「ブリッジ・オブ・スパイ」 | 定年後の風景

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定年後や病気のこといろいろ書いてます

 

2015年米国・ドイツ・インド作品をBS録画観でした。トム・ハンクス主演と東西冷戦時のスパイ映画だけ記憶に残って観始めます。設定はスリリングですが、作品は極めて地味な会話劇だけで、2時間20分くらいが延々と続きます。

 

トム主演だし、映像も綺麗で、重厚で、見せてくれて、愈々、終盤に差し掛かって、この監督は一体誰だろう、これだけの見せる監督そう居る筈なく、また、スピルバーグタッチです。と観てると、エンドタイトルに、ちゃんとスピルバーグと出て、おおっ、と勝手に自己満足して恥ずかしいのでした。

 

しかし、こうしてネームバリュー無しで観ても、作品そのもので、タッチある程度分るようにもなって来たんだなあ、と変な満足感もあったのでした。また、これは、イーストウッドでは無いなあ、も分るのでした。そして、ソ連人スパイ役俳優の演技が抜きん出て、尋常で無い気迫だと思っていたら、ちゃんと、アカデミー助演男優賞取ってました。スピルバーク作品にしては、音楽少し弱いかなと思ってたら、当初予定してた、いつものジョン・ウィリアムズが病気で交代してました。

 

まあ、思い込みかも知れないですが、これで、いつものスピルバーグタッチが、少し弱まった感じもしました。しかし、こうして、監督名知らずに、内容だけ観てみても、本作辺りだと、もう、明らかに、スピルバーグは、当たり前ですが、巨匠と言える、領域に達してるのが分ります。どこがどうと指摘出来ないところが、個人的レベルの辛さですが、全体的には分ります。

 

米国のやり手の一弁護士のトムが、東西冷戦時代のソ連のスパイを弁護することになり、世間の顰蹙を買いながらも、死刑を免れさせ、尚且つ、ソ連に掴まった米国スパイ機のパイロットや、ドイツ人学生と、人質交換する、一触即発の息詰る、実話ベースの出来事を描いてます。

 

ソ連人スパイは終始、徹底した職業スパイとして、完全に諦念して、死をいつでも覚悟した、物凄い演技で、迫ってきます。トムもタジタジの鬼気演技でしょうか。不気味さ、リアルさが半端無いです。

 

(以下ネタバレします)ソ連人スパイの弁護をして、世間から目の敵にされ、家族までも白い目で見られ、家が銃撃されたりする酷い状態となります。スパイは腹くくったプロですから、礼も何もありません。死刑でも何でも覚悟の上です。ただひたすら、趣味の絵を描いてるだけです。

 

トムはスパイを将来、米国人スパイが捕まった時の人質交換用だと裁判長を説得したのでした。そして、ちょうどその頃、米国の高高度偵察機U2が、不覚にもソ連に撃墜され、自殺する筈のパイロットが捕まってしまい、彼と件のソ連スパイとの人質交換に、民間人のトムが抜擢されて、その後、単身ソ連に行ったりして、双方の丁々発止のやり取りに、孤軍奮闘する様が、活写されます。

 

ホンマに、こう言う事してたんだろうかのリアルさです。両政府は二人の交換だけでも精一杯なのに、トムはその頃築かれたベルリンの壁で東側に居て掴まった、一人の西側学生も、込みだと譲りません。これには、当然、東ドイツが噛んで来て、しかも、東ドイツは、素直にソ連の言う事を聞きません。

 

米国政府は、エエ加減にせんかい、交換はスパイだけで、エエやんけと、のた打ち回るのですが、トムは、イイヤ、絶対に学生も込みや、とヒヤヒヤする、頑固さ貫きます。そして、三者のギリギリ、崖っぷち、一か八かの駆け引きの末、ようやくと、ブリッジ・オブ・スパイの橋で、夜に小雪舞う中、ソ連人スパイと米国人パイロットは息詰る緊迫感の中、遂に、交換に、こぎ着け、二人は、お互いにすれ違って、自らの国の領域に向かって歩いて行くのでした。学生がベルリンで無事に解放されたと連絡入って初めて実行されたのでした。

 

ソ連スパイは最後まで、礼は言いませんでしたが、秘かにトムの肖像画を描いて送ったのでした。感謝していたのです。彼は帰国後どうなるのか分らなかったのですが、それも諦念の内でした。パイロットは大ドジして捕まったのですが、友軍に笑顔で迎えられました。

 

その後、トムは長い旅から、ようやく帰宅すると、子供達も見るテレビでこれら事件が報道され、そこには、釣りに行くと家族を欺いて、旅行に行ってた筈の、お父さんが、名前入りで大写しになっていたのでした。家族は皆で驚嘆しますが、トムは2階の寝室で帰宅した服のまま、大役果たして爆睡しているのでした。

 

もう、これは、これ以上は無い、堪らないラストでした。掛け値なしの傑作だと思います。初めて見るU2の撃墜の様子や、3台の4500mm望遠カメラユニットや操縦席などの映像が、珍しいかったです。撮影には実機も使われたとあります。この事件は、子供の頃、リアルタイムでテレビで見ていたかもと思います。