。ダイナミックな塹壕内の長回し撮影は思ったほど劇的では無くて画面に溶け込んでてそれでも当時としては画期的先進的なもので誰も撮ろうと試みないような画像には違いなかったです。

 

それに引き替え有名な突撃場面の長回し一発勝負の横撮り場面は意外に頻繁なカット割りしててというか3台位のカメラを長~いレールに乗せて延々と撮ったものを編集してたようで大変な撮影意図を実現させてたようです。

 

そしてそれはもう見直すと大変など迫力でこれを超える戦闘突撃場面はなかろうの天下の歴史的場面であったことは疑いの余地がないと改めて確信した次第です。当時の人もこれは何事かとこを腰抜かしたに違いありません。これぞ天才のなせる技としか言いようがありません。

 

1917やプライベートライアンも大いに参考研究したものだと思います。黒沢明の映画教本のようなものです。そして改めて観てると冒頭の宮殿を接収した司令部の中で大将二人が作戦の話し交わす場面も相当の長回し長台詞しててこの辺から映画のリズム作ってることに気づきました。

 

1916年の独仏戦の仏軍内部の話を描いてます。独軍は砲撃機銃攻撃してきてますが兵士は登場しなかったと思います。例によって塹壕戦やってて独軍の通称アリ塚陣地を攻撃して陥落させようとする作戦の一部始終悲劇的策謀の顛末を描いています。

 

お馴染みカーク・ダグラスが仏軍攻撃部隊の大佐として名演熱演貫録出してます。カークとキューブリックは製作もしてて力入ってます。キューブリックはダグラスに気に入られ次作大作スパルタカスの雇われ監督して自己の表現ができず酷い目に遭いこれは自作では無いとまで言い切ってます。

 

以降絶対表現の権限は人に渡さなかったですね。映画は稼業ではなく完全に芸術活動と見てますね。誰が自分の書いてる絵にここはこの方がええと他人が筆入れますかの信念ですね。当たり前のことです。また当時の常識では誰も予想しない不条理極まる展開を見せます。

 

そして最後はキューブリック独特の和らぎ感傷モードが付いててこれをどう解釈するか年取ればとるほど難解となって来てます。

 

(以下ネタバレします)先ずは宮殿司令部で一人の大将がもう一人の大将にあの難攻アリ塚落とせと命令してます。落としたら昇進さしたると言って恐らくは師団付から司令部付に昇進なのでしょうか。早速師団大将は部下のカーク大佐に命令伝えると大佐は到底無理で兵士を無駄死にさせるだけやと反論しますがそれでもやれと命令されてやることになります。

 

もうこの時点で既に司令部大将の社会的面子だけで思いつきで始めてることが分ります。ここから壮大な悲劇の歯車が回転し始めます。そして先ずは三人の兵士に夜間偵察に行かせます。ようやく戦場渡ってアリ塚近くに辿り着くと一人にお前様子見てこいと命令します。

 

一人はしぶしぶ決死に塚に入って行きますが中々帰りません。するとなんと上官はきっと敵が居て殺られたに違いないと手榴弾ブチ込みます。無茶しよるです。こんなことをず~と繰り返して行きます。あとで気なったもう一人がほんまに敵居るのかと見に行くと最初の一人は手榴弾の直撃受けて爆死してました。

 

んにゃろう味方殺しやがって恨み抱いて引き揚げます。そして一人敵に殺られましたと適当に報告してます。それで翌日遂にカーク大佐率いる連隊を以てアリ塚奪取に総攻撃かけます。カーク大佐は砲弾炸裂し機銃掃射受ける中拳銃振りかざして兵士とともに突撃して行きます。

 

そして例の延々横撮り1ショットで兵士全員と大佐も勇猛果敢に突撃を繰り広げて行きます。その様子を離れた陣地から双眼鏡で見ていた師団大佐は前進先の塹壕内で余りに猛烈な独軍砲撃と機銃掃射に塹壕内に釘づけになり前進止まってる連隊見て何やっとんじゃあいつらに砲撃かませと自軍への砲撃を命じます。

 

しかし砲撃兵はそう言ったことは書面で命令願いますとガンとして当たり前に受け付けずカークも必死で塹壕内で兵士達を鼓舞しましたが結局自分すら壕から出られず作戦は失敗に終わりました。師団大将はこれで自分の出世も失せ社会的名誉も失墜するので兵士の臆病が故に命令不服従だったとします。

 

そして各部隊から一人合計三人を裁くと言い出します。カークは兵士は皆勇敢だったと必死の弁護しますが結局は三人は有罪翌朝銃殺刑が決まります。一人は偵察で味方殺したこと知ってる兵士で一人はたまたまくじ引きで選ばれた者で一人は勇敢な兵士でした。

 

そして前夜監房で一人が興奮して暴れるのをうるさいわいと観念した兵士が頭殴って頭蓋骨骨折させ意識不明となり急遽軍医が来ますがまだ生きてるから明日の銃殺は可能だとだんだん鬼気迫り狂気じみた状況となってきてキューフリックして来ますね。

 

意識不明兵士は担架に縛り付けて立たせ銃殺の時にほっぺた捻ると意識戻るからと医師が助言くれます。そして最後の神父も来て夜が明けいよいよ三人は司令部にしてる豪奢な大宮殿の前の大広場に引き立てられ一人は取り乱して引き連れられ一人は担架こど立てて銃殺実施となります。

 

ここら辺の単調な太鼓音楽と恐怖緊迫感は半端なく現代映画でこれほど死の恐怖を延々と描く作品も少ないでしょう。キューブリックの狂気の作風面目如実となります。そして形式通り手順に乗っ取ってそのまま何の罪も無い三人の兵士は銃殺されてしまいます。

 

実はカーク大佐は前夜のダンスパーティしてる司令部に司令部大将を尋ねあの師団大将は自軍を砲撃せよと命令してましたでと報告しましたがそれでも大将は銃殺をとりやめなかったのでした。そして銃殺後カーク大佐は司令部大将に呼ばれよくやったかの師団大将は更迭するから君が後釜につけと言って来ます。

 

カーク大佐はええ加減にせんかいと激怒しますがこれも世の流れかと受け入れたようです。そして兵舎に戻ろうとすると酒場から兵士の騒ぎが聞こえそこでは兵士達が集まって何やらドイツ娘がもの悲しい拙い唄を披露してて兵士達は次第に皆目に涙して聞き入っていくラストで映画は終わります。

 

一緒になって感動しますがこのシーンは全く以って謎のままの気がします。意図が分りにくいです。これを入れたかったキューブリックの最も謎の部分だと今でも思っています。完全なニヒリズムをこれを以て逃れているのかこれは難しいです。

 

以降の作品では映画終わって現実世界に戻してくれる明るい音楽をエンドロールで流してくれる作風になっていきますがこれはその先駆けだったのかなのでした。仏軍の酷い内幕を描いているので仏軍から抗議来たようでした。

 

因みに余りに悲惨で沈鬱な内容の本作の最後に一輪の花を咲かせたこの印象的で綺麗な女性はこの映画のあとにキューブリックと結婚し最後まで添い遂げた奥さんだったですね。